生成AIプロジェクトの30%が概念実証後見送りに Gartner予測生成AI導入は短期的ROIよりも、長期的な視座が必要

Gartnerは企業の生成AI活用に関する予測結果を発表した。さまざまな理由で2025年末までに生成AIプロジェクトの少なくとも30%が概念実証後に見送られるようになるという。

» 2024年08月14日 08時00分 公開
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 Gartnerは2024年7月29日(豪州時間)、データ品質の低さ、リスク管理の不十分さ、コストの増大、ビジネス価値の不明確さなどの理由から、2025年末までに生成AI(人工知能)プロジェクトの少なくとも30%が概念実証(PoC)後に見送られるという予測を発表した。

 Gartnerのバイスプレジデントアナリストであるリタ・サラム氏は、次のように述べている。「生成AIの2023年の過熱ぶりを経て、経営幹部は投資に対するリターンを急いで求めているが、組織は価値を証明し、実現することに苦戦している。イニシアチブの範囲が広がるにつれて、生成AIモデルの開発、導入に伴う財務負担も増加している」

 Gartnerによると、組織が生成AIに多額の投資をして生産性向上を図ることは、大きな課題となっているという。「生成AIの導入をすぐに財務的な利益につなげるのは難しい場合が多い。つまり、生成AIへの投資を正当化して経営者を説得することが、組織にとって大きなハードルとなっている」(Gartner)

生成AIを使ったビジネスモデル別費用

 多くの組織が、ビジネスモデルを変革し、新たなビジネスチャンスを創出するため、生成AIに取り組んでいるがGartnerの調査によるとこのような導入アプローチには、500万ドルから2000万ドルに及ぶ多額のコストがかかるという。

生成AI導入アプローチごとに発生するコスト(提供:Gartner)

 サラム氏は次のように述べている。「残念ながら、生成AIには万能なソリューションはなく、コストも他のテクノロジーのように予測可能ではない。コストは投資するユースケースや、どの導入アプローチを採用したかによって決まる。市場の破壊者として、AIをあらゆる場所に導入したいのか、生産性向上や既存プロセスの拡張に重点を置く保守的なアプローチを取るのかによって、コスト、リスク、変動性、戦略的影響のレベルは異なる」

 Gartnerの調査によれば、AIに対する企業の野心がどの程度であったとしても、生成AIは短期的な投資回収率(ROI)で測れない。間接的かつ将来的な投資としての許容度を高める必要があるという。

 「これまで多くのCFO(最高財務責任者)は、将来の間接的な価値のために投資することに抵抗感を持ってきた。このため、投資の配分が長期的な戦略に基づく成果よりも、各手法の成果に偏る傾向がある」(Gartner)

早期導入企業の改善効果

 さまざまな業界や業務プロセスにおいて、早期導入企業は、ユースケース、職種、従業員のスキルレベルに応じて異なる幅広いビジネス改善を報告している。直近のGartnerの調査によると、回答者の平均売上高は15.8%増加し、コストは15.2%削減され、生産性は22.6%向上したと報告されている。この調査は、2023年9〜11月に822人のビジネスリーダーを対象に実施された。

 データに関して、サラム氏は次のように述べる。「このデータは、生成AIを活用したビジネスモデルのイノベーションによる価値評価の指標となる。しかし、ビジネス価値の推定は、容易ではないことは理解しておく必要がある。生成AI導入によるメリットは企業、ユースケース、役割、人材によって大きく異なるからだ。多くの場合、その影響はすぐに明らかにならないだろうし、時間の経過とともに顕在化する場合もあるだろう。しかし、生成AIの効果がすぐに現れなくても、長期的に見れば、生成AIは企業に大きな利益をもたらす可能性がある」

ビジネスへの影響を試算する

 Gartnerによると、企業は生成AIによるビジネスモデルイノベーションのビジネス価値と総コストを分析することで、直接的なROIと将来的な価値への影響を把握できるという。これは、生成AIによるビジネスモデルイノベーションに関する投資を決定するための重要なツールとなる。

 サラム氏は次のように述べている。「ビジネス成果が期待以上のものだった場合、より広いユーザーベースへの生成AIイノベーションと利用の拡大、または他の事業部門への導入による投資拡大の機会が生じる。しかし、期待に満たない場合は、代替的なイノベーションシナリオを検討する必要があるかもしれない。ビジネス価値と総コストの分析は、企業が戦略的にリソースを配分し、最も効果的な前進の道筋を決定するのに役立つ」

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