AWSが予告なしに「CodeCommitによるGitの提供」を取りやめ 他のサービスへの影響は?「機能的には既に“放棄”されていた」という意見も

TechTargetは、「AWSによるCodeCommitとCloud9の閉鎖通知」に関する記事を公開した。AWSは事前の予告なしに、6つのサービスで新規ユーザーの受け入れを停止した。これを受け、一部の業界関係者はアップデートの頻度が低い他のAWSサービスの将来に疑問を投げかけている。

» 2024年09月19日 08時00分 公開
[Beth PariseauTechTarget]

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 TechTargetは2024年8月2日(米国時間)、「Amazon Web Services(AWS)によるCodeCommitとCloud9の閉鎖通知」に関する記事を公開した。

画像 批判を受けるAWSによるCodeCommitとCloud9の閉鎖通知(提供:Linkdin)

 AWSは2024年7月下旬にAWSがホストするGitコードリポジトリ「AWS CodeCommit」によるGitの提供を取りやめ、その機能を競合他社に委ねる決定を明らかにした。この決定が利用者に事前通知されなかったことから、同社の他のサービスの将来について疑問を投げかけるIT専門家もいる。

 AWSでチーフエバンジェリストを務めるジェフ・バー氏は、2024年7月30日のX(旧Twitter)への投稿の中でこの変更を認め、AWS CodeCommit、「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)の「Select SQL」機能、マネージド検索サービス「Amazon CloudSearch」、IDE「AWS Cloud9」、データベースサービス「Amazon SimpleDB」、時系列データ分析サービス「Amazon Forecast」「AWS Data Pipeline」で新規ユーザーを受け入れていないことを確認した。

 バー氏は、現時点ではこれらのサービスを廃止する予定はないが、新機能は追加せず、AWSの代替機能や他社のサービスへの移行をサポートする予定だと述べている。また、既に同サービスを利用している顧客のサポートは継続するという。

 同氏は、この変更を明確に通知しなかったことも認め、「こうした変更が明確に顧客に伝わるよう改善していく」と述べている。

AWS CodeCommitに対して挙がる疑問の声

 だが、このニュースはさらなる疑問を生み出している。例えば、S3オブジェクトストアで広く利用されている「S3 Selectの新規アカウントの作成がどのように廃止されるのか」といった疑問だ。バー氏の投稿については、顧客やパートナーへの通知がなかったことに対する批判のコメントが相次いでいる。ある報告書によると「AWSの営業担当者でさえ事前に知らされておらず、バー氏の投稿によって今回の変更を知った人もいる」という。

 AWSでテクニカルトレーナーを務めるエイドリアン・カントリル氏は、バー氏の投稿に対し、「一般消費者、ソリューションアーキテクト、トレーナーのどの立場から見ようと、これは顧客への敵対的行動だ」とコメントしている。

 バー氏の投稿に対して、AWSの「Amazon EKS on AWS Fargate」「AWS App Mesh」など、最近メジャーアップデートが実施されていないサービスにも同様の変更があるのかどうかを尋ねるAWSユーザーもいた。

 米国の金融サービス企業でDevOpsのリードエンジニアとして働くキャンベル・マクニール氏はTechTargetの取材に対し、「これら2つのサービスを利用しているが、利用を中止しようと考えている。AWSは数年にわたってこれらのサービスに愛着を示していないし、同社のイベント『AWS re:Invent』でも話題にならないことから、AWSの見解を類推できる」と答えている。

 マクニール氏が勤める企業は、Amazon EKS on AWS Fargateの代わりに、オープンソースツール「Karpenter」を使う可能性が高いという。

AWSの方針に疑問を投げかける「競合他社への誘導」

 AWSが競合他社のサービスへの移行を支援していることから「AWS CodeCommitが廃止へと向かうのは明らかだ」という開発者もいる。

 フリーランスの技術コンサルタントとして活動するロブ・ザズエタ氏は「AWSが新規ユーザーを受け入れを停止するのであれば、今後そのサービスがどこかのタイミングで廃止される可能性が高い。私がAWS CodeCommitを利用していたとしたら、既に別のサービスを探しているだろう」と語る。

 業界関係者の中には、今回の“収束するサービス”にAWS CodeCommitが含まれていたことに驚きはないという人もいる。なぜならこの市場ではGitHubやGitLabといった競合他社が圧倒的優位に立っているからだ。

 Forrester Researchでアナリストとして働くアンドリュー・コーンウォール氏は次のように分析している。

 「新規利用を停止するサービスの大半は既に機能的に“放棄”されていた。AWS CodeCommitはパフォーマンスが最高というわけではなかった上、開発者が他社のソリューションを利用していたため、普及させることが難しかった。また、昨今の開発者はマルチクラウドソリューションを求めているが、AWSのロードマップにはそうした統合も含まれておらず、同社の関心事でもなかった」

 クラウドコンサルタント企業RobustCloudでフリーランスのアナリストとして活動するラリー・カルヴァリョ氏によると、AWSは数百にも及ぶサービスを提供しているため、「Amazon Honeycode」などのサービスと同様、「時間の経過とともに一部のサービスが廃止されるのは避けられない」という。なお、Amazon Honeycodeは2020年にリリースされ、2024年2月にサービスを終了している。「こうしたことはクラウド業界では標準的な慣行だ。これによってAWSの見方が変わるわけではない」と同氏は語る。

 ただし、AWS CodeCommitへの変更は、開発者ツールに対するAWSの全体方針にとっては疑問が残るという業界専門家もいる。

 TechTargetでアナリストを務めるトルステン・フォルク氏は語る。

 「GitとIDEの事業から手を引くことは、AWSのプラットフォーム戦略全体に穴をあけることになる。AWSはGitとIDEの事業をMicrosoftに明け渡すことになり、『GitHub Actions』プラットフォームにさらに多くのAWS顧客が流れるリスクがある」

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