TechTargetは「スプリントのレビューとレトロスペクティブの違い」に関する記事を公開した。スプリントのレビューとレトロスペクティブは、大まかに言えばどちらも「振り返り」だが、重視する点と目的が大きく異なる。
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TechTargetは2024年8月22日(米国時間)、「スプリントのレビューとレトロスペクティブの違い」に関する記事を公開した。
スクラム開発におけるスプリントのレビューとレトロスペクティブの主な違いは、レビューはスプリントの進捗(しんちょく)状況を全員で共有してフィードバックを得ることが目的だが、レトロスペクティブの目的はチームの内部に目を向けて改善できる点や変更すべき点を見つけることだという点にある。
スクラム開発における全てのスプリントの目標は、最終的な成果物に貢献する“価値”を生み出すことだ。プロダクトのバックログの項目を完成させ、組織で決めた“完了”の基準を満たすたびにプロダクトの新しい部分(インクリメント)が出来上がる。このようにスクラム開発では、プロダクトを少しずつ、段階的に作り上げていく。
スプリントレビューの目的は、現在のスプリント中に作成された全ての増分機能と、その機能が既存のプロダクトとどのように統合されるかをクライアントや関係者に示すことにある。スプリントをレビューする中で、関係者はプロダクトとその増分機能を操作してフィードバックを提供する。そのフィードバックに応じてスクラムチームは「適応」(問題点の修正、パフォーマンスの改善など)を実施する。
スプリントレビューは単なるデモではない。関係者は実際にプロダクトを使い、さまざまな機能を試し、テストし、もしかしたら意図的に問題を起こしてみるだろう。フィードバックループはアジャイルプロセスの重要な部分を占めるため、チームはスプリントレビュー中に正直なフィードバックをできるだけ多く集める必要がある。
「検査」と「適応」は、スクラムの3本柱のうちの2本だ。スプリントレビューの目的は、クライアントによる“検査”とスクラムチームによる“適応”の2つを実施することにある。スクラムガイド(現在公開されているのは2020年版)にも、「スプリントレビューの目的は、スプリントの成果を検査し、今後の適応を決定することである」と記されている。
ただし、スプリントレビューを実施したからといって、必ずしも簡単にフィードバックが得られるとは限らない。レビューがうまくいけばいいが、うまくいかなければ関係者との隔たりを感じるかもしれない。一方、レトロスペクティブは、スプリントレビューがどのように進んだとしても、スプリント中に起きたことを話し合う良い機会になる。
レトロスペクティブは、スクラムの各スプリントの最後に実施するイベントで、レトロスペクティブが終わると、新しいスプリントが始まる。
レトロスペクティブの参加者についての厳密な規則はない。スクラムの価値の一つはそのオープン性にあるため、前提として、誰であろうとレトロスペクティブに参加できる。むしろ、参加を拒否することはスクラムガイドに反することになる。とはいえ、レトロスペクティブに積極的に参加するのは、スクラムチームのメンバーだけになることが多い。
レトロスペクティブでは、そのスプリントでうまくいった点、うまくいかなかった点をスクラムマスター、プロダクトオーナー、開発者が話し合う。スクラムガイドには「レトロスペクティブの目的は、品質と効果を高める方法を計画することにある」と記されている。
話し合う内容としては、使用したツール、チームでのやりとり、スクラムフレームワークの適用方法などのトピックに重点を置く。また、今後のスプリントでチームの効果を高める方法も模索する。
スクラムガイドには明確に記載されてはいないが、多くのスクラムチームが実施しているプラクティスがある。それは、チームの作業方法やプロセスに対して最も効果的だと思われる改善点を特定し、それを次のスプリントに組み込むことだ。
半年から1年くらいの期間のプロジェクトでは、生産性の高い新たなプラクティスを各スプリントに加えることで、相乗効果が高まり、チームの効率が向上すると考えられている。
このように、スプリントのレビューとレトロスペクティブは、重視する点と目的が大きく異なる。スプリントのレビューは関係者全員が参加して実施するスプリントの進捗状況が確認されるのに対し、レトロスペクティブはスクラムチームが実施したプロセスを振り返り、チームとして改善する方法を見極める時間となる。
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