「2026年までに組織の20%がAIを活用して中間管理職の半数以上を削減する」などGartnerが逃れられない近未来を予測AI技術の進化が引き起こすセキュリティ脅威と従業員管理の新時代

Gartnerは、2025年以降のIT組織とユーザーに関する主要戦略予測を発表した。予測では主にAI活用によって起こる組織の変容やセキュリティ動向などについて言及している。

» 2024年11月11日 08時00分 公開
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 Gartnerは2024年10月22日(米国時間)、2025年以降のIT組織とユーザーに関する主要戦略予測を発表した。Gartnerはこの予測を、「一般的に人間だけが持続的な影響を与えることができると考えられている領域で、生成AI(人工知能)がどのような影響を及ぼしているかを探るもの」と位置付けている。

 Gartnerフェローであり、主任リサーチ担当VPアナリストのダリル・プラマー氏は次のように述べる。「どこに行こうとも、AIの影響から逃れることはできないのは明らかだ。人間のAI活用の進化とともに、AIも進化している。人間が追い付けなくなる地点にAIが到達する前に、AIが人間をどれだけ向上させてくれるかを受け入れなければならない」

 予測についてGartnerは以下のように述べている。

2026年までに、組織の20%がAIを活用して組織構造をフラット化し、現在の中間管理職の半数以上を削減する

 中間管理職の人員を削減するためにAIを導入した組織は、短期的には人件費の削減を、長期的にはコスト削減の恩恵を享受できる。AIの導入により、残った従業員はタスク、レポート、パフォーマンスモニタリングなどの自動化とスケジューリングが進められ、これが生産性の向上や管理範囲の拡大につながる。結果として残った管理職はより戦略的で、スケーラブルかつ付加価値の高い活動に集中できるようになる。

 しかしながら、AIの導入によって組織には課題も生じる。従業員は雇用の不安を感じ、管理職は直属の部下が増えることで負担を感じるかもしれない。また、残った従業員が、AI導入に伴う変化やAI主導のやりとりに抵抗を示す可能性がある。さらに、メンター制度や学習の機会が途切れ、若手従業員が成長の機会を失うことにもなりかねない。

2028年までに、テクノロジーへの没入は、デジタル依存症や社会的孤立といった点で人々に大きな影響を与え、70%の組織が反デジタル施策を講じることになる

 Gartnerは、2028年までに約10億人がデジタル依存症に悩まされ、生産性の低下やストレスの増加、不安やうつ病といった精神疾患が急増すると予測している。また、特にこうした傾向の影響を受けやすい若い世代のデジタル没入は、社会的スキルに悪影響を及ぼすことになる。

 「デジタル没入による孤立は、労働力を分断し、従業員や関連企業の生産性が著しく低下する結果を招くだろう。組織は、従業員に対してデジタルデトックス期間を義務化し、勤務時間外の連絡を禁止し、スクリーンを使わない会議や、金曜日のメール禁止、デスクから離れた昼食休憩といったアナログのツールや手法を復活させる必要がある」(プラマー氏)

2028年までに、大企業の40%が利益追求という名の下に、AIを活用して従業員の感情や行動を操作し、測定するようになる

 AIは、職場でのやりとりやコミュニケーションに対して感情分析を行う能力を持っており、これにより全体的な感情が望ましい行動と一致しているかどうかのフィードバックを提供することが可能だ。これにより、従業員のモチベーションを高め、積極的な取り組みを実現できる。

 一方で、プラマー氏は次のような課題を指摘する。「従業員は、自身の自律性やプライバシーが侵害されていると感じ、不満や信頼の低下につながる可能性がある。AI主導の行動監視技術には大きな潜在的メリットがある一方で、長期的には従業員のやる気や忠誠心を損なう危険がある。企業は効率向上を図りながらも、従業員のウェルビーイングに対する真の配慮を忘れずにバランスを取らなければならない」

2027年までに、従業員との新規契約の70%に、従業員のペルソナ(個人像や行動、スキルなど)のAIによる表現に関するライセンスおよび公正使用条項が含まれるようになる

 大規模言語モデル(LLM)は終了時期が設定されていないため、企業が収集した従業員の個人データは、雇用期間中だけでなく、雇用終了後もLLMの一部として残り続ける。

 これにより、従業員と雇用主のどちらがそのようなデジタルペルソナの所有権を持つのかが、公の場で討議される事態を引き起こし、最終的には訴訟に発展する可能性がある。公正使用条項は企業を即時の訴訟から守るために用いられるが、これは大きな論争を引き起こすことになるだろう。

2028年までに、企業のセキュリティ侵害の25%が、外部および内部の悪意ある攻撃者によるAIエージェントの悪用に起因するものになる

 AIエージェントによって、企業における目に見えない攻撃の対象範囲は大幅に拡大する。そのため、新たなセキュリティおよびリスク対策が必要になる。これにより、企業は悪意ある活動を実行するためにAIエージェントを作成する巧妙な外部アクターや不満を抱えた従業員から、ビジネスを保護する必要に迫られることになる。

 プラマー氏は次のように指摘する。「企業はAIエージェントの脅威に対する緩和策の導入を待つことはできない。製品やソフトウェアにリスクやセキュリティの緩和策を組み込む方が、侵害発生後に緩和策を追加するよりもはるかに簡単だ」

2028年までに、CIOの40%がAIエージェントのアクションを自律的に追跡、監視、または抑制する「ガーディアンエージェント」の利用を要求するようになる

 企業はAIエージェントへの関心を高めている。AIエージェントの知能が進化するにつれ、新しいAIエージェントが経営陣の戦略策定プロセスに急速に組み込まれるようになる。「ガーディアンエージェント」は、セキュリティモニタリング、可観測性、コンプライアンスの保証、倫理、データフィルタリング、ログレビューといったAIエージェントのメカニズムに基づいて構築されている。2025年までには、複数のエージェントを特徴とする製品のリリースが増加し、より複雑なユースケースが登場するだろう。

 プラマー氏は次のように述べている。「短期的には、AIエージェントに対するセキュリティ攻撃が新たな脅威となるだろう。ガードレールやセキュリティフィルター、人間による監視、セキュリティの可観測性を実装するだけでは、エージェントを一貫して適切に使用できない」

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