「見逃したバグが本番環境で見つかったらどうしますか」 実践形式で解説するQA担当者の面接対策初級から上級まで、13問の質問を厳選

TechTargetは「QA担当者の採用面接で行われる質疑応答」に関する記事を公開した。新しい仕事を探す際、面接準備を怠らないことが重要だ。これは、経験豊富なソフトウェア品質エンジニアであっても、新米テスターであっても同じだ。

» 2024年12月19日 08時00分 公開
[Gerie OwenTechTarget]

 TechTargetは2024年10月31日(米国時間)、「QA担当者の採用面接で行われる質疑応答」に関する記事を公開した。

画像 QA担当者の採用面接で行われる代表的な13項目の質疑応答(提供:TechTarget)

 応募者は、多段階の面接、性格や技術のスキルテスト、時にはグループプロジェクトやプレゼンテーションなど、さまざまな採用プロセスを経験する可能性がある。その中でも、「面接」は応募者が最もアピールできる場だ。役割に最適であると証明できない限り、応募者は採用オファーを受けられないだろう。

QA面接の準備方法

 面接で成功するためには、事前の準備が重要だ。しっかりと準備すれば、関連するスキルや経験を披露できるだけでなく、仕事への取り組み方や応募先企業への関心を示すこともできる。そのためには、応募する企業や職種について徹底的なリサーチが必要だ。企業やその業界分野について理解を深めることで、面接官がどのような質問をしてくるかを予測できるだけでなく、採用後に企業が応募者に対処してほしいと考えている課題も予測できる。

 準備が必要なのは応募者だけではない。採用側も適切な人材を見つけるために個々の面接や採用プロセスに向けて準備しなければならない。採用側がまず実施するのは求人情報の作成だ。全ての資質を備えた応募者はいないかもしれないが、「必須条件」と「歓迎条件」を具体的かつ明確に区別して記載することが重要だ。

 採用側は、ソフトウェアをテストするために必要なスキルや、その基盤となる技術スタック、さらに現在のテストチームを補完するのに最適なスキルを検討しておく必要がある。例えば、現在のチームメンバーが高度な技術的知識を持っている場合は、ドメイン経験よりも、より深いユーザー体験(UX)のスキルを持つ応募者の方が価値が高いかもしれない。役割と理想的な候補者像を深く理解することで、面接官は効果的な一連の面接質問を作成できるようになる。

 以下に示すリストは、著者の経験や品質エンジニアリングの同僚の意見、さらにさまざまなQAサイトでのリサーチを基に作成したものだ。一般的な面接質問や、候補者の経験、知識、スキルセット、QAに対する視点を把握するのに役立つ質問を選んだ。質問は、難易度ごとに「基礎」「中級」「高度」に分類し、それぞれがどの面接段階や面接形式で問われる可能性が高いかも併記している。

初級レベルのQA面接質問(5問)

 品質エンジニアやテスト担当者の採用プロセスでは、面接が複数回実施されることが多い。通常、最初に実施するのは、人事担当者や品質エンジニアリングチームのリーダーが実施する「スクリーニング面接」だ。スクリーニング面接では、応募者が募集職務に適性があるかどうか、次の採用プロセスに進む資格があるかどうかが判断される。ここでは、スクリーニング面接でよく尋ねられる基本的な質問を紹介する。

初級1.「QAとは何ですか?」

質問の目的:応募者が品質保証の目的を断片的ではなく包括的に理解しているかどうかを確認する。

回答例:

  • QAとは、開発中のソフトウェアが要件とエンドユーザーの期待を満たしていることを保証するプロセスです。

初級2.「QAとテストの違いは何ですか?」

質問の目的:応募者がQAについて詳しく理解しているかどうかを確認する。

回答例:

  • QAはソフトウェア開発ライフサイクル全体にわたって組み込まれるプロセスで、バグの発生を未然に防ぐことに重点を置いています。
  • テストは製品を検証、妥当性確認するための技術的アプローチや手法を指し、バグの検出に焦点を当てています。

初級3.「テストシナリオとテストケースの違いは何ですか?」

質問の目的:応募者が基本的なテスト知識を持っているかどうかを判断する。

回答例:

  • テストシナリオは、テスト対象の条件や基準を記述したもので、通常は受け入れ基準が示されており、複数のテストケースを含むことがあります。
  • テストケースは、特定の機能をテストする手順や期待される結果を詳細に記述したものです。

初級4.「『検証』と『妥当性確認』の違いは何ですか?」

質問の目的:医療や安全性が重要な分野など、規制が厳しい業界におけるテストの重要性を認識しているかどうかを確認する。

回答例:

  • 検証は、アプリケーションが仕様を満たしていることを確認するプロセスです。
  • 妥当性確認は、アプリケーションがその目的に適していることを確認します。
  • 妥当性確認はユーザー受け入れテストの一部になっていることが多いです。

初級5.「不具合とは何でしょうか。どのように記録しますか?」

質問の目的:不具合に対する考え方や処理方法を理解する。

回答例:

  • 不具合とは、テスト結果が期待される結果と一致しない場合に発生するものです。
  • 不具合を記録するには、テスト担当者がまずそれを再現する必要があります。
  • 記録(バグレポート)には、不具合を再現する手順、テスターが不具合を発見した環境、予想される結果と実際の結果、スクリーンショットまたはビデオ、不具合の重大度の評価など、不具合の明確な説明を含めます。

中級レベルのQA面接質問(4問)

 スクリーニング面接を通過した応募者は、次の面接(またはその後の一連の面接)で、テスト手法に関する知識を問われる。これにはテスト戦略やテスト計画、アジャイルテスト、テスト技法の他、手動テストと自動化テストといったテストの種類も含まれる。この段階で想定される質問は以下の通りだ。

中級1.「テスト戦略とテスト計画の違いは何ですか?」

質問の目的:応募者にリーダーとしての役割の経験があるかどうかを判断する。

回答例:

  • テスト戦略は、テスト設計やテストプロセス全体の構造化に関する全体的なアプローチを記述したもので、テストプログラム全体を管理するのが目的です。
  • テスト戦略には、テストの種類(通常は手動と自動の両方)、テストのレベル(スモーク、サニティ、回帰など)、実施すべきテスト手法などが含まれます。
  • テスト計画は、テストをどのように実行するかを具体的に記述するものです。
  • テスト計画には、テストの範囲、環境とデータの要件、不具合管理に対するリスク、問題点、制約事項と、不具合管理のアプローチの仕方などが含まれます。

中級2.「テストケース設計では、どのようなテスト手法を適用すべきですか?」

質問の目的:テスト手法をテストケースに組み込むことに関する応募者の経験レベルを把握する。

回答例:

  • 「ネガティブテスト」「境界値分析」「同値分割」などを使うべきです。
  • ネガティブテストは、システムが実行すべきでない操作を実行しないことを保証します。例えば、英字のみを受け入れるフィールドで数字をテストするなどです。
  • 境界値分析は、欠陥が発生する可能性のある入力範囲の境界付近をテストします。
  • 同値分割では、期待される結果が同じクラスにデータを分割し、それぞれのクラスを代表する値でテストします。
  • こうした手法によって、最小限のテストケースから最大限のメリットを得ることができます。

中級3.「負荷テストとストレステストの違いは何ですか?」

質問の目的:応募者に非機能テストに関する経験があるかどうかを判断する。

回答例:

  • 負荷テストとストレステストはどちらも非機能テストの一種です。
  • 負荷テストはテスト対象のアプリケーションが、想定される最大の負荷を処理しても性能が低下したりクラッシュしたりしないことを確認します。
  • ストレステストは求められる限界を超える負荷をアプリケーションに与え、最大限対処できる負荷を判断します。
  • ストレステストは、例えば小売業のように季節ごとに利用がピークに達するアプリケーションにおいて特に重要です。

中級4.「自動化すべきなのはどのような種類のテストですか?」

質問の目的:応募者がどのようにテスト自動化の戦略を構築するかを理解する。

回答例:

  • 再利用されるテストに重点を置いて自動化を進めるべきです。
  • 例えばデータ作成、回帰テスト、スモークテストやサニティテスト、APIテストなどが当てはまります。

上級レベルのQA面接質問(4問)

 上級レベルの質問は最終面接で問われることが多い。この段階では、応募者がこれまでの仕事でどのような経験を積んできたかを確認する行動質問や、課題への対応力を問う質問で構成される。行動に関する質問には「STAR方式」を使用する。STAR方式とは、直面する状況(Situation)、担当する職務(Task)、取った行動(Action)、その結果(Result)の説明を求めるものだ。この段階で想定される質問は以下の通りだ。

 なお、上級レベルからは応募者の具体的なエピソードを語ることになる。そのため「回答例」ではなく「回答の注意点」について説明する。

上級1.「見逃したバグが本番環境で発見されたときの経験を教えてください」

質問の目的:問題が発生した際に応募者がどのように対応するかを評価する。

回答の注意点:

  • 「見逃したバグはない」などと答えるのは避ける
  • バグがシステムやビジネスに与えた影響に焦点を当て、特にその後の対応策やプロセス改善に関する取り組みを強調する

上級2.「リリース期限が厳しくテスト計画の全てを完了できない状況になったとき、どのように対処しますか」

質問の目的:応募者の柔軟性やリスクベースのテストへの取り組み方を評価する。

回答の注意点:

  • リスク分析と、残りの時間で実行する最も重要なテストケースを選択する方法について説明する
  • 「より完全なテストカバレッジを確保するために、テストを実行する製品担当者と開発者を増やす」といった提案が良い場合もある

上級3.「テストを自動化するためにどのようなアプローチを採りますか」

質問の目的:応募者にテスト自動化計画の立案経験があるかどうかを判断する。

回答の注意点:

  • 「全てのテスト自動化プロジェクトはコスト対効果を最優先に考慮する」という点を忘れない
  • テストスイートとテストケースは、最小のテストケースで最大の価値を引き出せるように最適化する。また、テストケースの選定は重要度に基づいて実施すること
  • 「テスト自動化ピラミッド」を参考にし、大部分の自動化を単体、コンポーネントレベルに集中させ、ユーザーインタフェース(UI)レベルでの自動化は最小限に抑えるべきだ
画像 UIテストは自動化を最小限に抑えるべきだ

上級4.「『100%の自動化』は可能ですか」

質問の目的:応募者のテスト自動化に対する考え方を確認する。

回答の注意点:

  • 振る舞い駆動開発(Behavior-Driven Development: BDD)のように、要件を直接テストスクリプトに変換する手法を用いることで100%の自動化は可能だ。だが、全てのエッジケース(特殊なケース)や優先度の低いテストまで自動化する必要はなく、費用対効果の観点からも非効率だ
  • 自動化が適さないテストもある。例えばUXテストは、実際のユーザーがアプリケーションにどのように反応するかを評価する必要がある。このテストでは不確実性を考慮する必要があるため、自動化には不向きだ

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