TechTargetは2024年12月12日、「『Django』と『Flask』の比較」に関する記事を公開した。さまざまな機能を盛り込むDjangoのアプローチは小さなプロジェクトには過剰かもしれない。一方、Flaskは軽量だが、組み込みツールが不足しており、開発時間が長くなる可能性がある。
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TechTargetは2024年12月12日(米国時間)、「『Django』と『Flask』の比較」に関する記事を公開した。
開発者がWeb開発向けのフレームワークを評価、採用する際には、ドキュメントの完備状況、ツールの統合、効率的なロード時間、セキュリティ機能、ベンダーやコミュニティーによるサポートといったさまざまな点を考慮する。
Djangoは、強力なフォームライブラリや組み込みのテンプレートエンジンを備えており、高度なセキュリティ機能も持っている。Flaskは「WSGI」(Web Server Gateway Interface)標準に準拠しており、「Jinja2」テンプレートエンジンを最適化することで、軽量でスケーラビリティに優れたモジュール型プログラミングをサポートする。
DjangoとFlaskはどちらも「Python」製のオープンソースWebフレームワークであり、フロントエンドとバックエンドの機能を提供することで効率的な開発を実現する。それぞれに強みと弱みがあり、用途に応じて選択する必要がある。
Djangoは、多くの依存関係を持つモノリシックなフレームワークだ。開発者は、明確で論理的なアーキテクチャ、豊富なライブラリ、SQLデータベース統合の内部サポートなど、Djangoの既製のリソースを活用できる。例えば、データベースの属性をPythonのクラスに変換し、データを管理した上で、これらのデータ交換をアプリケーション内で統合できる。
Flaskは拡張性が高く、柔軟なマイクロフレームワークで、開発者は必要なWeb要素を自由に組み合わせられる。これはカスタマイズにおいて重要な機能となる。コードのルーティングとテンプレート処理をデータベース統合と組み合わせることも可能だ。例えば、特定のURLをコード内の特定の関数に関連付け、Jinja2エンジンを使ってテンプレートとデータを結合し、Webページをシームレスにレンダリング(描画)できる。
どちらのフレームワークも、Webアプリケーション開発において独自の強みと課題を持つ。そのため、プロジェクトの要件に合わせて選択する必要がある。ここからは、カテゴリーごとに両フレームワークを比較する。
Djangoを使用する開発者は、Pythonライブラリを活用することで、多様なモジュールや開発ツールを利用できる。これには、デバッグ、データのインポートとエクスポート、ストレージ管理、権限管理などが含まれる。Djangoには1万以上のパッケージがあり、その豊富な機能によって、大量のWebトラフィックを処理する能力がある。
Djangoには組み込みのテンプレートエンジン「Djangoテンプレート言語」(DTL)があり、静的要素とデータを組み合わせて動的なWebページを作成できる。SEO(検索エンジン最適化)機能も備えており、テンプレートのキャッシュ機能や「CSS/JavaScript」の圧縮機能を利用できる。特に「Django SEOフレームワーク」を活用すれば、ページの読み込み時間を短縮し、検索エンジンの可視性を向上させることができる。
Flaskの開発者は、Pythonライブラリを活用して必要なサブルーティンや拡張機能を追加できる。例えば、「Matplotlib」や「Seaborn」といったライブラリを使用すれば、リアルタイムのデータ可視化(チャート、マップ、グラフなど)を簡単に実装できる。Djangoとは異なり、FlaskにはネイティブのO/Rマッピング機能がない。一方で、小規模プロジェクト用の「SQLite」、より大規模なプロジェクト用の「PostgreSQL」、全体的なWeb互換性を確保するための「MySQL」など、さまざまなデータベース形式を操作できる。
Flaskは、PythonベースのWSGI標準に準拠したライブラリ群「Werkzeug」を採用している。WSGIサーバは数千のWebリクエストを処理し、トラフィックのスケーリングを担う。FlaskはWSGIを使ってコードのリクエストやレスポンスを動的に変換し、アプリケーションに適用する。この仕組みによって開発者はサーバの詳細を意識することなく、Webコンポーネントの開発に専念できる。
Djangoは、アプリケーションの設定をコードから切り離して管理できるため、動的なスケーラビリティを実現しやすい。プロジェクトの成長に伴って接続数が指数関数的に増加しても、新しいコンポーネントを簡単に追加できる。不要になったコンポーネントを削除することで、アプリケーションの遅延やラグを抑えることも可能だ。
Djangoは「DRY(Don't Repeat Yourself:繰り返しを避ける)の原則」に従ってコードの再利用を促進するため、開発を効率化できる。セッションフレームワークを活用すれば、データの保存、取得が可能になり、複数のドメインにまたがるユーザーセッションの管理もできる。
Flaskのマイクロフレームワーク設計は、適応性の高いインタラクティブなアプリケーション開発を容易にする。Flaskはシンプルで依存関係が少ないため、アプリケーションの複雑性が増しても、素早くスケールできるという利点がある。Flaskのモジュール構造もスケーラビリティを支える要素の一つだ。開発者は独立したモジュールを作成し、それらを相互に組み合わせることで機能を定義し、個別に実行させることができる。この柔軟な設計によって、必要に応じて機能を拡張、変更しやすく、アプリケーションの長期的な成長にも対応しやすい。
Djangoのセキュリティ機能には、コミュニティーによるパッケージ評価が含まれている。他にも「クロスサイトスクリプティング」(XSS)、「クロスサイトリクエストフォージェリ」(CSRF)、「SQLインジェクション」などの攻撃から保護する機能を備えている。デフォルトの認証機能としては、エンドユーザーとグループアカウントの管理、アクセス権限の設定、Cookieを使用したユーザーセッションの管理が含まれる。
Flaskは、Jinja2テンプレートエンジンを採用することで、自動エスケープやサンドボックス化といった保護機能を提供し、セキュリティを強化している。さらに、Flaskの拡張機能「Flask-Security」は拡張機能「Flask-WTF」を使用することでCSRF対策を実装し、アプリケーションの安全性を高めている。
Djangoは複雑で、習得が比較的難しいため、初心者にとってハードルが高い。そのため、経験豊富なDjangoユーザーは、専門知識やデプロイに関する回避策をオンラインで提供している。こうした情報を活用することで、初心者が学習の初期段階を乗り越えやすくなるだろう。
Flaskは、大規模なフレームワークの複雑さを避けながら、新しいアイデアを試したり、プロトタイプを素早く作成したりできるため、初心者の学習に適している。視覚化ツールを活用すれば、開発プロセスをよりシンプルにすることも可能だ。しかし、Flaskには組み込み機能が少ないため、開発者は必要な追加機能をPythonライブラリから探す必要がある。その際、古いプラグインや未使用のコードを精査する必要が生じることがあり、結果として開発時間が延びる可能性がある。
Djangoは、コミュニティーのサポートが活発で、広範なドキュメント、チュートリアル、ビデオ、ハウツー記事を公開している。Pythonのコミュニティーからの支持も厚く、ビルド関連の問題についてのフィードバックが継続的に寄せられている。
Flaskの人気の背景には、有用なドキュメントと活発なコミュニティーのサポートがある。例えば「Pallets Projects」は、オープンソースのエコシステムとして、最新のライブラリや拡張機能がコミュニティーメンバーによって維持、管理されている。
Djangoは、多くのWebアプリケーションやモバイルアプリの開発に適した効率的なフレームワークだが、複数のリクエストを同時処理する際に課題が生じる可能性がある。開発者は、この制約を克服するために「Gunicorn」や「uWSGI」などのアプリケーションサーバを使用し、複数のワーカーを動作させてリクエストを処理する。また、モノリシックフレームワークであるDjangoのさまざまな機能は、小規模プロジェクトには過剰になる可能性がある。特に初心者にとっては、利用可能なコンポーネントの多さが混乱の要因となることもある。
Flaskは、ビジネスとテクノロジーの両方の目的を満たすために効果的に機能する。Flaskを使えば、定型コードを減らしながら、シンプルで明確なWebアプリケーションを構築できる。柔軟でスケーラビリティの高いFlaskは、時間の経過とともに成長し拡大するユースケース(Webフロントエンドとバックエンドのビルド、データスクレイピング、AIプロトタイピング、機械学習のモデル作成など)に適している。
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