IDCによると、2025年の世界のエッジコンピューティング支出はほぼ2610億ドルとなり、その後年平均13.8%のペースで増加し、2028年までに3800億ドルに達する見通しだ。
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調査会社のIDCは2025年3月17日(米国時間)、2025年の世界のエッジコンピューティング支出がほぼ2610億ドルとなり、その後年平均13.8%のペースで増加し、2028年までに3800億ドルに達するとの予測を発表した。
エッジコンピューティング支出には、エッジソリューションのためのハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、プロビジョニングサービスに対する企業や組織の支出とサービスプロバイダーの支出が含まれる。企業や組織、サービスプロバイダーは27業種に分類されている。
「ほとんどの業界は、データを発生源に近い場所で処理するエッジコンピューティングにより、より迅速な意思決定、セキュリティの向上、コスト削減といった恩恵を受けている。中でも小売り、製造、公益サービス、ハイテク・電子機器、医療、ライフサイエンスなどの業界は、それぞれのプロセスと投資行動に対する特別な理解を必要とする」と、IDCのデータ&アナリティクスグループのデータ&アナリティクス担当マネジャーを務めるアレクサンドラ・ロタル氏は指摘する。
「これらの業界を詳細に理解することで、テクノロジーベンダーはソリューションを各業界固有のニーズや課題に対応させることができる。このターゲットを絞ったアプローチにより、より関連性が高く、効果的なソリューションの提供が可能となり、エッジコンピューティング分野における成長とイノベーションが促進される」(ロタル氏)
IDCは、27業種のエッジコンピューティング支出をAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、ドローン、ロボティクスの6分野で総計1000以上のユースケースに分類し、分析している。予測対象期間ではAR支出、次いでAI支出が最も急速に増加する見通しだ。これらの分野がエッジ投資をけん引することになる。
2025年の世界のエッジコンピューティング支出を業種別に見ると、小売りおよびサービスが約28%と最大のシェアを占める見通しだ。小売りおよびサービスでは、ビデオ分析、動的リアルタイムキャリアパフォーマンス、運用の最適化などのユースケースへの支出が多いと予測されている。
小売りおよびサービスに続くのは製造および資源で、世界のエッジコンピューティング支出の4分の1を占める見通しだ。
また、金融サービスは今後5年間でエッジコンピューティング支出が最も急増し、年平均成長率(CAGR)は15%を超えると予測されている。AI分野の拡張詐欺分析、調査のユースケースに関連する支出がそのけん引役になりそうだ。
さらにIDCは、サービスプロバイダーがマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)、仮想ネットワーク機能といった形で企業にエッジサービスを提供するためのインフラ投資が、2028年までにほぼ1000億ドルに達し、世界のエッジコンピューティング支出全体の4分の1を超えると予測している。
「エッジコンピューティングは、企業がリアルタイムデータを活用する方法を再定義しようとしている。その未来は、個々の業界固有の運用要求に応じてカスタマイズされたソリューションにかかっている」と、IDCのクラウドおよびエッジサービス担当リサーチバイスプレジデントを務めるデーブ・マッカーシー氏は説明する。
「サービスプロバイダーは投資を倍増し、低レイテンシ(遅延)ネットワークの構築、AIによるエッジ分析の強化、スケーラブルで安全なインフラ提供のためのパートナーシップ形成を行っている。これらの取り組みは、エッジコンピューティングの可能性を最大限に実現し、よりスマートな製造現場から応答性の高いヘルスケアシステムまで、さまざまなものを可能にし、幅広い業界で新たなイノベーションの波を引き起こすために不可欠だ」
エッジコンピューティング支出をハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、プロビジョニングサービスという技術グループ別に見ると、現時点ではハードウェアが最も大きな割合を占める。急速に導入が進んでいるAIアクセラレーテッドプロセッサがけん引役だ。
だが、プロビジョニングサービスとプロフェッショナルサービスへの支出合計は、5年間のCAGRが18%以上となり、2028年までにハードウェアの支出シェアを上回ると予測されている。プロビジョニングサービスでは、IaaS(Infrastructure as a Service)が最も急速に支出が増加するカテゴリーとなる見通しだ。AIワークロードの増大する計算需要に対応できる、スケーラブルかつ柔軟で費用対効果の高いソリューションが必要とされることがその背景にある。
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