IDCは、2024年の世界のエッジコンピューティング支出が前年比15.4%増の2320億ドルになるとの予測を明らかにした。
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調査会社のIDCは2024年3月14日(米国時間)、2024年の世界のエッジコンピューティング支出が前年比15.4%増の2320億ドルになるとの予測を明らかにした。
この支出には、エッジソリューションのためのハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、プロビジョニングされたサービスに対する企業、官公庁、自治体などの組織およびサービスプロバイダーの支出が含まれる。この支出は増加を続け、2027年には3500億ドル近くに達する見通しだ。
IDCはエッジについて、「中央データセンターの外部で実行される情報通信技術(ICT)関連のアクションであり、接続されたエンドポイントとコアIT環境を仲介する」と定義している。
IDCによると、エッジの特徴は、分散され、ソフトウェアで定義され、柔軟性があることだ。エッジの価値は、データが作成、取引、保存される物理的な場所にコンピューティングリソースを移動させることで、コアIT環境の外部で実現されるビジネスプロセス、意思決定、インテリジェンスを拡大することにある。
「エッジコンピューティングは、AIアプリケーションの展開において極めて重要な役割を果たすだろう」と、IDCのクラウドおよびエッジサービス担当リサーチバイスプレジデント、デーブ・マッカーシー氏は指摘する。
「企業は、スケーラビリティとパフォーマンスの要件を満たすために、エッジコンピューティングが提供する分散アーキテクチャのアプローチを採用する必要がある。OEM、ISV、サービスプロバイダーは、エッジロケーションでAIを実現する機能セットを拡張することで、この市場機会を活用している」(マッカーシー氏)
IDCは19の業界にわたって、6つの技術領域における500以上の企業ユースケースにエッジICT支出を分類している。サービスプロバイダー業界では、エッジサービスを提供するための投資は、マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)、仮想ネットワーク機能のためのインフラ支出で支えられている。この3つのユースケースを合わせると、2024年のエッジ支出全体の22%近くを占める見通しだ。
エッジソリューションを導入する企業や組織では、2027年まで大規模な投資と急速な成長が見込まれるユースケースの例として、拡張メンテナンス(拡張現実)、生産資産管理、AIを活用した供給や物流、拡張診断/治療システム、サプライチェーンレジリエンス(強靭性、回復力)、在宅患者遠隔モニタリング、店舗内のコンテキストマーケティングなどが挙げられる。
2022〜2027年に最も急速な支出増が予測される新しいエッジユースケースには、自律的採鉱作業、現場設計管理(建設)、パイプライン検査(公益サービス)、拡張研修(多くの業界)、専門家によるショッピングアドバイザー&商品推奨(小売り)などがある。
「企業や組織の投資はこの2年間、インフラ拡張や新分野への展開にシフトし続けている。企業や組織は、より堅牢(けんろう)なローカルコンピューティングインフラ機能の構築計画に基づいて動いている」と、IDCのデータ&アナリティクス担当リサーチバイスプレジデント、マーカス・トーチア氏は説明する。
「今後2年間では、計画されている投資の割合から見て、MEC製品がやや有利だ。だが、企業や組織は、サービスプロバイダーに対する支出全体の効率化にも目を向けている。このため、2027年まで、設備投資の対象となる大型のエッジ製品と、営業経費の対象となるサブスクリプション型などのエッジ製品がひしめき合う、ダイナミックな市場が形成されることになる」(トーチア氏)
エッジソリューションを導入する企業や組織のエンドユーザー業界では、2024年のエッジソリューション投資全体のうち、加工組立製造業とプロセス製造業が最も大きな割合を占め、小売業とプロフェッショナルサービス業がこれに続く。
IDCは、19の業界全体におけるエッジソリューション支出の2022〜2027年の年平均成長率(CAGR)が、10%台前半〜半ばになると予測している。サービスプロバイダーセグメントのCAGRが19.1%と最も大きくなるという。
エッジソリューション支出の構成要素別の内訳を見ると、2024年はハードウェア支出が引き続き最大の割合を占め、全体の40%近くになる見通しだ。特に、サービスプロバイダーインフラがそのけん引役になる。ハードウェアの機器別では、エッジゲートウェイ、サーバ、ネットワーク機器がけん引する。
2027年までの5年間では、プロビジョニングされるサービスの企業や組織における導入が急増し、2026年には、ハードウェアが占める割合を初めて上回る。プロビジョニングされるサービスの中では接続のカテゴリーが最大の割合を占め、IaaS(Infrastructure as a Service)のカテゴリーが最も急速に成長する。オンプレミスソフトウェアはエッジインフラの重要な構成要素となるが、エッジ支出に占める割合は最小にとどまる見通しだ。
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