日本のIT企業で活躍するジョン・エリンさん。データ分析の最前線で感じるやりがい、韓国とは異なる日本の企業文化、そしてエンジニアとしての深い成長論に迫る。
グローバルに活躍するエンジニアを紹介するインタビュー連載「Go Global」。今回ご登場いただくのも、ギグワークスクロスアイティでデータインテリジェンスエンジニアとして活躍中の鄭 愛隣(ジョン・エリン)さんだ。
前編では、韓国の全州で育ち、J-POPに熱中した学生時代、そして特殊教育の教師を経て、現場でITの可能性に目覚めたジョンさんが、海外就職を目的とする専門アカデミーで猛勉強を積むまでの軌跡をたどった。後編では、ついに日本でITエンジニアとしてのキャリアをスタートさせたジョンさんの、現在進行形の成長と、日韓の仕事観の違いについて深く掘り下げる。
聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
韓国貿易協会貿易アカデミーでITと日本語を学んだジョンさんは、アカデミーのサポートを受け、2020年4月にギグワークスクロスアイティに入社した。
会社を選ぶ際に最も重視したのは、「ちゃんとした製品を持っているかどうか」であり、今後のビジョンも加味した上での選択であった。現在、入社から6年目を迎えている。
現在、ジョンさんが担当するのはデータインテリジェンスという部署での仕事である。具体的には、データを中心に動くプロジェクトにおいて、データの管理や分析、視覚化、そしてデータの取り込みや更新処理の開発および保守を担当している。
入社1年目、新人教育を終えて配属されたのは、データを扱って地図で表示させる部署であった。ここでは、アカデミーで学んだJavaやSQLの知識がそのまま生かせた。顧客のデータを集め、地図上で効率的に表示させる実作業を経験したことで、「アカデミーで学んだことがそのまま業務に直結して、どんどん仕事の幅が広がっていると感じた」とジョンさんは語る。
現在はデータ関連の新しいプロジェクトで4年目を迎えている。特にデータを持って分析し視覚化する仕事に面白さを感じており、その中で「Tableau」を初めて使用した。Tableauは便利なことに加え、今後AI(人工知能)と併用できる可能性もあるため、データの分析や視覚化に大きな面白さを感じているという。
一方で、大変だと感じるのはデータの不具合調査である。
どの処理で不具合が発生し、データがうまく取れないのかという原因調査は、AIではまだ完全にはできないため、直接調査する必要がある。特にビッグデータの場合、結合条件などが複雑なため、原因究明に時間がかかることがあるという。
ジョンさんのチームは3人体制で、ジョンさん以外の2人は日本人であり、仕事は全て日本語で行われている。日本のエンジニアとの仕事について、ジョンさんは「困ったことは、あんまりないですね」と述べ、自分は運が良かったと語る。
彼女が考える「運の良さ」は、人に恵まれることである。特に、上司や先輩たちの技術スキルや、論理的に話す能力の高さから、仕事を通じて多くを学んできた。お客さまとの打ち合わせも多いため、「原因と解決、何をするのかも論理的に話すこと。これも結構重要な仕事だと思います」とし、良き上司たちの下で働けることに感謝している。
現在、ジョンさんは初めて後輩を持ち、彼らの教育に難しさを感じているという。後輩にうまく説明する方法に悩んだことで、上司たちが細かくアドバイスや説明をしてくれていたことの「すごさ」を改めて実感している。「もっと成長したいです」と意欲を見せている。
ジョンさんは、日本で働く中で気付いた日韓のIT現場における興味深い文化の違いについてこう語る。
「日本は韓国よりも、トラブル発生時の原因調査が結構深い」
日本では「今回はこの原因でトラブルが発生した。でも他にも可能性はないのか」と、複数の可能性を徹底的に調査し、リスト化する。将来的に発生し得るトラブルのケースを整理しておくことで、今後の対応が楽になるというメリットがある。
インタビュアーの阿部川は、これを日本のことわざ「転ばぬ先の杖(つえ)」に例えている。ジョンさんも、最初は今回の原因だけ分かればよいという考えもあったが、仕事を通じて「日本に来て、いろいろなケースを準備しておいた方がよいかな、という考えに変わりました」と述べており、日本の安定性を重視するやり方に対し、肯定的である。
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