IT業界に従事して5年がたち、ジョンさんは自身の成長を実感している。
アカデミー時代はプログラミング中心の学習であったが、現在はSQLの扱いに慣れ、TableauやAWS(Amazon Web Services)の技術を取得するなど、多様なツールや技術を経験できた。
また、ジョンさんのキャリアの大きな特徴である「教える経験」(特殊教育の教師、そして現在の後輩指導)は、自身の学び方にも大きな変化をもたらしている。
学生時代は結果を優先していたが、教師や先輩を経験した今は、「結果のためにどのように勉強したら効率化できるかを考えることができるようになりました」という。今では、結果よりもプロセスに重要性を感じ、どのように学ぶのが自分にとって最良かを優先している。
この考え方は、後輩の教育にも生かされている。
かつて教師をしていた頃は「こうなってほしい」という目標を優先していたが、いまはまず「後輩がいまどのレベルにいるのか、どのように考えているのか、どのような知識を持っているのかをまず知るようにしています」と、相手の状況に合わせた学び方を考えるようになった。
今後の目標について、ジョンさんは「もっと専門的にデータ分析をしたいなと思います」と語っている。
いまは交通系のプロジェクトが中心だが、今後はビッグデータを扱い、分析を通じて予測できる結果や改善できる方法を導き出し、エンターテインメントや教育のデータなど、多様なプロジェクトに参加したいと考えている。
教育分野での知識を持つジョンさんがデータ分析を行うことで、教育の改善につながる可能性は高い。ジョンさんは「大きい変化までいかなくても、少しでも変化ができればいい」と謙虚に語るが、阿部川は、教育熱心な韓国の背景を鑑みても、大きな変化が期待できると応えている。
ジョンさんは現在33歳。「もしかしたらIT業界での経験を生かして。また教育者に戻ることもあるかもしれない」とも語る。特殊教育の現場で培った「人の成長プロセスを見極める視点」と、ITエンジニアとして身に付けた「論理的な分析能力」は、今後、国や業界を超えて、世界に通用する大きな強みとなるだろう。
障害のある学生を助けるには教育が必要と看過。毎日の業務と格闘し、現実とできることのギャップに悩んだジョンさん。しかしそこでとどまらず、ITを活用できないかと試行錯誤し続けた。時代がようやく、ニューロダイバーシティー(※)という言葉を受け入れ出した。そう遠くない将来、現在のITの仕事がニューロダイバーシティーと結ばれる時が来ると、ジョンさんの言葉を聞いて確信した。
それにしてもJ-POP、J-ドラマの力は本当にすごい。日本語は独学というが、言葉を音楽やドラマから学ぶと、これほど上達できる証左だし、ついでにITも学べるなら日本に行こうとなってしまうこの影響力。
マンガ、アニメ、ゲームの海外売り上げは既に6兆円を超えてこの10年で3倍以上伸びた。実は半導体、鉄鋼を超えていて、国はこれらの業界を成長産業から基幹産業へと格上げした。この分野こそが、日本の戦略的に得意としなければいけない得意分野。ここが伸びれば、当然ITも伸びる。
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍する外国籍のエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCTO(最高技術責任者)など、ぜひご一報ください。取材の確約は致しかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。
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