「ネットワークスライシング」と「Starlink」で混雑下でも安定通信ができるか、輪島市で検証災害時に求められる映像や音声の安定伝送

NTTデータ北陸、NTTドコモビジネス、輪島市の3者は、ネットワークスライシングとStarlinkを活用し、災害時でも安定した通信を実現するための実証実験を実施する。

» 2025年12月26日 13時00分 公開
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 ネットワークを仮想的に分割し、用途に応じて通信を最適化する技術である「ネットワークスライシング」と、低軌道衛星を用いてインターネットアクセスを提供するサービスである「Starlink」。NTTデータ北陸、NTTドコモビジネス、石川県輪島市の3者は2025年12月5日、ネットワークスライシングとStarlinkを使った実証実験を行うと発表。災害時の用途に応じて、安定した通信を実現できるかどうかを検証する。

「ネットワークスライシング」と「Starlink」で安定通信ができるか?

 災害時には、通信回線の混雑や障害によって、防災情報の伝達や緊急対応に当たる関係者間の通信が不安定になる課題がある。通信事業者の無線基地局に接続された光ケーブルなどの回線が切断され、周辺地域が圏外となることで、防災情報を適切に届けられないケースも想定される。

 今回の実証実験では、ネットワークスライシングとStarlinkに接続した移動基地局車を組み合わせて活用し、被災地でも安定した通信環境を確保することで、迅速な救助活動や円滑な復興作業につなげることを狙う。NTTドコモビジネスが構築したネットワークスライシング技術や、NTTデータ北陸の防災情報伝達システム「減災コミュニケーションシステム」を活用し、災害発生時でも映像や音声を安定して伝送できるかどうかを検証する。

 輪島市役所前駐車場と、能登半島地震の被災者が暮らす仮設住宅団地内に開設された交流・福祉拠点「コミセンマリンタウンBASE」を実証フィールドとして、以下の2つの検証を実施する。

本実証の輪島市役所とコミセンマリンタウンBASE間の通信構成イメージ(提供:NTTデータ北陸)

1.スライシングによる通信安定性の検証

 輪島市役所前駐車場にStarlinkに接続した移動基地局車を設置し、コミセンマリンタウンBASEとの間で映像伝送を行う。サイネージシステムや減災コミュニケーションシステムを用いて、防災情報を適切に伝達できるかどうかを検証する。コミセンマリンタウンBASE側では、疑似的に通信が混雑した環境を構築し、通常の回線ではコミュニケーションが困難な状況を再現。その上で、通信安定化につながる技術であるネットワークスライシングを用いる。

2.Starlinkを活用した通信回線確保の検証

 Starlinkをバックホール(無線基地局が上位モバイルネットワーク網に接続してデータ伝送する中継回線)として用い、移動基地局車の通信を経由してコミセンマリンタウンBASEとの間で映像伝送や防災情報伝達が可能かどうかを確認する。

 コミセンマリンタウンBASEとの双方向の映像伝送によるコミュニケーションを実施する他、減災コミュニケーションシステムを通じて、同拠点の屋外に設置したスピーカーから音声放送を行う。施設内に設置されたサイネージにもリアルタイムで情報を配信できるかどうかを検証する。

 NTTデータ北陸、NTTドコモビジネス、輪島市の3者は、本実証で得られた知見を基に、今後はHAPS(高度20キロ前後の成層圏で通信サービスを提供する基地局)などの先端技術も組み合わせ、災害時の通信インフラ強化や防災情報伝達の高度化を進める方針だ。

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