年末年始も危ない? 国際電話やLINEの悪用、自動音声で誘導する「ボイスフィッシング」まで深刻な被害が出ている特殊詐欺

トビラシステムズは2025年12月18日、独自の迷惑情報データベースや調査情報を基にまとめた「特殊詐欺・トレンド詐欺手口レポート2025」を公開した。

» 2025年12月27日 08時00分 公開
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 迷惑電話フィルタサービスを提供するトビラシステムズは2025年12月18日、同社の迷惑情報データベースの内容や各種調査結果に基づき、特殊詐欺および2025年に急増した詐欺手口の傾向をまとめた「特殊詐欺・トレンド詐欺手口レポート2025」を発表した。

 同レポートによると、2025年の特殊詐欺被害額は2025年10月末時点で1096.7億円に達し、過去最悪を記録した。

特殊詐欺の被害額状況(提供:トビラシステムズ

 特に顕著だった特徴として、電話やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など複数のチャネルを組み合わせる「複合型詐欺」の台頭が挙げられている。生成AI(人工知能)技術の悪用も手口の巧妙化に拍車を掛けているという。

生成AIやLINE、国際電話を悪用した新手口とは

 従来の詐欺手口は、主に電話のみで完結する「単一チャネル型」が主流だったが、2025年は電話、SNS、メッセージアプリ、ビデオ通話、偽サイトなどを組み合わせる「ハイブリッド型」へと移行している。攻撃者はこれらを巧みに連携させ、リアリティーのある状況を演出することで被害者を心理的に追い詰めているという。

 生成AIの進化が、詐欺手口の高度化に悪用されている実態も指摘されている。ディープフェイクによる合成映像や、自然言語処理AIを用いた違和感のない文章生成により、偽物と本物の判別が技術的に困難になっている状況が浮き彫りとなった。

「ニセ警察詐欺」におけるスプーフィングとビデオ通話への誘導

 2025年に流行した手口の一つに、「ニセ警察詐欺」がある。これは警察官を名乗る人物から電話があり、「犯罪容疑がかかっている」「資産調査が必要」などとして金銭をだまし取る手法だ。

 近年の傾向として、電話での接触後に「LINE」などのメッセージアプリへ誘導し、「事情聴取」と称してビデオ通話を求めるケースが増加している。ビデオ通話では警察官の服装をした人物が、偽造された警察手帳や逮捕状を提示するなど、公的機関を装って被害者に心理的圧力をかける手口が多用されるという。

ニセ警察詐欺の手口(提供:トビラシステムズ

 技術的な観点からは、発信元として国際電話番号が悪用されるケースが目立つ。「+1」などで始まる番号の他、番号末尾を「0110」に偽装するスプーフィング(なりすまし)の手法も確認されており、着信番号表示だけでは不審な通信を見抜くことが難しくなってきている。スマートフォンでの操作に慣れた20代から30代の若年層もターゲットとなっており、一連の犯行が携帯電話上で完結する点に注意が必要だという。

法人を狙うボイスフィッシング、地銀かたりやクレデンシャル窃取も

 SNSを利用した投資詐欺やロマンス詐欺も深刻化しており、これらを含めた被害額は2025年10月末時点で1370.8億円に達し、前年を上回っている。これらの手口では、投資グループへの誘導やマッチングアプリでの信頼関係構築のためにディープフェイク技術が悪用されているという。

 自動音声とフィッシングサイトを組み合わせた「ボイスフィッシング」という手口を用いた、法人を標的にした攻撃が急増していることにも注意が必要だ。金融機関や宅配事業者を装う自動音声電話を入り口にして、SMS(ショートメッセージサービス)やメールで偽サイトへ誘導し、インターネットバンキングのログイン情報を盗み取る。こうして窃取された情報を基に法人口座へ不正アクセスが行われ、数億円規模の不正送金被害も発生している。特に地方銀行をかたるケースが増加傾向にあり、攻撃対象が広がりつつあるという。

ボイスフィッシングの手口(提供:トビラシステムズ

 トビラシステムズは、通信技術やAIの進化とともに複雑化する脅威に対し、フィルタリングサービスの活用や、組織内でのセキュリティ意識の向上が重要だと指摘。特殊詐欺などの被害に遭わないために、日頃から対策を徹底すると同時に、年末年始には家族や知人など周囲の人への注意喚起をしたり、対策方法を見直したりすることを推奨している。

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