ABI Researchは世界のデータセンター容量に関する予測を公開した。ハイパースケーラーのデータセンター容量が拡大するだけではなく、ネオクラウドやソブリンクラウドも成長する見通しとなっている。
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生成AI(人工知能)の急速な普及を背景に、世界各地でデータセンター投資が加速している。AIモデルの学習や推論に膨大な計算資源と電力が必要になることが背景にある。近年は、ハイパースケーラーと呼ばれる大手クラウドベンダーだけではなく、「ネオクラウド」や「ソブリンクラウド」と呼ばれるクラウドサービスの形態にも注目が集まり、今後のデータセンター市場の構成を変える可能性がある。
こうした中で調査会社ABI Researchは2026年1月28日(米国時間)、クラウドサービスベンダーのデータセンターの容量に関する予測レポート「Cloud Service Provider Capacity Forecast」を基に、世界のデータセンターの動向を公式ブログで解説した。同社は世界のクラウドサービスベンダーのデータセンターにおけるIT供給電力容量(IT機器を稼働させるために供給される電力容量)について、2025年の24.4ギガワットから、2035年には約6倍の147.1ギガワットまで増加すると予測。年平均成長率(CAGR)に換算すると27%になる。その一つの要因になるのが、AIワークロードの拡大だ。
ABI Researchは、データセンターのワークロード(アプリケーションの計算処理)をAIワークロードとレガシーワークロードに分類し、それぞれが必要とするデータセンターIT供給電力容量の割合の変化を予測している。それによると、これまで企業によるAI導入は、投資対効果(ROI)が不確実なために停滞している。2026年にはデータセンター容量は全体の38%にとどまるが、今後その割合は急速に高まり、AIワークロードにおける構成も変化していく見通しとなっている。
2020年代を通じて生成AIやエージェント型AIの普及が進み、AIワークロードの割合は2031年までに51%に達し、2035年までに64%を占めると予測されている。この頃までに、AIのユースケースではトレーニングよりも推論の比重が大きくなりそうだ。
一方、ラック当たりの電力密度と冷却効率が、データセンターの容量拡大の制約要因となっている。そこでデータセンターのレファレンス設計が、主要な指標を踏まえて新規データセンターを迅速に構築するための実証済みの枠組みとして、重要視されるようになっている。
ABI Researchは、地域別のデータセンター容量の動向を以下のように予測している。これらは各地域におけるAIの成熟度、景気の強さ、ハイパースケーラーの存在感を反映している。
北米は、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleといったハイパースケーラーが本社を置いている。今後10年間におけるデータセンターの容量拡大の最大のけん引役であり、2026年は世界の稼働データセンターIT供給電力容量の42%を占める見通しだ。北米の稼働データセンター容量は2025年の10.2ギガワットから年平均25%のペースで増加。2035年には71.8ギガワットに達し、2035年の世界のデータセンター容量全体に占める割合は49%に上昇すると予測されている。
アジア太平洋は、データセンターの容量拡大の2番目のけん引役だ。ABI Researchは、アジア太平洋が今後10年間、世界の稼働データセンター容量の約30%のシェアを維持すると予測している。地域経済の活性化や企業サービスの向上を目的に、AIの普及を促進する取り組みが数多く行われており、ハイパースケーラーが東南アジアを中心に、データセンターインフラを拡張している。
技術的に成熟しているものの、北米やアジア太平洋と比べると、データセンター容量の拡大ペースは緩やかになる見通しだ。ABI Researchは、欧州の稼働データセンターIT供給電力容量が2025年の4.5ギガワットから、2035年には26ギガワットに増加すると予測している。この間のCAGRは20%になる見通しだ。
中東のデータセンター容量は、2025年の1.3ギガワットからCAGR19%のペースで増加し、2035年には6.3ギガワットに達する見通しだ。この急成長は、サウジアラビア王国による400億ドル規模とされる基金を含め、この地域で行われている多額のAI投資に支えられている。
データセンター市場としては他地域よりも格段に規模が小さい。2025〜2035年のCAGRは27%だが、これはむしろ、この地域の従来のAIインフラが未成熟であることを浮き彫りにしている。ハイパースケーラーは中南米全域で事業を展開しているが、企業のAI導入が遅れているため、その規模は限られている。中南米の稼働データセンターIT供給電力容量は、2025年の1.3ギガワットから2035年には3.8ギガワットに増加する見通しだ。
ABI Researchは、クラウドサービスベンダーを以下のように分類し、各グループ別にデータセンター容量を予測している。
ABI Researchはティア1ハイパースケーラーが、今後10年間のデータセンターの容量拡大に最も貢献すると予測している。ティア1ハイパースケーラーの稼働データセンターIT供給電力容量は、2025年の13.8ギガワットから2035年には60.2ギガワットに増加する見通しだ。
ティア2ハイパースケーラーは、2026年時点では2番目に大きなクラウドサービスベンダーグループだが、ネオクラウドベンダーが2028年までに、これを追い抜く見通しだ。ネオクラウドベンダーのデータセンター容量は、2025年から2035年までに43.4ギガワットに増加し、この間のCAGRは4グループの中で最大の33%となる見通し。ネオクラウドベンダーが急成長する背景としては、AI需要で地域固有のデータセンターが企業にとって不可欠になることが挙げられる。
ソブリンクラウドベンダー/政府のデータセンター容量は、2025年の3.2ギガワットから2035年までに16.8ギガワットまで増加する見通しだ。地政学的な不安定さにより、各国政府はデータ主権の確保によってデータを保護せざるを得なくなっているからだ。
アジア太平洋地域は、デジタル化プロジェクトにおいてAIの取り組みとデータプライバシーが優先されることから、ソブリンクラウドの容量の増加幅が、5つの地域カテゴリーの中で最も大きくなると予測されている。ABI Researchは、2025〜2035年の予測期間を通じて、アジア太平洋地域が、ソブリンクラウドのIT供給電力容量の50%以上を占めると見ている。
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