世界的にクラウドやコロケーションデータセンターの容量不足が深刻化する中、企業に求められているのは、容量の最適化や代替リージョンの活用などの対策だ。本稿では、コロケーションの制約と検討すべき方策、日本の状況についても解説する。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
企業が世界の主要市場でクラウドやコロケーションデータセンターの容量の制約に直面するケースが増えており、そのためにデジタルおよびAI(人工知能)ワークロードのスケーリングに支障が生じている。
この問題は、地域展開の制限、運用コストの上昇、I&O(インフラとオペレーション)チームや同チームが支援するビジネスが混乱に陥る可能性といった具体的なリスクをもたらしている。
多くの企業は、希望する地域でクラウドの使用量を拡大できなくなったと報告している。場合によっては拡大のために、より混雑の少ない地域にワークロードを移動することが求められている。
容量不足はクラウドプロバイダーとコロケーションプロバイダーの両方で顕著になっている。両者とも、米国のバージニア州やオハイオ州、英国のロンドン、アイルランドのダブリン、オランダのアムステルダムといった主要市場での供給余力が歴史的な低水準にある。クラウドプロバイダー各社は数四半期前から、需要に供給が追い付かない状況を警告し続けている。
こうした制約は電力や建設労働者、AIチップ、高帯域メモリ(HBM)など、重要な要素の世界的な不足によってさらに深刻化しており、データセンター建設に大幅な遅れが出ている。
需要の予測や予備容量の維持に関する能力は、プロバイダーによってまちまちだ。それが顧客体験のばらつきにつながっている。クラウドプロバイダーが空き容量を確保するために、顧客に対して既存ワークロードの一部を、容量が逼迫(ひっぱく)しているリージョンから他のリージョンに移行するよう要請する場合もある。
コンピュートインフラやストレージなど、一部のサービスの移行プロセスは比較的単純だ。データをコピーし、新リージョンで必要な機能を設定する程度で済む。ただし、地理的なネットワークの再構成も必要となるため、コストが増加し、レイテンシ(遅延)が悪化する場合が多い。
一方、移行の個々のケースに合わせて複雑で面倒な手順が必要となる場合もある。より高レベルのプラットフォームサービスでは特にそうだ。どちらのシナリオでも、顧客は多くの場合、当初は想定していなかったリージョンでの運用を余儀なくされる。
希望するリージョンを選択できなければ、運用上の課題となりかねないだけでなく、デジタルおよびデータ主権要件の順守が妨げられ、新しい、あるいは外国の規制に抵触する恐れがある。ワークロードが展開されるリージョンからエンドユーザーが遠く離れていれば、パフォーマンス上の問題も起こるかもしれない。企業はこうしたビジネスへの影響の重大さを踏まえ、希望しないリージョンで運用することによる弊害を、広範なビジネス上の結果も含めて把握する必要がある。
企業が直ちにできる対策としては、メインアカウント以外のアカウントでの未使用の予約済み容量の特定、開発環境やテスト環境における利用容量の削減、開発用やテスト用インスタンスの代替リージョンへの移行などが挙げられる。
コロケーション容量も、供給がますます限られている。これは同じ地域で展開するクラウドプロバイダーに見られる容量不足を反映している。多くの地域で空き容量率は10%を下回り、西欧や北米、アジア太平洋(APAC)の幾つかの地域ではさらに余力が乏しい。クラウドプロバイダーが自社の物理インフラの運用でコロケーション施設に大きく依存していることが、この容量不足に拍車を掛けており、市場の需給逼迫を深刻化させている。
Gartnerは、大規模データセンターが2024年から2029年にかけて、年平均8.1%のペースで成長すると予測している。ハイパースケールプロバイダーのAIインフラ投資が主なけん引役だ。ただし、こうした成長にもかかわらず、多くの新規施設は完成前にリース契約が交わされる見通しだ。そのため、コロケーションのリテール(小口)顧客向けに実際に提供される容量の拡大は緩やかになる。AIインフラの構築が現在のペースで続くのであれば、主要リージョンにおける容量の供給制約も続くと予想される。
空き容量率が低水準にとどまり、エネルギーコストが上昇していることから、コロケーションプロバイダーは契約期間の短縮を好み、エネルギー価格に連動した値上げ条項を導入するようになっている。
企業はコロケーションプロバイダーにおける容量制約に対処するに当たって、以下の方策を検討すべきだ。
日本国内の状況も同様だが、AI向けデータセンターの需要に関しては、ハイパースケールクラウドプロバイダーを除けば、依然として潜在的な段階にとどまっている。
現状では、極めて意欲的な一部の企業や組織による利用が先行しているのが実態だ。また、国内のデータセンタープロバイダー間ではAI対応への準備状況(レディネス)に大きな格差があり、将来的にAI対応能力に二極化が生じる可能性がある。
そのため、AIの戦略的活用を計画している企業はプロバイダーのAI対応ロードマップを精査し、先行して環境を整備しているプロバイダーのデータセンターを選定する必要がある。
出典:How to Navigate Growing Capacity Constraints in Cloud and Colocation Data Centers(Gartner)
※この記事は、2026年2月に執筆されたものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.