Difyのサポートチームは、生成AIを活用して顧客からの問い合わせメールの分類を85%自動化した取り組みについて解説した。
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ノーコードでAIアプリを構築できるプラットフォーム「Dify」のサポートチームは2026年3月11日(米国時間)、顧客の「意図(インテント)」を読み取り、問い合わせメールを自動で振り分ける取り組みについて公式ブログで解説した。
Difyのサポートチームは、製品の普及に伴い問い合わせチケット数が増加し、誰が対応すべきかを判断するための手動でのトリアージ(優先順位付け)の負担が増大しており、運用上の課題へと発展したという。
特に問題となったのが判断のばらつきだ。同一の問い合わせでも担当者により内容の分類方法が異なり、メールが複数回転送されるケースも発生した。こうした課題は問い合わせ件数が少ない段階では管理可能でも、規模が拡大すると急速に深刻化する。
Difyのサポートチームが最初に取り組んだのは、キーワードに基づくルールベースの分類だった。この手法は挙動の制御と透明性を確保できる利点があったものの、柔軟性に欠けていた。顧客の言葉遣いの変化、新たな製品シナリオの登場に追従し切れず、ルールの保守作業が絶え間ない運用負荷となり、規模の拡大に耐え得る解決策にはならなかった。
一方で、完全自律型のAIエージェントに分類を委ねる手法には予測不能な挙動のリスクがあった。モデルが振り分け判断を独自に解釈して実行する設計は不確実性を伴い、請求上の紛争やコンプライアンス(法令順守)案件などを扱う環境では受け入れられなかったという。
そこでDifyのサポートチームは、制御された範囲内でAIを活用するアプローチを採用した。ワークフロー機能で確定的な処理の流れと分岐を定義し、その中にAIを「制御されたチェックポイント」として組み込んだ。
メールの内容の解釈はLLMに任せるものの、実行プロセスはあらかじめ定められたルールに従って動作する。「知能」と「制御」の分離により、LLMによる判断が意思決定の質を向上させながら、運用上のセーフガードを順守する設計を実現したという。
Difyのサポートチームは次のような流れでメールを分類するワークフローを再設計した。
受信メールがワークフローを自動的にトリガーする。ここでは分類・判断処理は実行せず、メタデータと本文コンテンツを即座に取得して信頼性の高いデータ入力を確保する。
分類処理の前に、署名、購読解除リンク、転送スレッドの履歴を削除し、ユーザーが作成した最新メッセージのみを保持する。ノイズを低減することで分類の安定性を大幅に向上させた。
LLMは固定ノードで分類アナリストとして機能する。事前定義されたカテゴリーから選択し、インテント、信頼度(モデルの自己評価)、構造化された検証情報を返す。分類カテゴリーはワークフロー内で固定されている。
信頼度が高く、機密性の低いケースは自動分類される。機密性の高いケースや信頼度が低いケースはレビュープロセスに回される。
分類結果は下流のシステムに渡され、完全な監査証跡が保持される。全ての判断が可視化され、追跡可能な状態を維持する。
この仕組みを導入した結果、Difyのサポートチームでは受信メールの約85%が自動で分類されるようになった。手動トリアージは例外的なケースに限定され、分類の一貫性を確保できるようになったという。
「ルールのメンテナンス負荷が実質的に減少し、担当者の割り当てが状況依存ではなく予測可能なものになった。サポートチームは調整作業から解放され、顧客の課題解決に集中できるようになっている」(同チーム)
なおDifyのサポートチームは、他の企業でもこのアーキテクチャを導入できるよう、再利用可能なDify WorkflowのDSL(Domain-Specific Language)テンプレートとしてGitHubで共有している。テンプレート導入時は以下の調整が必要になるという。
Difyのサポートチームは「統合の複雑さにもよるが、このテンプレートを用いることで、多くの組織が2〜3週間以内に、運用に耐え得る安定した分類自動化ワークフローを展開できる」と述べている。
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