Claude Fable 5に復旧の兆しが見え始めた。だが停止問題を巡っては、単なる脱獄対策では説明し切れない新たな情報も浮上している。NSAによる非公開説明や政府のAI事前審査構想をたどると、米政府とAnthropicの間で進む別の交渉が見えてきた。
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米国のテクノロジーメディア「Tech Times」は2026年6月21日(米国時間、以下同)、商用AIとして異例の長期停止が続くAnthropicの「Claude Fable 5」(以下、Fable 5)について、復旧を示唆する動きが見られる一方で、規制解除が進まない背景を巡る新たな見方が浮上していると報じた。
開発者らは2026年6月21日、「Claude」の「Android」アプリ内にあるコーディング用インタフェースのモデル選択画面で、Fable 5の名称が再び表示されたと報告した。コマンドで同モデルを呼び出すと、従来の「model unavailable」ではなく、「server is temporarily rate-limiting requests」と表示されたという。
一般にレート制限は、サービスが稼働した状態でアクセス集中などに対応する際に表示される。完全停止中のサービスとは異なる挙動であることから、開発者コミュニティーでは復旧準備が進んでいるのではないかとの見方が広がった。予測市場Kalshiでは、2026年7月1日までにFable 5が復旧する確率が約57%と見積もられている。
ただしAnthropicは復旧を公式に認めていない。2026年6月21日時点で、「claude-fable-5」へのAPI呼び出しはエラーを返している。同社の国際担当マネージングディレクター、クリス・シアウリ氏は2026年6月17日、ソウル拠点開設時のイベントで数日以内の復帰に期待を示したが、正式な復旧時期は公表されていない。
停止問題の背景を巡って注目を集めているのが、英国の新聞『The Economist』が2026年6月21日に報じた米上院情報委員会での非公開説明だ。
同報道によると、国家安全保障局(NSA)長官兼米サイバー軍司令官のジョシュア・M・ラッド大将は2026年6月11日、マーク・ウォーナー上院議員に対し、分類されたレッドチーム演習においてAnthropicの「Claude Mythos」がNSAの機密システムの大部分に数時間で自律的に侵入したと説明したという。
これまでAnthropicは、政府が問題視したのは特定のコードベースを解析させて脆弱(ぜいじゃく)性を発見する限定的な手法であり、他の先進的なAIモデルでも再現可能な現象だと説明してきた。
一方、『The Economist』の記事は、政府側が懸念しているのは公開された脱獄(ジェイルブレイク)手法そのものではなく、より高い権限で運用されたモデルが示した能力水準ではないかとの見方を示している。
Fable 5とMythos 5は同じ基盤モデルを利用している。両者の大きな違いは安全対策の構成だ。
Fable 5では、攻撃的サイバーセキュリティや生命科学、化学、モデル蒸留などの高リスク領域に関する要求を安全分類システムが監視している。分類システムが反応した場合は、別モデルである「Claude Opus 4.8」に処理を引き継ぐ仕組みだ。
一方、Mythos 5はこうした分類システムを外した構成で、重要インフラやサイバーセキュリティ分野の審査済みパートナー向けプログラム「Project Glasswing」を通じて限定提供されていた。
Anthropicによれば、この分類システムが介入するのは全セッションのごく一部にすぎないとされる。しかし米国政府は、両モデルの違いが安全分類システムだけで十分に管理できるのかという点に疑問を抱いている可能性がある。
こうした見方を補強する材料として、2026年6月2日に公表された米大統領令がある。
同大統領令は、NSAや財務省、米国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)などに対し、高度なAIモデルを評価する基準の策定を求めるとともに、AI開発企業が新モデルを外部パートナーへ提供する前に、政府機関が事前に評価できる枠組みの構築を促している。
Anthropicは大統領令公表から約1週間後にFable 5を公開したが、記事によれば、政府への事前説明は実施されなかったとされる。
このため一部では、2026年6月12日に発動された輸出管理措置の狙いは、脱獄問題への対処だけでなく、政府主導の事前評価プロセスへの参加を促すことにあったのではないかとの見方も出ている。
デイヴィッド・サックス米大統領AI顧問は2026年6月13日に「ボールはAnthropic側にある」と述べ、問題は容易に解決できるとの認識を示した。しかし記事は、最先端AIモデルへの事前アクセス権を巡る交渉だとすれば、単純な技術修正だけでは解決できない可能性があると指摘している。
輸出管理措置は2018年輸出管理改革法に基づくもので、米国内にいる外国籍者への技術提供も輸出と見なす「deemed export」の考え方が適用された。
対象範囲は米国外の利用者だけでなく、米国内の外国籍者やAnthropicの外国籍従業員にも及ぶ。利用者の国籍を即座に識別できない状況では、AnthropicはFable 5を全世界で停止せざるを得なかったとみられている。
同社は2026年7月8日に本人確認制度を導入する予定だ。利用者は政府発行の身分証明書や顔写真などを用いて認証を受ける。認証処理は第三者ベンダーのPersonaが担当し、Anthropicは認証データをモデル学習には利用しないとしている。
記事は、本人確認によって米国籍利用者の判別が可能になれば、輸出管理措置が完全に解除されなくても、一部利用者から段階的にFable 5を再開できる可能性があるとみている。
現時点でFable 5は全世界で停止されたままであり、輸出管理措置も解除されていない。アプリ内で見られた変化が本格的な復旧の前触れなのか、それとも政府との交渉過程で生じた一時的な動きなのかは、なお不透明な状況が続いている。
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