Claude Code開発責任者のボリス・チャーニー氏が、自身のチームで働く人は「5つの型」に分けられると指摘した。AIで職種の垣根が崩れ始めた今、肩書きではなく働き方で人を捉える新時代の発想を、初心者にも分かるように読み解く。
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AIコーディングツール「Claude Code」の開発を率いるボリス・チャーニー(Boris Cherny)氏が、Xに投稿した内容が興味深かったので紹介したい。同氏は、自分のチーム(Claude Code)で働く人たちを観察すると、その働き方が5つの型(アーキタイプ)に分けられることに気付いた、という。これがAI時代の開発現場の「役割」そのものを問い直す内容で、多くの人が自分に重ねる部分があったのか、特に英語圏のXで議論を呼んでいた。
チャーニー氏の出発点はこうだ。これまで別々だった「ソフトウェアエンジニア(以下、エンジニア)」「PM(プロダクトマネージャ)」「デザイナー」「データサイエンティスト」といった職種の境界線が、AIの普及によってあいまいになってきている。誰もが職種の枠を越えて働くようになり、「肩書き(職種)」で人を分けることの意味が薄れつつある、という。では、職種に代わって何が人の違いを表すのか。チャーニー氏がそこで持ち出したのが、「どんな働き方をするか」という型の考え方だ。
チャーニー氏が挙げた型は、プロトタイパー(Prototyper)、ビルダー(Builder)、スイーパー(Sweeper)、グロワー(Grower)、メンテナー(Maintainer)の5つである。それぞれの中身は後半で詳しく見ていくが、ざっくり言えば「アイデアを生む人」「製品に仕上げる人」「整理する人」「育てる人」「守る人」だ。
最大のポイントは、これらが職種とは対応しないことである。チャーニー氏によれば、同じデザイナーでもプロトタイパー型の人もいればスイーパー型の人もいる。エンジニアもPMもデータサイエンティストも同様だという。実際、Anthropicは研究・開発の技術系スタッフに「Member of Technical Staff(技術スタッフのメンバー)」という共通の肩書きを広く用いており、職種を細かく区別しないフラットな体制を取っている。また、1人が2つ、時に3つの型をまたぐことも多いとしている。
ただし、チャーニー氏はこの5つの型を、かっちりした理論として主張しているわけではない。「今の自分のチームを見ると、こう見える」という個人的な気付きのレベルで示している。投稿に寄せられた反応に対しても、「型は、プロジェクトや時間の経過とともに変わっていく」と補足している。つまり、まだ固まり切っていない、これからも変わり得る見方であることに留意してほしい。
――では、私たちの働き方も、この「5つの型」に近づいていくのだろうか。ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、筆者なりの見解を述べてみたい。その後で、5つの型の中身と、投稿をめぐって交わされた論点を整理していく。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
基本的な知識さえあれば、AIを使ってさまざまなことができる時代になりました。職種の垣根も崩れてきて、開発者がデザインをこなしたり、データサイエンティストがプログラムを書いたり、ということが普通になりつつあります。ただ、それを実際にやるかどうかは、本人の気質によるところが大きいと思います。チャーニー氏の「型」という考え方は、まさにこの個人の傾向を軸にしたものなので、私にはとてもしっくりきました。
ただ、この「何が得意か、何が好きか」という型だけで、成功が決まるわけではないとも感じています。私が見てきた範囲では、AIをレバレッジ(てこ:小さな力で大きな成果を生むこと)にして飛び抜けた生産性を発揮している人は、やはりソフトウェアエンジニアに多いように思います。その背景には、アプリケーションを作ることがそもそも好きだったり、長く保守を続けても苦にならなかったり、といった個人の好みや思考のクセ、そして何より、これまで積み重ねてきた経験があるのだと思います。
この点は、チャーニー氏の投稿の後に続いた議論の中でも語られていました。ある人はそれを経験の非対称性と呼んでいました。結局のところ、「以前、自分の手でその作業をやった経験」があるからこそ、AIコーディングによるレバレッジを生かせるのだと、私も考えています。
こうした思考のクセや好き嫌い、経験といったものは、ふだんは言語化しづらく、他人からも見えにくいものです。だからこそ、チャーニー氏がそれを職種ではなく「型」という軸で言葉にして示したことには、大きな価値があると私は感じています。
とはいえ、この軸だけで全てが語れるわけでもありません。これはまだスタート地点で、AIでできることが広がるにつれて、別の軸も見えてくるはずです。実際、Xでも「5つの型には抜けているものがある」という指摘が出ていました。例えば、レビュー(成果物の点検)や意思決定を担う人の型です。5つの型は「生む・仕上げる・整理する・育てる・守る」という、手を動かす側の役割で構成されています。ですが、出来上がったものを見て「タスクは片付いたが、製品としてはむしろ悪くなっていないか」を見極める役割は、5つの中に明確には見当たりません。
もっとも、チャーニー氏自身も、この5つで全てを語れるわけではないという立場のようです。それでも、肩書きよりも「働き方」で人を捉えるという核は、細かい型が変わっても残る視点だと思います。まずは自分がどの型に近いか、チームにどの型が足りないかを考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです。
それでは、5つの型の中身と、投稿をめぐる論点を整理してみよう。
チャーニー氏は、型はプロジェクトや時間の経過とともに変わると述べている。これを踏まえ、プロダクト(製品)の成長段階ごとに必要な型の組み合わせは、議論の中で次のように整理されている。
この投稿には多くの反応が寄せられ、鋭い指摘も出た。中でも本質的だと思われるものを取り上げる。
これらの論点が示すのは、この5つの型が「万能の正解」ではなく、あくまで一つの見方だということだ。チャーニー氏自身、「将来の役割は、今の職種別の分け方よりも、こうした型に近づくのかもしれない」と、あくまで問いかけの形で提示している。
それでも、肩書きにとらわれず「今このプロダクトの段階には、どの働き方の人が必要か」と問い直す視点は、職種の垣根があいまいになっていく時代のチーム作りに役立つ。自分のチームに今どの型が足りないかが見えれば、人の配置や役割分担、時には採用の判断まで見直せるからだ。まずは自分自身の型を見つけ、チームに足りない型を考えることから始めてみてはどうだろうか。
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