AIセキュリティに関する総務省のガイドラインを理解していても、十分に生かせていない――。背景には何があるのか。ChillStackの調査からは、企業がAIに関するセキュリティ対策を進める上での課題が浮かび上がった。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
AIのセキュリティ対策を支援するChillStackは2026年7月6日、AIを組み込んだ製品/サービスのセキュリティ対策を調べた「AIセキュリティ対策に関する実態調査」の結果を発表した。対策を自社で実施している企業を「内部実施層」、外部に委託している企業を「外部委託層」と定義し、対策を担う体制による違いを比較した。
総務省は2026年3月27日、「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」を公表した。AIに不正な出力をさせたり、AIを搭載するシステムを停止させたりするといった脅威に対して、AIのセキュリティを確保するための技術的対策をまとめたものだ。
調査では、このガイドラインについて「よく理解している」または「なんとなく理解している」と回答した人は合わせて83.0%だった。その回答者に自社のセキュリティ対策への反映状況を尋ねると、「対策を見直しているが、まだ途中である」が56.4%、「対策を見直すつもりだが、未着手」が12.8%だった。合わせて69.2%が、対策にガイドラインの内容を反映し切れていないと回答した形だ。
ガイドラインを知っている企業の間でさえ、具体策への反映は十分に進んでいない。その背景には何があるのか。実は、AIに関するセキュリティ対策そのものにも課題があることが、ChillStackの調査から見えてきた。
ChillStackは今回の調査で、AIを組み込んだ製品/サービスのリリース前とリリース後のセキュリティ対策の現状と課題を調べた。
まずリリース前のセキュリティ対策を十分に実施できているかどうかを尋ねたところ、「十分に実施できている」と回答したのは20.2%だった(図1)。一方で「おおむね実施できているが、十分とは言えない」(50.5%)と「実施はしているが、不十分だと感じている」(20.7%)、「ほとんど実施できていない」(8.5%)を合わせると、何らかの不十分さを感じているとの回答は79.7%に上った。特に外部委託層では、対策が不十分だとの回答が内部実装層よりも多くの割合を占めた。
十分にセキュリティ対策ができていない理由を尋ねると、内部実施層、外部委託層共に「コスト・リソースが不足している」が最多だった(図2)。内部実施層では、「社内にセキュリティ知見を持つ人材がいない」が41.8%、「対策すべき項目が多く、優先順位が付けられない」が35.2%と続いた。外部委託層では、「対策すべき項目が多く、優先順位が付けられない」が33.9%、「何をもって十分だとするかの基準が分からない」が32.2%だった。
リリース後のセキュリティ対策に目を向けると、定期的なセキュリティモニタリングやリスク評価を「定期的に実施している」と回答した割合は、内部実施層では59.2%だったのに対して、外部委託層では19.1%にとどまった。定期モニタリングを実施していない理由として、外部委託層からは「運用に落とし込むための効率的な体制や業務フローが構築できていない」「社内規定がない」「コスト負担と、社内の人員・リソース不足がネックになっている」などが挙がった。
外部委託層に、ベンダーが実施したセキュリティ対策の内容を把握しているかどうかを尋ねたところ「あまり把握できていない」が26.5%、「ほとんど把握できていない」が5.9%と、合わせて32.4%がベンダーの対策内容を把握できていなかった。把握できていない理由では、「確認する時間・リソースがない」が31.8%で最多だった。「社内に内容を判断できる人材がいない」「ベンダーからの報告・説明の機会が少ない」がそれぞれ27.3%で続いた。
ChillStackの代表取締役CEO、伊東道明氏は「AIへの脅威は日々変化しており、リリース時点でのセキュリティ対策が短期間で陳腐化しやすい」と指摘。セキュリティ対策を外部に委ねる場合でも、ベンダーが実施している対策の内容を定期的に把握し、必要に応じて検証することが重要だと説明する。
AIに関して今後強化したいセキュリティ対策を聞くと、内部実施層では「定期的なセキュリティ診断・モニタリングの仕組み作り」が55.0%で最多となり、「担当者のセキュリティ対策への理解促進」が47.5%で続いた(図3)。外部委託層では「社内にセキュリティの知見を持つ人材の育成・確保」が45.6%で最も多く、次いで「担当者のセキュリティ対策への理解促進」が32.4%となった。
AIを組み込んだ自社製品/サービスを展開する企業で、セキュリティの検討や対策に関わる決裁権および選定権を持つ人188人を対象に、2026年5月25日〜6月3日にWebアンケートで調査を実施した。内部実施層は120人、外部委託層は68人だった。
「セキュリティ人材って結局、何ができる人?」に結論か NCOが定義した“13個の役割”
「止めたはずのDB」実はネットにダダ漏れ? ASM診断で分かった“見えないIT資産”の実態
生成AIでセキュリティ業務はどこまで楽になる? “それでも人に残る仕事”とはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.