AIの急速な普及に伴い、企業のAPI利用が拡大する一方、新たなサイバー攻撃の標的としてのリスクが高まっている。AIエージェントがAPIを介してさまざまなサービスにアクセスするようになり、企業のアタックサーフェスはさらに複雑化している。セキュリティリーダーには、APIを可視化してリスクを見極め、継続的にライフサイクル全体を保護する取り組みが求められている。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
APIは、企業IT環境において最も急速に拡大するアタックサーフェス(攻撃対象領域)の一つとして静かに浮上している。Webとモバイルの両チャネルにわたって現代的なユーザー体験を支えるとともに、企業の統合および自動化戦略の基盤をなしていることが背景にある。
AIの急速な利用拡大に伴い、APIの重要性は格段に高まっている。AIを支える大規模言語モデル(LLM)はAPIを介してアクセスされ、LLMと他のシステムのやりとりも、MCP(Model Context Protocol)などのフレームワーク経由でAPIを介して行われる。
こうしたAPI依存の高まりを受けて、APIの利用は爆発的に増加している。AIユースケースがAPIのトラフィック急増と急拡散に拍車を掛けており、多くの企業が、自動化によってAPIの数が大幅に増えたと報告している。だが、APIがアーキテクチャアプローチの主流になるにつれて、悪意ある攻撃者の注目も集めるようになった。
AIプラットフォームのAPI認証情報(AnthropicやOpenAIのAPIキーのような)が盗まれると、コスト面で重大な影響が生じ得る。API攻撃が1回成功するだけで、数十万件のファイルやユーザーアカウントが流出する恐れがあることを示すインシデントが発生している。このことは、これらのインタフェースが適切に保護されない場合のリスクの大きさを浮き彫りにしている。
現在、AIエージェントがそのリスクに拍車を掛けている。APIはもともと、公開するのは容易だが、防御するのは難しい。AIによってこの不均衡がさらに顕著になっている。
コーディングエージェントや類似のツールは、APIの作成を大規模に自動化している。その一方で、MCPのようなフレームワークにより、エージェントはAPI経由で各種サービスに動的にアクセスできるようになっている。そのため、セキュリティ上の考慮事項が増えている。
同時に、正規のAPIも攻撃者によってデータのスクレイピングなどに悪用される可能性があり、挙動監視の必要性が高まっている。これらの動向により、アタックサーフェスが急速に拡大し、その管理はますます困難になっている。
AIの普及に伴ってAPIエコシステムが急速に成長する中、セキュリティリーダーは断片的な対策から脱却し、APIのライフサイクル全体で可視性や優先順位付け、保護を改善する協調的なアプローチへと移行する必要がある。
企業はまず、自社が所有するAPIとサードパーティーへの依存関係の両方を含む、APIの環境全体を完全に可視化する必要がある。そのためには、トラフィックのパターンを分析し、コードリポジトリをスキャンして、開発中または実行中のAPIを特定する自動化ツールの使用が必要になる。
APIを特定したら、それらを分類する必要がある。セキュリティの取り組みを最も重要な領域に集中させるためだ。各APIについて、ビジネス上の重要度、取得されるデータの機密性、外部への露出度、AIエージェントからのアクセスの有無を判断し、その結果に基づいて優先度の高いAPIを特定する。こうした分類により、企業は全てのAPIに一律の対策を適用するのではなく、実際のリスクに見合った保護戦略を策定できる。
セキュリティリーダーは、構造化された脅威モデリングを適用し「APIがどのような攻撃を受ける可能性があるか」「どのような対策が必要か」を把握する必要がある。具体的には、APIの利用パターンを評価し、潜在的な攻撃ベクトルを特定し、組織的な要因(業種、規制上の義務、地域固有の要件など)に対策を合わせる。脅威モデルでは「AIエージェントがAPIとどのようにやりとりするか」も明示的に考慮しなければならない。
企業は、設定ミスや保護の不備を継続的に特定し、セキュリティチェックを開発パイプラインに組み込み、修復ワークフローを自動化する必要がある。このアプローチにより、APIが進化する中で脆弱(ぜいじゃく)性への迅速な対応が確保される。
APIを保護するには、さまざまな種類の攻撃に対処する多層的な防御が必要になる。セキュリティリーダーは、DDoS(分散サービス妨害)対策、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、bot対策、API脅威保護などの対策を導入し、一般的なAPI攻撃を検知、緩和しなければならない。
APIの不正利用を防ぐには、強力なアクセス制御メカニズムが不可欠だ。企業はOAuthを使用することで、アクセス違反を軽減できる。OAuthは、認可を制御するAPIゲートウェイに支えられ、挙動分析や不正検知も可能な仕組みだ。また、IAM(アイデンティティーおよびアクセス管理)のポリシーもAIエージェントのエコシステムまで拡張することが重要だ。
セキュリティリーダーはこれらの施策を組み合わせることで、AIの普及に伴うAPIエコシステムの成長の規模、速度、複雑さに対応できる、レジリエントな(回復力の高い)APIセキュリティ態勢を構築できる。
出典:The Expanding API Attack Surface in the Age of AI(Gartner)
※この記事は、2026年6月に執筆されたものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.