OktaはAIエージェントとID管理に関する調査レポートを公開した。エージェントの所在や接続先、実行できる操作を把握できているCISOは半数に満たないことが明らかになった。
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Oktaは2026年7月29日(米国時間)、AIエージェントとID管理に関する調査レポート「Global CISO Insights 2026」を公開した。同レポートは、組織の情報セキュリティ方針の策定か、インシデント対応の監督とサイバーセキュリティリスクの管理のいずれかを担うCISO(最高情報セキュリティ責任者)やサイバーセキュリティ部門の責任者ら306人を対象に実施した調査に基づいている。
回答者の内訳は英国が33%、日本が24.8%、米国が14.1%、フランスが11.1%、カナダが8.5%、ドイツが8.5%。データは2026年6月に、調査会社Apprize360 Intelligenceと共同で実施した。
「AIエージェントが企業セキュリティの中心にガバナンスの危機をもたらしており、ID基盤が問題であると同時に解決策でもある」と、Oktaは指摘している。
調査ではCISOに対し、「自社のエージェントがどこにあるか」「何に接続できるか」「何をできるか」を把握しているかの3点を、「強く同意する」から「強く反対する」までの段階で評価を求めた。
「自社環境の全てのエージェントを特定できる」と考えているCISOは47%、「エージェントが何にアクセスできるかを一元管理できる」としたのは46%、「個々のエージェントによるツール呼び出しを認可できる」としたのは45%となった。「強く同意する」と答えた回答者だけに絞ると、いずれも30%を下回る。
「可視性だけでは安心につながらない」という結果も出ている。自社のAIエージェントの所在を完全に把握できていると答えたCISOでも、約80%が「過剰なアクセス権限」に強い懸念を抱いていた。
AIエージェントのアクセス権が過剰なまま見直されていないことへの懸念は、グローバル全体で81%の回答者が挙げている。
調査では、AIエージェントのID/アクセスガバナンスの成熟度を以下の4段階で尋ねている。
その結果、回答分布は高度が26%、定義済みが34%、発展途上が31%、受動的が9%で、発展途上以下が全体の40%を占めた。
国別では英国が最も進んでおり、36%の組織が「完全に自動化された高度なガバナンスを実現している」と回答した。調査対象国で最大の割合だが、英国のセキュリティ責任者はリスクへの警戒も緩めておらず、46%が過剰なAIアクセスが見直されないことに「非常に懸念している」と答えている。この割合は米国に次いで2番目に高かった。
成熟度が高い組織ほど、AIを悪用したセキュリティ侵害への懸念は小さい。受動的な組織は「極めて懸念している」と答えた割合が32%と最も高いが、こうした組織の多くは速度を優先してリスクを取っている。受動的な組織の61%がセキュリティよりイノベーションを優先しており、全成熟度の平均48%を13ポイント上回った。
受動的な組織は、シャドーAIが広範に存在すると答えた割合も25%と、全体平均の13%を上回る。18%は「不正なAIをまったく特定も停止もできない」と回答した(全体平均は5%)。高度な組織は50%が数分以内に不正エージェントのアクセスを取り消しており、全体平均の26%を大きく上回る。高度な段階の企業で、不正エージェントの特定と停止に苦戦している組織は1社もなかった。
全体では55%の企業が、「侵害発生時に数時間以内でAIエージェントのアクセスを取り消せる」と答えた。だが、AIシステムは有害な操作を瞬時に実行できるため、「数時間での対応でも遅すぎる」と、Oktaは指摘している。
AIエージェントへのアクセス制御をどう管理しているかを尋ねたところ、4分の1のCISOが「エージェントを人間のIDと同じように扱っている」と答えた。
従来のセキュリティ基盤は、アクセス経路や権限の変動が予測できるライフサイクルの枠組みで設計されたものであり、「AIエージェントの非決定的な性質が生むギャップを、既存のツールでは埋められない」と、Oktaは指摘する。
21%の組織は広範な権限を持つ共有の認証情報やサービスアカウントでAIのアクセスを管理し、ほぼ同数の20%はエージェントを展開したチームがその場限りで管理する形を取っている。AIエージェントを運用する組織において最も重要なAIセキュリティ機能としては、「どの時点で誰がエージェントにアクセスできるかを完全に制御し続けること」が29%で最多となり、「エージェントの検出と認証情報の管理」がそれぞれ20%で続いた。
Oktaのマット・イムラー氏(リージョナルCSO〈最高セキュリティ責任者〉)はガバナンスの意味について「AIのIDを『独立した主要なID』として扱うことだ。ディレクトリに登録し、どのデータにアクセスできるか、どのようなスコープで動作できるか、どの判断を下せるかに責任を持つ人間の管理者を置いた上で、ガバナンスのプロセスを適用する」と述べている。
AI起因の侵害への恐れは米国のCISOで特に強く、84%が「極めて」または「非常に」懸念していると答えた(世界全体では57%)。日本はAI起因の侵害を「極めて懸念している」と答えたCISOの割合が29%と、調査対象市場の中で最も高かった。「エージェントのID管理に一貫した手法がない」と答えた割合も12%で、世界平均の6%の2倍に当たる。
脅威の種類別では、「AIを使ったフィッシングの試み」が61%で最も懸念され、「悪意あるAIエージェント」が49%、「ディープフェイクによる認証回避」が45%で続いた。ドイツはエージェントの監視に対する自信が最も高い半面、ガバナンス成熟度は低く、58%が発展途上か受動的の段階にある。ドイツのAIフィッシングへの懸念は約81%で、調査全体で単一の脅威としては最も高い数値だった。
ITコンサルティング企業ThoughtworksのCISO、ニティン・ライナ氏は「ディープフェイクやフィッシングといったAI駆動のサイバー攻撃は高度化を続け、検知を逃れてエンドユーザーをだます精度が上がってきた。特に懸念されるのがディープフェイクだ。もはや偽の動画にとどまらず、リアルタイムに応答する完全なシミュレーションが登場しており、極めて説得力がある」と述べている。
セキュリティ確保の最大の障壁として最も多く挙がったのは、「AIのIDに対する可視性の欠如」(48%)だ。「予算と人員の不足」(39%)、「AIチームとセキュリティチームの間の分断」(33%)と続いた。
国別に最大の障壁を見ると、米国は「可視性の欠如」が74%で最も多かった。日本は「予算と人員の不足」が47%で最も多く、他の5市場と傾向が異なった。英国は「可視性の欠如」(50%)、ドイツは「組織のサイロ化」(50%)、フランスは「可視性の欠如」(59%)、カナダは「業界標準の欠如」(65%)だった。
シャドーAIについては、68%のCISOが「許可されていないAIやエージェント型AIの利用が少なからずある」と認識している。検出時の対応で最も多いのは「アクセスの遮断」で35%、「利用可能な手段でツールをガバナンス下に置いてアクセス制御を適用する」が29%だった。フランスは、88%が「シャドーAIの利用がある」と答えている一方で、検出時にユーザーへ通知して方針の順守に委ねるだけの組織が約24%を占め、監視に対する自信は調査対象国で最下位となった。
許容できるAI関連リスクの水準について、経営層や取締役会と「認識が完全に一致している」と感じているCISOは、世界全体で31%にとどまる。経営陣のAIセキュリティに対する理解度は国によって大きく二極化している。
全体で見れば、AIセキュリティを「事業の推進力」と取締役会が見なしていると答えたCISOは46%と半数に満たない。しかし、米国やフランスの経営層は事業の推進力と捉える傾向が最も強い。
米国の場合、AI起因の侵害への懸念が突出していることから、経営層とのリスク許容度の一致度は12%と最も低い。その一方で、取締役会の過半数(54%)がAIセキュリティを「事業の推進力」と前向きに捉えているため、投資理解を得やすい環境となっている。
対照的なのが日本とドイツだという。
Oktaは「両国の組織は、AIセキュリティを単なるコンプライアンス(法令順守)や規制対応の手続きと見なす傾向が最も強い。経営層の理解不足が、AIのIDセキュリティに対する投資不足を招いている」と指摘している。
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