生成AIの急速な普及によって、存在感を高めている「GPU」。ではAI時代には、「CPU」の重要性は低下していくのだろうか。そうではないとArmは指摘する。
生成AIを動かすプロセッサと言えば、今や多くの人の頭には「GPU」(Graphics Processing Unit)が思い浮かぶのではないだろうか。大量の演算を並列に実行できるGPUは、大規模言語モデル(LLM)の学習や推論を高速化する上で重要な役割を担っている。
その一方で、「CPU」(Central Processing Unit)はどうだろうか。「AI処理の中心がGPUになるなら、CPUの重要性は相対的に低下する」と考えることもできそうだが、CPUアーキテクチャを手掛けるArmは、むしろ逆の変化が起きるとみる。
Armは2026年9月2日(現地時間)、半導体技術の国際会議「Hot Chips 2026」を振り返る公式ブログを公開し、AIエージェントの普及によって「CPUの新たな時代」が生まれつつあるとの見方を示した。
なぜAIが高度になるほどCPUの仕事が増えるのか。
ポイントになるのが、AIエージェントの利用拡大だ。AIエージェントは、生成AIのように単に質問への回答を生成するだけではない。目的を達成するために自らの判断で必要な情報を取得したり、外部のツールを利用したりしながら、処理を進める。
Armによると、こうしてAIが「質問に答える」段階から、計画や情報取得、ツール利用、処理の実行までを担うようになることで、AIモデルの周辺でCPUが処理する仕事量も増える。具体的には、コードの実行、複数サービスの連携、データの移動、メモリやストレージの管理などがある。AI処理を担うGPUなどのアクセラレーターに、次に処理すべき仕事を供給し続ける役割もある。
AIエージェントが普及すればこうした処理が増え、CPUがAIシステム全体の性能を左右する重要な役割を担うようになる。Armはそう説明している。
「AIエージェント時代にはCPUが重要になる」とした主張は、Armだけが唱えているわけではない。GPUベンダーのNVIDIAも、AIエージェントを念頭に置いたCPU「NVIDIA Vera」(以下、Vera)を開発している。
NVIDIAは2026年3月、Veraを「AIエージェントのために構築した初のCPU」として発表した。88個の独自CPUコア「Olympus」を搭載し、最大1.2T(テラ)B毎秒のメモリ帯域幅を備える。
Veraの用途としてNVIDIAが挙げているのは、GPUに次の処理を渡すことだけではない。プログラミング言語「Python」の実行環境や隔離された環境でのコード実行、複数の処理を連携させるオーケストレーション、データ分析といった処理を挙げている。
同社がVeraで狙うのは、CPU側の処理を高速化することだ。AIエージェントの応答を高速化するとともに、GPUの待ち時間を減らし、高価なGPUを効率よく稼働させることにつながる。
Veraは単体のCPUとして利用するだけでなく、GPUと組み合わせて利用することも想定されている。その構成例の一つが、Veraと次世代GPU「Rubin」を組み合わせたコンピューティングプラットフォーム「NVIDIA Vera Rubin」だ。
「AI時代にはGPUよりCPUが重要になる」という話ではない。
LLMの学習をはじめ、大量の演算を並列に処理する用途では引き続きGPUが重要になる。一方でAIエージェントが普及すれば、そのAIモデルを動かすだけではなく、AIが外部のシステムやデータを使って実際に仕事を進めるための処理も増える。
重要になるのが、CPUとGPUの役割分担だ。生成AIの普及によってGPUばかりに目が向きがちだが、AIが「回答するもの」から「仕事を実行するもの」へ変わることで、CPUの重要性が低下するどころか、その役割はむしろ広がっていく可能性がある。
AI時代のプロセッサを見る上では、「GPUがどれだけ高速なのか」だけではなく、その周辺で発生する処理をCPUがどれだけ効率よくさばけるのかも重要になりそうだ。
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