従来の「AI−Readyデータ」だけでなく新たなアプローチを理解せよGartner Insights Pickup(463)

「AI-Readyデータ」は、これまで特定のAIユースケースに適したデータ整備のことを指していた。だが、ツールやワークフローにAIが直接組み込まれるケースも増えてきた。後者は曖昧な要件にも対応できるアプローチだ。双方の違いについての理解がデータ担当部署には不可欠だ。

» 2026年09月11日 05時00分 公開
[Lydia Ferguson, Gartner]

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 「AI-Readyデータ」(AIモデルに適した整合性、適格性、ガバナンスを備えたデータ)は、「明確に定義されたコンテキストにおいて、特定のAIユースケースに適する」と証明できるデータとして説明されることが多い。

 この見解は「組織がまず明確な目標を設定し、それに応じてデータを準備し、AIを展開する前に準備状況を評価する」という構造化されたAI導入アプローチを前提としている。これは、AIシステムのニーズを満たすためにデータを事前に整備する、計画的なプロジェクト主導型のAI導入モデルを反映している。

 だが、データチームを取り巻く現実はより複雑だ。データアーキテクトやエンジニアはツールやプラットフォーム、ワークフローに直接組み込まれた機能としてのAIと出会うことが増えている。多くの場合、こうしたAIは正式なAIユースケースが存在する前から、データ管理タスクを実行するために直接使用されている。

データチームが知るべき2つのAI導入パターン

 組織内におけるAIの導入アプローチは、出現形態や運用形態が変化している。現在、AIは2つの異なるアプローチで導入されている。定義されたユースケース主導の取り組みを通じて導入が進められている一方で、データチームが使用するツールやワークフローにAIが直接組み込まれるケースも増えている。

 この2つの導入パターンは、連続したものではない。AIの利用意図の違いを反映している。特に、データ管理ワークフローに組み込まれたAIは、必ずしも下流のAIユースケースの定義と、それに沿ったデータ準備に使われるわけではない。

 「データのためのAI導入」と「データ準備を伴うプロジェクト主導型のAI導入」という2つの導入パターンは、データに対する異なる期待を生み出す。

 「データのためのAI導入」は、AI対応のツールや機能によってデータ管理を強化することに焦点を当てている。これに対し「データ準備を伴うプロジェクト主導型のAI導入」は、AIユースケースを定義し、AIモデルの展開を可能にするためのデータを準備することから始め、データをAIアプリケーションのニーズと整合させる必要がある。それぞれの導入パターンによって、データを処理、評価、利用する方法が左右される。

 通常、AI-ReadyデータはAIを一つの取り組みとして取り入れる特定の導入パターンに関連付けられる。この導入パターンでは、AIは明確なオーナー(責任者)、予算、範囲が定められたプロジェクトを通じて導入される。データは事前に準備され、意図されたAIユースケースの要件に対する適合性が評価、検証される。

 だが、今日では、AIはプロジェクトとしてよりも、機能として導入されることの方が多い。AIはプラットフォームやツールに組み込まれ、ベンダーの機能によって実現され、AIエージェントやアシスタントを通じて提供され、技術ユーザーとビジネスユーザーの両方によって機会に応じて利用されている。

 この導入アプローチは、正式な準備段階を待つことはない。代わりに、AIは既存のデータ環境下で動作するように設計されたツールやワークフローを通じて導入され、ガバナンスやオーナーシップ、リスクに関する問題は通常、後から浮上してくる。

 この違いは、AI-Readyデータの、より早い段階を表すものではない。むしろ、AIの異なる利用形態を反映している。この形態では、AIはデータ管理作業そのものを支援するために適用され、下流のAIユースケース向けのデータ準備はなされない。多くの場合、このアプローチはAIの取り組みで使用するためにデータが正式に準備、検証されていなくても価値をもたらす。

状況が曖昧で流動的でも、AIによって前進が可能に

 AIの進歩により、一般的な技術知識やドメイン知識へのアクセスがより容易になり、実務者はより早い段階からプロセスに関与できるようになっている。データエンジニアは、要件がまだ進化している場合や明確に指定されていない場合でも、AIを使用して説明を生成したり、パターンを提案したり、データを探索したりすることができる。この変化により、全てが完全に明確になるのを待たずに、作業を始められるようになった。

 実務者は、事前に定義された構造や完全に文書化された要件のみに依存するのではなく、AIの支援と組織に関する自らの知識を組み合わせることが増えている。これにより、曖昧な状況でも、より効果的に作業を進められる。

 このアプローチは、要件が進化していたり、文書化が不完全だったり、データ環境が十分に分からなかったりする状況で、特に価値がある。こうしたシナリオでは、データチームはAIにより、全ての不確実性を事前に解決しなくても前進できる。

データチームに必要なリセット

 AI-Readyデータは、依然として定義されたAIの取り組みに欠かせない。だが、今日のデータ管理業務におけるAIの利用状況にはぴったり当てはまらなくなっている。引き続き、AI-Readyデータをもたらす構造化されたデータ準備アプローチは重要だが、データ環境全体におけるAIとデータの関係の一部を示しているに過ぎない。

 データアーキテクトとエンジニアは、既に日々の実務の中でこの変化を目の当たりにしている。AIは日常のワークフローに組み込まれており、その導入はしばしば、正式なガバナンス整備や専用の資金確保に先立って行われる。同時に、作業において、理想的なデータ品質、明確さ、完全性が確保された上で行動を起こすのではなく、不完全な条件下でAIを使用することが増えている。

 データの大規模化、多様化、変化の加速を背景に、データチームがAI-Readyデータに必要な理解レベルを手動で調整、管理、維持することはますます困難になっている。その結果、チームがこうした要求に対応していけるように、AIがより活発に使用されるようになっている。

 これは、より広範な変化を反映している。データチームはAIユースケースを実現しているだけでなく、要件が進化し続け、データが十分に理解されていない環境において、自らの業務にAIを役立てている。

 その結果、データチームは2つの異なるコンテキストで業務をしなければならない。

 1つのコンテキストでは、特定のAIユースケースに合わせてデータが準備、検証される。もう1つのコンテキストでは、多くの場合、データが完全に定義または管理される前に、データ業務そのものを支援するためにAIが使用される。

 この違いを理解することは、それぞれのコンテキストで期待を適切に管理し、適切なアプローチを適用するために不可欠だ。

出典:AI Adoption Reality: Data for AI Isn’t the Same as AI for Data(Gartner)

※この記事は、2026年6月に執筆されたものです。

筆者 Lydia Ferguson

Sr Director Analyst


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