AIインフラ関連の需要を背景にSSDやメモリの価格上昇が続いているが、「企業のIT部門には関係ない話だ」と考えるのは早計だ。それはなぜなのか。SSDやメモリ価格上昇の影響はどう出てくるのか。
AIインフラへの投資拡大を背景に、SSDやDRAM(メインメモリ)の価格上昇が激しくなっているが、これは従来のPC調達やサーバ調達などを担うIT担当者からしても“対岸の火事”ではない。
SSDベンダーの業績は極めて好調で、調査会社のTrendForceによれば、2026年第2四半期(2026年4〜6月期)における主要SSDベンダー5社の合計売上高は約375億9000万ドルとなった。前四半期比でほぼ倍増している。
こうした動きを「AIサーバや大規模データセンターの世界で起きていること」とだけ捉えるのは早計だ。実は企業のIT購買に大きな影響を与える可能性があるからだ。その兆候が現れている。
SSDやDRAMは、知っての通りAIサーバだけで使われる部品ではない。一般的なサーバはもちろん、従業員が日常的に利用するPCにも搭載されている。AIやデータセンター向けの旺盛な需要の影響は、PCにも及ぶ。
実際、PCメーカーのコストとしてその影響が表れ始めている。TrendForceが2026年9月4日に発表したノートPC市場の調査を見ると、部品価格上昇の大きさが分かる。
同社は、メモリ供給が比較的安定していた2025年第1四半期にメーカー希望小売価格が900ドルだったノートPCを基準に、部品価格上昇による影響を試算した。
2025年第1四半期に、CPU、DRAM、SSDの3部品がBOM(Bill of Materials:部材原価)に占める割合は約45%だった。それが2026年第3四半期には、68%にまで上昇した。わずか1年半で、CPU、メモリ、SSDだけでPCの部材原価の7割近くを占める状態になったことになる。
BOMとは、製品を構成する部品や材料を一覧にした「部品表」のことだ。ここでは、ノートPCを構成する各部品のコストを合計した「BOMコスト」を指す。
背景にあるのは、DRAMとSSDに加え、CPU価格も上昇していることだ。TrendForceは、こうした主要部品の価格上昇がノートPCのコストを押し上げていると説明する。
PCメーカーが部品のコスト増を全て販売価格に転嫁すると仮定すると、影響は大きくなる。
TrendForceは、2026年第3四半期の部品価格を前提に、PCメーカーが2025年第1四半期と同じ粗利益率を維持する場合、同等のノートPCの価格を約80%引き上げる必要があると試算している。
もちろん、これは「PC価格がこれから一律で80%上昇する」という予測ではない。現時点では、PCメーカーが価格の安い時期に調達した部品在庫を持っており、それが現在のCPU、DRAM、SSD価格との間の“緩衝材”になっている。メーカーが利益率を下げることで値上げを抑えることもできる。
問題は、そうした低価格で調達した在庫が減っていくことだ。
TrendForceは、安価な在庫がなくなっていけば、今後投入される製品にはCPUやDRAM、SSDの価格上昇がより強く反映されるとみている。その結果、PCメーカーは「コスト上昇を販売価格に転嫁するのか」「需要を維持するために利益率を犠牲にするのか」という選択を迫られることになる。
つまり、「80%」という数字が将来のPC価格の上昇そのものを示しているわけではないが、その可能性を示す数字とは言える。これまでメーカー側で吸収してきた部品価格の上昇が、今後PC価格に転嫁されやすくなるなれば、価格は大幅に上昇する可能性があるのだ。
そもそもなぜSSDやメモリの価格上昇が続いているのか。
要因の一つが、AIを含むサーバやデータセンター向け需要だ。TrendForceは2026年第3四半期についても、生成AIエージェントサービスの普及、クラウドサービスプロバイダー(CSP)によるデータセンターインフラの増強、NVIDIAのAI向けGPU「Blackwell」世代の製品を搭載したAIサーバラックの大量出荷などを背景に、SSDへの高需要も続くと予測している。
SSDメーカーもこうした需要に対応している。例えばMicron Technologyは、AIインフラの需要増大を受け、生産能力を企業向けSSDやHBM(High Bandwidth Memory:広帯域幅メモリ)により多く振り向けている。
AIインフラへの投資が増えれば、GPUだけではなく、メモリやストレージの需要も増える。それらのメーカーがAIインフラ向けに生産能力を振り向ければ、同じ半導体を必要とする他の製品が影響を受ける。
PCはその一つだ。SSDやDRAMの高騰は、もはやAIデータセンターだけで起きている「対岸の火事」とは言えない。
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