生成AIに仕事を任せるとして、どこまで許せるのか。チェンジホールディングスの調査から、人間がAIに「任せたい業務」の実態が浮かび上がった。世代別では、20代は最終承認までAIに任せたいと考えているという。
生成AIに仕事を任せるとして、どこまで許せるのか。チェンジホールディングスの調査からは、議事録やデータ分析といった作業系業務と、課題整理や意思決定との間に明確な差が浮かんだ。さらに興味深いのが世代差だ。AIへの期待と警戒が交錯する中、「人が担う仕事」と「AIに任せる仕事」の境界線はどこに引かれているのか。
チェンジホールディングスは2026年9月4日、AIと人の役割分担に関する意識調査の結果を発表した。全国の会社員・役員1104人を対象にインターネットで調査し、課題の整理やデータ分析、議事録作成、最終的な意思決定など13業務について、AIと人の役割分担をどうするのが適切だと考えるかを聞いた。
13業務の平均では、「人主導」が61.2%、「AI主体」が38.8%だった。
注意したいのは、これはAIの実際の利用率や自動化率ではないという点だ。調査では「人が主体でAIを使わない」「人が主体でAIを補助的に使う」の回答を「人主導」に分類。一方、「AIが主に実施して人が確認・修正する」「人が最終判断だけを担う」「AIが自律的に実施する」といった回答を「AI主体」に分類している。
つまり「AI主体が38.8%」とは、13業務の約4割が現時点でAIに任されているという意味ではない。あくまで、AIが主に実施する形を適切だと考える回答が平均38.8%だったことを示す。
業務別に見ると、AI主体の回答率が最も高かったのは議事録作成で44.7%。データ分析が44.0%、情報の整理と情報の収集・調査がそれぞれ43.8%で続いた。
資料などの構成設計は41.1%、資料などの最終化は40.8%、複数案の比較検討は40.6%、データのファクトチェックは40.5%だった。企画のアイデア出しは37.9%、社内報告と顧客への提案はそれぞれ35.2%、最終的な意思決定は33.5%となった。
一方、AI主体の回答率が最も低かったのは課題の整理で25.3%だった。
この結果からは、単純な情報処理やアウトプット作成に近い業務ほどAI主体を受け入れやすく、何が問題なのかを整理したり、最終的な判断を下したりする業務では人が担うことを求める傾向が読み取れる。
これはAI活用を考える上でも重要な違いだ。AIに文章をまとめさせたり、データを分析させたりすることと、「そもそも何を解決すべきなのか」「どの選択肢を採用するのか」をAIに決めさせることは同じではない。
自分の仕事がAIに代替されることへの懸念については、「非常に懸念している」が13.0%、「やや懸念している」が30.5%で、合計43.6%だった。「あまり懸念していない」は26.5%、「全く懸念していない」は17.7%で合計44.2%となり、懸念する層としない層はほぼ拮抗(きっこう)した。
AIにどこまで任せるかという意識は、役職によっても異なった。
13業務平均のAI主体回答率は、一般社員が33.2%、主任・リーダーが46.8%、課長が48.8%、部長が55.4%と、部長までは役職が上がるほど高くなった。一方、役員では43.7%に低下し、部長を11.7ポイント下回った。
13業務全てで役員のAI主体回答率は部長を下回っており、差が最も大きかったのは課題の整理だった。部長が47.4%だったのに対し、役員は25.9%で21.5ポイントの差が開いた。
この数字だけから役員がAIに否定的だと断定することはできない。ただ、現場に近い管理職と経営層では、AIに委ねることへの考え方に違いがある可能性はある。
さらに大きな差が出たのが世代別の回答だ。
最終的な意思決定を「AI主体」にしてよいとした割合は、20代が59.1%、30代が36.0%、40代が23.9%、50代が12.1%。年代が上がるほど低下した。
20代では、最終的な意思決定さえAI主体でよいとする回答が過半数に達している。
しかし、AIに仕事を奪われる懸念も20代が最も高かった。「非常に懸念している」「やや懸念している」を合わせると、20代は67.5%。30代は44.9%、40代は35.1%、50代は26.5%だった。
つまり20代では、AIに仕事を任せることへの許容度が高い一方、自分の仕事がAIに代替されることへの懸念も強い。
この2つの数字は一見すると矛盾しているが、AIを使いこなす必要性を強く感じているからこそAIへの権限移譲を受け入れている可能性など、複数の背景が考えられる。
業種による違いも大きい。13業務平均のAI主体回答率は金融が59.4%で最も高く、商社・卸売が52.4%、IT・通信が47.7%、製造が47.4%と続いた。一方、医療・介護は23.4%で最も低く、公共は31.9%だった。
金融は13業務のうち12業務でAI主体回答率が最も高く、医療・介護は13業務中12業務で最も低かった。業務の特性や規制、扱う情報、意思決定に伴う責任など、業種ごとの事情が回答傾向に影響している可能性がある。
勤務形態でも差が見られた。13業務平均のAI主体回答率は、出社中心が33.1%、ハイブリッドが55.8%、フルリモートが56.1%だった。
ただし、勤務形態とAI活用意識の間に因果関係があるとは限らない。職種や企業のIT環境など、別の要因が影響している可能性もあるため、この数字は勤務形態による回答傾向の違いとして捉えるべきだろう。
一方、AIに仕事を奪われる懸念は、出社中心が41.8%、ハイブリッドが57.6%、フルリモートが29.3%。AI主体の容認度と懸念度は同じ動きを示しておらず、AIを受け入れることと、自分の仕事がAIに置き換えられることへの不安は、必ずしも表裏一体ではない。
今回の調査が示しているのは、「AIが人間の仕事をどこまで代替できるか」という単純な話ではない。むしろ、AIに任せやすい仕事と、人間が主導すべき仕事の境界線が意識され始めていることだ。
AIによる開発支援やAIエージェントの活用が広がれば、こうした境界線はさらに重要になる。AIに作業を任せるだけなら、人間は成果物を確認すれば済む。しかし、AIが課題設定や判断、システムの変更まで担うようになれば、人間がどこで介入し、誰が最終的な責任を負うのかという別の問題が生じる。
AI活用を進める企業にとって重要なのは、「AIを使うかどうか」ではなく、どの仕事を、どの権限までAIに任せるのかを決めることだ。
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