AIにコードを書かせ放題で大丈夫? 開発現場に迫る「AIコスト」の見えない問題:Splunkが可視化に本腰(1/2 ページ)

AIにコードを書かせれば、開発は速くなる。では、そのAIはいったいいくら使っているのか。AIエージェントが自律的に処理を重ねるほど、開発者やチーム単位での利用量とコストは見えにくくなる。Splunkの「.conf26」では、AI活用の裏側で膨らみかねない「見えないコスト」を可視化する新たなアプローチが示された。

» 2026年09月25日 08時00分 公開
[田渕聖人,@IT]

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 Cisco Systems(以下、Cisco)傘下のSplunkは、2026年9月14〜17日(現地時間)に開催した年次カンファレンス「.conf26」において、製品基調講演を実施した。

 同講演に登壇したSplunkのSVP兼GM、カマル・ハティ氏は、組織がチャット型AIアシスタントの試用フェーズを終え、チーム全体がAIエージェント群に成果を委任する「AIエージェントの時代」へと本格的に突入したことを提示した。

Splunkのカマル・ハティ氏(SVP兼GM)(出典:筆者撮影)

 しかし、AIエージェントの本番環境への導入には大きな阻害要因がある。ハティ氏は「AIエージェント時代における最大の課題は、AIの機能そのものではなく『信頼』と『コスト』である」と指摘し、企業が今後直面する「コスト」「スキル」「スピード」という3つの制約を提示した。

 これらの制約を解消し、マルチクラウドからオンプレミスまでデータが存在する全ての場所でAIを安全かつ効率的に運用するためのアプローチとして、Splunk製品の再定義と「System of Record for AI(AIのための記録システム)」の構想が発表された。詳細を見ていこう。

AIにコードを書かせる時代、次に問題になるのはコード品質だけではない

 AIエージェントの導入が進む中で企業が直面するのが、非決定論的な挙動によるハルシネーションや不適切なアクション、予期せぬトークン消費によるコストの高騰だ。Splunkはこれに対し、AIのフルスタック可視化と制御を担う機能群を強化した。

subsciprtion

 一般提供が開始された「Splunk Agent Observability」は、アプリケーションからインフラ、モデルやAIエージェント自身の挙動までを横断的に評価・監視するソリューションだ。特筆すべきは、小規模言語モデル(SLM)を活用したリアルタイム・ガードレール機能だ。AIエージェントの推論プロセスやトレース結果から不適切な挙動を検知したとき、SLMを介してミリ秒単位で応答を制御・修正することで、本番環境のエージェントをオフラインにすることなく安全な運用を継続できる。

講演中のデモでは、ECサイトに導入されたAIエージェントが、先月で終了した期限切れの割引プロモーションを誤って顧客に提示してしまったケースを実証した。Splunk Agent Observabilityはこの問題を検知後、迅速にガードレールを適用。正しい割引プロモーションを提示した(出典:Splunk発表資料)

 併せて一般提供が発表された「Tokenomics」機能は、膨らみ続けるAI関連コストの管理に直接的な解を提供する注目の機能だ。チームやユーザー単位でのトークン消費量、コスト、生産性指標をリアルタイムに集計・可視化するのに加えて、請求期間が終了する前に支出傾向を予測。これにより、パフォーマンスとコストのバランスを考慮したモデル選定やワークロードの最適なルーティングが可能となる。

Tokenomics機能が発表された会場では大きな歓声が上がっていた(出典:Splunk発表資料)

 この他、アプリケーションの開発初期から可視性を組み込む「Observability Studio」や、コスト効率に優れた「Observability Logs」を統合した「Essentials」「Premier」の各エディションの展開により、開発・運用チームがAIの健全性を包括的に把握できる環境が整えられた。

Anthropicとの強力な連携:AI SREによるインシデント修復の自動化

 基調講演のハイライトとなったのが、AnthropicでHead of Enterprise Applied AIを務めるジェニー・シャ氏との対談および共同デモのセクションである。ステージに立ったシャ氏は、エンタープライズ領域におけるAIエージェント活用の変化について次のように語った。

Anthropicのジェニー・シャ氏(Head of Enterprise Applied AI)(出典:筆者撮影)

 「作業の単位は大きく変化しました。個人がAIアシスタントに質問して回答を得る世界から、チーム全体がAIエージェント群に成果を委任する世界へと移行しています。ログの確認や根本原因分析といった手間のかかる作業をAIエージェントが引き受けることで、解決までの時間が劇的に短縮されるでしょう」(シャ氏)

 シャ氏は、本番環境で成功するAIエージェント運用の要件として「既存ツール内への組み込み」「厳格なガバナンスと信頼」「人間とAIエージェントの協働」を挙げた。最初から完全な自動化を目指すのではなく、新しくチームに加わったエンジニアと同様に段階的に権限を与え、重要なアクションにおいては「ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間の承認)」を挟むアプローチの重要性を強調した。

 実演されたデモでは、Splunkのオブザーバビリティ機能とAnthropicの「Claude」が密接に連携したAI SREのワークフローが提示された。

 まずObservability Studioがコードベース内の設定不備(テナントIDの欠落)を自動検知し、「Splunk Observability Cloud」の調査用AIエージェントがルール定義なしでアラートをグループ化して根本原因分析を即座に実行する。

 続いてAIエージェントの実行基盤をフルマネージドするサービス「Claude Managed Agents」が起動し、根本原因分析の結果に基づいてコードに対する修正案を作成する。開発者が修正内容を確認して承認すると、コードがマージされインシデントが解決する。さらに、一連の対応履歴やフィードバックは記憶として蓄積され、AIエージェント自身の継続的な学習と自己改善に活用されるという。

Claudeを駆使したSRE(Site Reliability Engineering)を実現することで開発者の負担を軽減する(出典:Splunk発表資料)

 この連携により、テレメトリーデータとコードベースの双方が相関付けられ、障害検知から根本原因分析、コード修正、学習に至る一気通貫のライフサイクルが自動化されることが実証された。

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