RedMonkは、オープンウェイトモデルを地理的要因、ライセンス、能力、リスク、経済モデル、リリースタイミング、サイズ、蒸留という8つの観点から分析したブログ記事を公開した。
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調査会社のRedMonkは2026年9月3日(米国時間)、オープンウエートモデル(モデルの重みパラメーターが公開され、計算資源さえあれば誰でも自前で動かせるAIモデル)を多角的に分析したブログ記事を公開した。地理的要因、ライセンス、能力、リスク、経済モデル、リリースタイミング、サイズ、蒸留という8つの観点から考察を加えている。
中国DeepSeekが2024年12月末にオープンウエートモデル「DeepSeek-R1」を発表して以来、クローズドモデルとオープンウエートモデルの競争が本格化しており、最近では、最新のオープンウエートモデルの能力はクローズドなフロンティア(最先端)モデルに迫りつつある。
2026年時点で最大かつ最高性能のオープンウエートモデルは、ほぼ中国発だと、RedMonkは指摘する。例外は米国Thinking Machinesの「Inkling」や米国NVIDIAの「Nemotron」などごく少数だ。RedMonkが引用するSIAI(Swiss Institute of Artificial Intelligence)の報告によると、OpenRouter(複数のAIモデルへのアクセスやルーティングを提供する)における企業のトークン使用量に占める中国製モデルの割合は、2025年初めの4.5%から、2026年7月第1週には63%まで上昇した。
中国発オープンウエートモデルの台頭は、米政権の警戒を招いている。中国Moonshot AIがクローズドフロンティアモデルとの能力差を大幅に縮めた「Kimi K3」を公開してから1週間足らずの2026年7月下旬、ホワイトハウスは、中国企業による不正なモデル蒸留疑惑への非難を強め、米国企業による中国製モデルの利用禁止や、制裁などの措置を示唆した。
だが、業界はすぐに反発した。小規模スタートアップの業界団体が禁止に反対を表明した他、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「X」(旧Twitter)への投稿で、オープンモデル規制に反対する書簡を公開した。書簡の署名者には米国のDell Technologies、Hugging Face、IBM、Microsoft、Y Combinator、仏国Mistralや、Linux Foundationなども名を連ねた。
当初は、クローズドモデルを提供する米国のAnthropic、Google(※)、OpenAIが署名に不参加だったが、GoogleとOpenAIは翌日に署名。その週末までに署名企業は235社に達した。
※オープンウエートモデルの「Gemma」も提供している。
オープンウエートモデルのライセンス形態は、依然として複雑な課題を抱えている。2026年8月中旬にLinux Foundation は、「OpenMDW-1.1」ライセンスの承認をOSI(Open Source Initiative)に申請した。
このライセンスは、従来のソースコードではなく機械学習(ML)モデルの法的実態に対応するために開発され、中国BAAI(Beijing Academy of Artificial Intelligence)、IBM、NVIDIA のモデルに適用されている。
だが、モデルの重みが著作権法の対象となるかどうかは法的見解が分かれており、著作権を前提とする従来のオープンソースライセンスの適用には曖昧さが残る。OpenMDWが承認されるかどうかは不透明だ。
法的な不確実性から、モデルベンダーは蒸留への異議に関しても、著作権侵害ではなく、利用規約(TOS:Terms of Service)違反として提起している。また、各ベンダーのライセンス戦略も変動している。
OpenAI は、「GPT-2」のオープン展開から「GPT-3」でのクローズド化を経て、「gpt-oss」で再びオープン化を選択した。Meta Platformsも「Llama」のオープン展開から「Muse Spark」でクローズド化に“かじ”を切った。
Moonshot AIは「Kimi K2」からKimi K3にかけて条件を厳しくした他、中国Alibabaは「Qwen 3.8-Max」の27Bモデルを「Apache License」で公開する一方、2.4Tモデルには商業利用を制限するライセンスを適用している。
なお、RedMonkが追跡する96モデルのうち、何らかの形でオープンなものは51%となっている。
クローズドモデルは、複数のベンチマークスコアで依然として優位にある。「SWE-bench Verified」では、OpenAIの「Sol」が1位、Anthropicの「Claude Opus 4.8」が2位、Kimi K3が3位で、2位と3位の差は約12%だ。
より実務的なエージェント系指標「Vals Index v2」では「Claude Opus 5」が首位に立ち、Kimi K3は10位にとどまる。ハルシネーションの発生率や速度の面でも、クローズドモデルが有利だ。
だが、RedMonkは、モデルの能力の観点で重要なのは、生の能力そのものではなく、実用的な能力のしきい値に達し、「十分使える」レベルにあるかどうかだと指摘する。さらに、このレベルの能力を持つクローズドモデルの目安の一つとして、2025年11月に登場した「Claude Opus」と「ChatGPT」の新モデルを挙げる。これらはそれまでのモデルよりも圧倒的に有用なものになったという。
その上で、「『十分使える』レベルの定義次第だが、オープンウエートモデルの能力は2026年4月、あるいは遅くとも7月には、このレベルに達しているようだ」との見解を示す。
Artificial Analysisの「Intelligence Index」におけるオープンウエートモデルとクローズドモデルの最高スコアの推移:オープンウエートモデルの能力が実用的なレベルに達した時期と、クローズドモデルの能力の進化を示す(提供:RedMonk)AIモデルの性能を横断的に評価しているArtificial Analysisの「Intelligence Index」において、Kimi K3は「Claude Fable 5」と「GPT-5.6 Sol」には及ばないものの、Claude Opus 4.8や「ChatGPT 5.5」と同水準にある。長時間稼働するエージェント系ベンチマーク(「Elo」「Program Bench」「SWE Marathon」など)では、首位に立つことも多い。
Kimi K3はサイズが大きく、ローカル実行は現実的でないが、コストはClaude Opus 4.8の約半分、Claude Fable 5の約3分の1にとどまる。
Anthropicは一貫して、オープンウエートモデルはガードレール(安全対策)が不足しており、サイバー攻撃やバイオテクノロジー分野などでの悪用リスクがあると主張してきた。
これに対し、生物兵器や核兵器の製造には、ソフトウェアへの攻撃よりはるかに高い実務上の障壁があるとの反論もある。ただし、高度なAIモデルによってマルウェア作成コストがゼロに近づくこと自体は、現実のリスクだ。
一方、オープンウエートモデルは、防御活動でも重要な役割を果たす。Hugging Faceはサイバー攻撃を受けた際、クローズドなフロンティアモデルに支援を求めたが、組み込まれたガードレールによって拒否された。そこで最終的に、こうした機能制限のないオープンウエートモデルである中国Zhipu AIの「GLM」を使って、防御措置を講じた。
Amazon Web Services(AWS)のマット・ガーマンCEOは、2025年の同社の年次カンファレンス「re:Invent」で、オープンウエートモデルの開発には多額のコストがかかるが、開発を支える明確な経済モデルを欠く場合が多いと指摘した。RedMonkは、その背景を次のように整理している。
IBMは「Granite」を軸にコンサルティングやソフトウェアを販売し、NVIDIAはNemotronによるハードウェア販売の拡大を狙う。AlibabaとGoogleは、モデルの強みを自社クラウドへの誘導に利用している。
GoogleとMetaは、いずれも広告という高収益事業を持ち、大規模言語モデル(LLM)のような補完技術の開発費を支えられる。
ベンチャー資金を得てクローズドなフロンティアモデルを手掛けるAnthropicとOpenAIは、1兆ドル近い評価額を正当化するために利益の出る価格でモデルを提供し、成長を続ける必要がある。クローズドソフトウェアモデルが持つ希少性を享受しているものの、今後も低コストモデルとの競争が続き、経済的な見通しは不透明だ。となれば、DeepSeekやMoonshot AIのようなオープンウエート系スタートアップの状況は、なおさら厳しい。
中国は2030年までのAI覇権を目標に掲げ、その手段としてオープンウエートモデルを位置付けており、80億ドル規模の国家ファンドなどを通じてAlibaba、DeepSeek、Moonshot AI、Z.aiを支援している。
オープンウエートモデルにおける不透明な経済モデルは、一部のモデルがオープン型からクローズド型に移行した一因かもしれない。
モデルの発表から重みの公開までの遅延は全体として長期化しており、その理由も安全性の審査から商業的な判断に移ってきている。Metaの場合、「Llama 2」「Llama 3B」は同日公開だったが、「Llama 3.1」は96日を要し、「Behemoth」の重みは公開されなかった。中国製モデルの重みは通常、10〜14日で公開されるのに対し、米国製は100日以上かかることが多い。
同様に、モデルのサイズにも地域的な傾向が見られる。GLM、Kimi、「Qwen」といった中国製モデルは70B以上が中心である一方、gpt-oss、Gemma、Graniteなどの米国製はより小型で、ローカル環境でも動かしやすい。
Kimi K3は、フロンティアモデルと競合するように設計されており、2.8Tという膨大なパラメーターサイズは、幅広い機能が必要とされることを反映している。これに対し、IBMのはるかに小型な30B以下のGraniteは、オンプレミスでの企業利用を狙っている。
蒸留とは、新規のデータセットではなく、別の既存モデルの出力を使ってモデルをトレーニングする手法だ。多くのモデルプロバイダーが自社モデルを蒸留している。例えば、Gemmaは「Gemini」から、「Claude Haiku」はClaude Opusから蒸留されている。
一方、競合モデルの蒸留は好ましくないとされており、違法となる可能性もある。多くの場合、利用規約違反として扱われる。競争上の防御策として、多くのモデルがモデルのトレーニングや蒸留を制限している。
RedMonkは以下のように、蒸留が他の全ての論点に関わると指摘している。
「中国AIがClaudeやGPTから数十億トークン抽出」 米当局が暴いた「知識蒸留」の実態
あなたが使うAIの「中身」、実は中国モデルかも 米企業のAPI利用で58%
中国製AIが上位を占有、米国製AIに3倍差 Mozillaレポートが明かす「オープンモデル」の現在地
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