「AIファースト」な労働力確保には人間の適応力強化と組織文化の転換が必要:Gartner Insights Pickup(468)

AIの導入が進む中、企業の競争力を左右するのは、AIそのものの性能だけではなく、それを使いこなす人材と組織の在り方だ。「AIファースト」の実現には、従業員の学習と適応力を高めるとともに、AIの自動化によるスキルの衰退を防ぎ、人間とAIが協働できる文化の構築が必要だ。今、企業に求められているのは、AIの導入だけでなく、人材育成や組織設計を含めた変革だ。

» 2026年10月16日 05時00分 公開
[Svetlana Sicular, Gartner]

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 AI(人工知能)から価値を生み出す競争では、もはや技術は決め手ではない。人材がますます重要になっている。AIが企業のワークフローに組み込まれる中、組織は業務の構造、人材の育成、従業員とインテリジェントシステムの協働の在り方を見直す必要がある。

 AIを前提にビジネスを行う「AIファースト」な労働力を確保する方法は、人間をAIに置き換えることではない。意思決定や投資、働き方設計の過程で常にAIを考慮するとともに、従業員がAIとともに状況に適応し、学び、価値を生み出せるようにすることだ。従業員の適応力を育み、進化する役割を担う準備を継続させる組織が成功を収める。

 Gartnerは、2027年までに好奇心、適応力、俊敏性が、IT人材の最も重要なスキルになると予測している。インテリジェントな実験やオーケストレーション(指揮・調整)が、単なる技術的な実行よりも重視されるようになるからだ。

継続的な学習を土台に

 従来の従業員育成アプローチは、AI駆動環境ではもはや不十分だ。定期的な研修や受動的なアップスキリング(スキルアップ)は、AIリテラシーの維持・向上、継続的な学習、能動的なスキル開発へと移行する必要がある。

 これは大きな課題だ。Gartnerは、今後5年間で従業員の主要スキルの44%が変化すると予測している。組織はAI教育を単体の施策として扱うのではなく、日常業務に組み込む必要がある。

 従業員には、AIの能力と限界に関する実践的な理解が求められる。これにより、AIツールを効果的に活用しつつ、将来の技術や規制の変化にも柔軟に対応できるようになる。組織は継続的学習の文化を育むことで、AIの能力向上に合わせて進化しやすくなる。

スキルの衰退による人材危機を回避

 AIは効率性を高めるが、AIによる自動化への過度な依存は、新たな人材リスクにつながる。従業員がAIに委ねるタスクが増えるにつれて、組織は、個人が経験を通じて専門性を培う機会を意図せず減らしてしまう恐れがある。それが続けば、重要な能力が低下し、業務に不可欠な役割を担う人材が不足しかねない。

 その影響は深刻だ。Gartnerは、2030年までに企業の半数が、スキルの衰退や生成AI関連の課題などの要因により、少なくとも2つの重要な職務で致命的な人材不足に直面すると予測している。

 この課題に対処するために、CIO(最高情報責任者)はスキルベースの採用や的を絞ったスキルアップ、人材定着プログラムを通じてAI人材ギャップを埋められる。これらの施策においては、意思決定モデリング、AIオーケストレーション、コンテキスト設定、クリティカルシンキング(批判的思考)に重点を置く。

 生涯学習とスキルアップは、将来の人材不足から企業を守り、持続可能な競争優位をもたらす。

人間とAIの共生文化を醸成

 AIファーストな組織になるにはスキル開発だけでなく、文化の転換が必要になる。従業員が「AIは人間の貢献を減らすのではなく、高めるために導入されている」という確信を持てなければならない。そのため、AIの役割に関する透明性のあるコミュニケーションが欠かせない。

 リーダーは従業員に、AIを「より深い分析、より的確な意思決定、より創造的な仕事を支える味方」として捉えるよう促すべきだ。人間による適切な監督と判断を維持しながらAIへの信頼を築くことで、組織は機械の能力と人間ならではの強みのバランスを取れるようになる。

 将来の人材は、ますますAIとともに学び、働くようになる。Gartnerは2028年までに、従業員の40%は新たな役割や職に就く際に、まずAIによって訓練や指導を受けるようになると予測している。現在のところ、この割合は5%に満たない。

 今後数年にわたって、人間とAIの健全で生産的な関係を今から築く組織は、AIの可能性を最大限に引き出しやすくなるだろう。

目指すべき道筋

 本質的に、AIファーストな労働力への転換は人やスキル、組織設計の変革だ。成功の鍵は、継続的に学び、変化する役割に適応し、重要な専門性を維持し、AIと効果的に協働できる人材を生み出すことにある。

 技術のみに焦点を当てる組織は後れを取る恐れがある。人間の適応力と、人間とAIの共生に投資する組織こそが、AIから持続可能な価値を引き出し、技術が進化し続ける中で競争力を維持していくだろう。

出典:Build an AI-First Workforce by Strengthening Human Adaptability(Gartner)

※この記事は、2026年8月に執筆されたものです。

筆者 Svetlana Sicular

VP Analyst


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