Googleが「SREの教科書」を10年ぶりに全面改訂 “システム運用の常識”はどう変わった?:AI時代のSREに求められる新たな役割

Googleは、システムの信頼性を確保するための考え方や実践手法をまとめた書籍『Site Reliability Engineering』の第2版を発表した。初版の出版から10年、システム運用の考え方や手法はどのように変わったのか。

» 2026年11月06日 07時45分 公開
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 Googleは2026年10月12日(米国時間)、システムの信頼性を確保するための考え方や実践手法をまとめた書籍『Site Reliability Engineering: How Google Runs Production Systems』の第2版を発表した。2016年に初版が出版されたもので、それ以来10年ぶりの全面改訂となる。

 SREは、ソフトウェアエンジニアリングの手法をシステム運用に適用し、信頼性の向上と運用の効率化を図る考え方だ。今回の第2版は、Google社内や業界全体で蓄積された10年間の知見を反映し、内容を全面的に書き直したという。

この10年間でSREはどう変わったのか

 Googleは、SREの実践方法がこの10年間で、個別の手作業を中心とした運用から、プラットフォーム全体を対象とする自動化へと進化してきたと説明する。具体的には、次の6つの領域で変化があったとし、AI時代のSREに求められる「新たな役割」についても説明している。

1.SLOとエラーバジェット

 2016年当時は、基本的な可用性指標と手動によるエラーバジェットの管理が中心だった。現在は、ユーザー視点の多層的なSLO(サービスレベル目標)を設定し、エラーバジェットの消費速度に応じた動的なアラートや、ポリシーの自動適用を取り入れる方向へ進化している。

2.監視とオブザーバビリティー

 従来は静的なダッシュボードやログの確認、アラートの手動調査が中心だった。現在は「OpenTelemetry」や分散トレーシング、異常の相関分析などを活用し、複雑なシステムで発生した障害の根本原因を迅速に特定する取り組みが進んでいる。

3.運用自動化とプラットフォーム

 個別の作業を自動化するスクリプトから、Infrastructure as Code(IaC)による宣言的なインフラ管理や、社内開発者プラットフォームの活用へと変化した。障害発生時に自動で復旧する「自己修復」の仕組みも重視されている。

4.信頼性テスト

 定期的な障害対応訓練や負荷テストだけでなく、継続的な耐障害性の検証、自動化されたテスト、本番環境で新バージョンを段階的に検証するカナリアテストなどが取り入れられている。

5.容量とリソースの管理

 手動でのリソース割り当てや固定的な需要予測から、負荷に応じた自動スケーリングへと移行している。クラウドコストを管理するFinOpsとの連携や、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)を利用するAIワークロードのコスト最適化も重要になっている。

6.SREの組織体制

 特定のアプリケーションを担当する専任SREチームだけでなく、プラットフォームエンジニアリングとの連携や、各開発チームに信頼性の推進役を配置する体制など、組織横断的な取り組みが広がっている。

AI時代のSREに求められる「2つの役割」

 今回の改訂で新たに重視されているのがAIとの関係だ。Googleは、AI時代のSREには2つの役割があると説明している。

 一つは、AIシステムそのものの信頼性を確保することだ。大規模なGPU、TPUクラスタの安定稼働や、AI特有の出力の不確実性、応答時間の監視、モデルの学習やファインチューニングに使用するデータ処理基盤の信頼性確保などが課題になる。

 もう一つは、AIを活用してSREの業務を高度化することだ。例えば、生成AIによる障害の一次切り分けや事後分析の支援、自然言語による監視データの調査、機械学習を利用したリソース不足の予測などが挙げられている。

 一方、Googleは、技術やシステム構成が変化しても、SREの基本原則は変わらないと強調する。信頼性を重視する組織文化や、人間同士の協力を含む人的な要素は、引き続き重要だという。

 システムの複雑化とAIの普及によって、運用担当者に求められる技術や役割は変わりつつある。しかし、単に新しいツールを導入するだけでは、システムの信頼性は確保できない。運用の仕組みや組織体制を含めて見直すことが、今後のSREを実践する上で重要になる。

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