アップデート機能を悪用した攻撃に対抗セヨ!:川口洋のセキュリティ・プライベート・アイズ(51)(2/2 ページ)
自動アップデートサーバーを乗っ取るという手法が話題になりました。実はHardeningでも、ひそかにその手を仕込んでいました。
Hardeningで仕込んだシナリオ
アップデート機能を悪用した攻撃手法は、先日行われた「Hardening 10 APAC」でもひそかに取り込んでいました。
関連記事
沖縄の暑さに負けない熱戦を繰り広げた「Hardening 10 APAC」(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1407/04/news101.html
Hardening 10 APACで作ったサーバーには、各サイトで使われているソフトウェアのアップデート用パッケージが用意されていました。そのパッケージにはバックドアが仕込まれており、署名を検証せずにインストールすると被害に遭うはずです。
参加者の環境にあるサーバーのyumの設定を、以下のようにしておきました。gpgcheck=0となっているので、GPG署名のチェックが行われません。
アップデート用のサーバーには、バックドア入りのパッケージファイルが事前に置いてあります。参加者がyumでアップデートを行うと、GPG署名の確認が行われず、バックドア入りのパッケージにアップデートされてしまう仕組みです。もし、gpgcheckに1が設定されていれば以下のような「..... is not signed」というエラーを出力して、アップデートは失敗します。
多くの参加者がyumを実行した結果、バックドアプログラムが動く結果になってしまいました。「Hardening 10 APAC」の競技を振り返る「Softening Day」でその種明かしをしたところ「そこまでやるか」というような会場の雰囲気を感じましたが、こういう競技の環境でもないとリアルな体験することはできなかったのではないかと思っています。
Hardeningの今後に向けて
今回はアップデート機能を悪用した攻撃を取り上げました。サービスやソフトウェアの提供元が不正アクセスを受け、提供されているものが「信頼できない」前提でシステムを運用することは非常に大変です。攻撃者は明らかに、その対応の難しいポイントを狙った攻撃を行っており、私たちもこのような攻撃に対応する方法を考えなければなりません。
前回のHardening 10 APACのコラムを書いてから、あっという間に9月になってしまいました。もう11月の企画の準備に取り掛からなければなりません。Hardening Projectメンバーの熱いミーティングも行われています。今回もまた新しいネタを考えて準備していますので、前回参加できた人も参加できなかった人もぜひ2014年11月の「次のHardening」に参加してください。
そして、私は次回Hardeningの作戦会議をするために今夜も飲みに行くのでした。
関連記事
工夫、工夫そして工夫――Hardening 10 APAC“運営”レポート(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1407/09/news007.html
著者プロフィール
川口 洋(かわぐち ひろし)
チーフエバンジェリスト
CISSP
ラック入社後、IDSやファイアウォールなどの運用・管理業務を経て、セキュリティアナリストとして、JSOC監視サービスに従事し、日々セキュリティインシデントに対応。
チーフエバンジェリストとして、セキュリティオペレーションに関する研究、ITインフラのリスクに関する情報提供、啓発活動を行っている。Black Hat Japan、PacSec、Internet Week、情報セキュリティEXPO、サイバーテロ対策協議会などで講演し、安全なITネットワークの実現を目指して日夜奮闘中。
2010年〜2011年、セキュリティ&プログラミングキャンプの講師として未来ある若者の指導に当たる。2012年、最高の「守る」技術を持つトップエンジニアを発掘・顕彰する技術競技会「Hardening」のスタッフとしても参加し、ITシステム運用にかかわる全ての人の能力向上のための活動も行っている。
- 「DNS通信」記録していますか?――万一に備えたDNSクエリログの保存方法
- Web広告からのマルウエア感染「Malvertising」にどう対処すべきか
- 中の人が振り返る「Hardening 10 ValueChain」――学びにつながった「トラブルの数々」とは
- 無慈悲な専門家チーム「kuromame6」の暗躍に負けず勝利をつかんだチームは?
- 外部リソースの活用もポイントに、「Hardening 10 MarketPlace」開催
- Hardening Projectから派生した「MINI Hardening Project」に行ってみた!
- 「これさえしておけば助かったのに……」を避けるため、今すぐ確認すべき7項目
- アップデート機能を悪用した攻撃に対抗セヨ!
- 工夫、工夫そして工夫――Hardening 10 APAC“運営”レポート
- ウイルスとは言い切れない“悪意のあるソフトウェア”
- 2013年のセキュリティインシデントを振り返る
- ここが変だよ、そのWeb改ざん対応
- きっかけは不正侵入――私がセキュリティ業界に足を踏み入れたワケ
- CMSが狙われる3つの理由
- FacebookやApple、MSまで……Javaの脆弱性を狙う攻撃の手口
- Hardening One、8時間に渡る戦いの結果は?
- そのときStarBEDが動いた――「Hardening One」の夜明け前
- ロシアでわしも考えた
- 実録、「Hardening Zero」の舞台裏
- ちょっと変わったSQLインジェクション
- 官民連携の情報共有を真面目に考える
- アプリケーションサーバの脆弱性にご注意を
- IPv6、6つの悩み事
- スパムが吹けば薬局がもうかる
- JSOCに飛び込んできた不審なメール――これが標的型攻撃の実態だ
- 東日本大震災、そのときJSOCは
- ペニーオークションのセキュリティを斬る
- 2010年、5つの思い出――Gumblarからキャンプまで
- 9・18事件にみる7つの誤解
- 曇りのち晴れとなるか? クラウド環境のセキュリティ
- Webを見るだけで――ここまできたiPhoneの脅威
- 不安が残る、アドビの「脆弱性直しました」
- ともだち373人できるかな――インターネットメッセンジャーセキュリティ定点観測
- 実録・4大データベースへの直接攻撃
- Gumblar、いま注目すべきは名前ではなく“事象”
- Gumblarがあぶり出す 「空虚なセキュリティ対策」
- 新春早々の「Gumblar一問一答」
- 実はBlasterやNetsky並み?静かにはびこる“Gumblar”
- ECサイトソフトウェアはなぜ更新されないのか
- 狙われるphpMyAdmin、攻撃のきっかけは?
- 学生の未来に期待する夏
- 米韓へのDoS攻撃に見る、検知と防御の考え方
- 分かっちゃいるけど難しい、アカウント情報盗用ボット対策
- 狙われる甘〜いTomcat
- 表裏一体、あっちのリアルとこっちのサイバー
- 世間の認識と脅威レベルのギャップ――XSSは本当に危ないか?
- 急増したSQLインジェクション、McColo遮断の影響は
- ○×表の真実:「検知できる」ってどういうこと?
- ところで、パッケージアプリのセキュリティは?
- レッツ、登壇――アウトプットのひとつのかたち
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.