徳島編:東京は僕を選ばなかった――Uターンで起業したエンジニアの逆転人生:U&Iターンの理想と現実(49)(2/2 ページ)
1DKから脱出できず、満員電車には慣れず、都会の距離感が解せず、友人もできず――「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実」。徳島編は「東京に選ばれなかったエンジニア」が、徳島で人生を取り戻すお話です。
つわりで苦しむ妻を見て、不安になった
そんな日々でも出会いはあるもので、同じ徳島出身の妻と結婚しました。
6回目ぐらいの転職でベンチャー企業に入社したところで妻が妊娠。つわりが酷く、食事も身動きも取れないのに、私は転職直後で、成長ベンチャーの激務と高スキルのメンバーに囲まれて、仕事についていくだけで精いっぱい。そこで、妻には一時的に徳島の実家に帰ってもらうことにしました。
眼の前の危機は回避できましたが、これからのことを考えると不安だらけです。
新しい職場は、レベルが高過ぎてついていけなそうだ。でも、辞めて楽な職場に転職したら給料は下がるだろう。「東京で子育てするには世帯収入700万円は必要」らしい。そうなると共働き必須だけど、待機児童だらけで保育園に入れないらしい。家は狭い賃貸だし、車もない。この状態で子育ては難しそうだ。
これらを一気に解決するソリューションはないものだろうか……。
地方のSIerって、イケてないかも
「家族のことを考えると、徳島に帰った方が良いのではないか」と思うようになりました。
しかし徳島は、子育てには良くても、キャリア形成には良くなさそうです。IT企業が少ないので、選択の幅が限られるからです。求人情報を検索しても、「Mobage」や「サイバーエージェント」のようなコンシューマー向けの企業はありません(2010年当時)。地方のSIerに転職したら、レガシーな業務システムを作ってドキュメント作成ばかりさせられるのでは、という恐怖(思い込み)もありました。
でも検索を続けたら、良さそうなIT企業が見つかりました。給料は東京の1割減ぐらいなので、生活レベルは問題ない。受託開発がメインだけれど、大規模なコンシューマー向けのWebとアプリの案件が中心なので、僕のスキルが生かせそう。社長がエンジニアで新技術に意欲的で気が合いそう。
新しい案件を取って回している企業なら、「地方のSIer」でもキャリア形成できると考えました。そこで、東京支店に秒速で面接に行き、徳島勤務が決まりました。この会社が、後にわが社の出資元にもなります。
仕事が決まったので、妻の実家に移住しました。
僕の実家からも車で30分くらい。頼りになる親が4人も近くにいて、家事も任せられるので、妻の体調がすぐれなかったり、子どもが熱を出したりしても、僕は安心して任せて、仕事に専念できます。
実家、最高!
もし東京で妻と2人だけでやっていたらと思うと、ゾッとします。うまくやれた自信はありません。
今回は、僕が徳島にUターンした7年前のことを書きましたが、就職事情はだいぶ良くなりました。「メディアドゥ」や「ワークスアプリケーションズ」といった大手企業の支社ができて、雇用を生み出しています。
僕の周りでも、運送業者が「kintoneいいよね。でも扱える事務がいないんだ」と困っていたり、インフラ企業の社長がLPWAのアンテナを持って「これ安くて面白いよ! 何か作ろう」とうれしそうに話していたり、いろいろキテいる感じです。今後は、一般企業のIT人材の募集も増えるでしょう。
ITエンジニア U&Iターンの理想と現実:徳島編、次回は、東京から徳島にUターンして良かった点と悪かった点をお伝えします。
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