連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(2)
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綱野衛二
Roads to Node
2009/3/16
2-2 道路の仕組み
さて、小包を運ぶための道路や線路ですが。これには種類があります。舗装されてスピードが出せる道路、デコボコが多くてスピードが出せない道路、舗装されてはいるが雨が降るとすべりやすい道路などなどです。
さまざまな道路がありますが、ここで覚えておいてほしいポイントは3つあります。
1つ目は、道路は無限に長く設置することはできない、という点です。道路自体は長く設置することはできますが、走るトラックのガソリンの問題があります。あまり長い時間道路を走っていると、ガス欠になってしまうかもしれません。そのため、ガス欠前にステーションに着く必要があります。
さらに、あまり道路が長いと揺れのせいで小包が崩れてしまうかもしれません。なのでやはり、ステーションで小包を積み直す必要があります。
イーサ配送君「道路の長さは決まっているってこと。ただし、道路が走っている環境によってこの長さは違うよ。雨が多いところだとすべって荷崩れが起きやすいから道路は短くしなきゃいけない、とか」
2つ目は、通行の方法です。道路には「片側通行」と「両面通行」があります。
「片側通行」はトラックが1台しか通れません。なので、ペイジ市とブリン市をつなぐ道路で、ペイジ→ブリンでトラックが走っていると、反対のブリン→ペイジのトラックは走れません。もし走らせてしまったら「衝突」してしまいます。
つまり、あて先までトラックを送り出したら、向こうからトラックが来ることはありません。その逆でトラックが来ているときは、トラックを送り出せません。
「両面通行」はトラックが2台以上通れます。つまり、ペイジ→ブリンでトラックが走っていても、反対のブリン→ペイジのトラックは走れます。
つまり、トラックを送り出している最中でも、トラックが来られます。
もちろん、「両面通行」の方が便利ですが、車線が複数要るという欠点があります。
図2-3 片側通行と両面通行(右下のボタンで再生・停止ができます。Flash Playerが必要です) |
イーサ配送君「これは道路の種類によって決まるね」
最後のポイントは、車線の幅です。道路には制限速度が決まっています。よって、トラックのスピードは均一です。
そして、複数の車線がある場合、同時に走ることができるトラックの数が増えます。同時に走ることができるトラック数が多いということは、一定時間で運ぶ荷物の量が増えるということです。
つまり、複数の車線がある道路は、多くの荷物を運ぶことができる。つまり「荷物を運ぶスピードが速い道路」ということになります。
パケット君「荷物を運ぶスピードが速い道路、ってのも変な表現だね」
う〜ん。車線が多い、つまり「幅の広い道路」は「多くの荷物を運べる」から「荷物を運ぶスピードが速い」ってこと、ですね。
道路や線路は、ネットワークでは「回線」になります。電話回線、ADSLやFTTH、LANケーブル、ほかにも無線などがこれに当てはまります。回線は、データを信号として流して伝えます。信号はトラック・列車で表現しています。
信号は回線に使われているケーブルの種類によって異なります。銅線なら電気信号、光ファイバなら光信号、無線LANなら電波になります。
信号は、周りの環境によって問題が発生します。長いケーブルに流していくと信号は弱まってしまいます(減衰)し、何らかの要因によって形が崩れてしまう(ノイズ)こともあります。そのため、ケーブルは減衰を防ぐためとノイズをなるべく受けないようにするため長さ制限があります。この減衰の度合いとノイズを受ける度合いというのはケーブルの質で決まります。
一般的なLANでは銅線を使用したUTP(Unshielded Twisted-Pair cable)か、光ファイバケーブルが使用されます。UTPの長さ制限は100m、ノイズを比較的受けやすくなっています。光ファイバケーブルは長さは規格によりさまざまで、電気的なノイズは受けないという利点があります。
また、片側通行を行うのが「半二重(harf-duplex)通信」と呼ばれます。片側通行のため、誰かが送信中は送信することができない、自分が送信中はほかの人は送信しない。つまり、送信または受信のどちらか一方しか行えず、送信中は受信ができない、受信中は送信ができない通信になります。トランシーバーの通信のイメージで考えてください。もう一方の両側通行が「全二重(full-duplex)通信」です。こちらは送信・受信を同時に行えます。
これは回線によってどちらの通信が行えるか決まります。現在の回線は全二重通信ができるものがほとんどです。
半二重通信の場合、送信中は受信ができない、受信中は送信ができないのですが、もし受信中に送信したりすると信号が「衝突(Collision)」します。衝突した信号は、正常に読み取れなくなります。
最後の車線の話ですが、これは「帯域幅(Bandwidth)」と呼ばれます。もともとの用法は違う意味ですが、現在では「帯域幅=回線速度」として使われます。回線速度とは、一定時間内に運べるデータ量を示すもので、通常はbps(bit per second:1秒間に転送できるビット数)を単位として使います。「帯域幅が広い回線」=「回線速度が速い回線」という意味になります。
帯域幅もケーブルの質で決まります。LAN向けのものならば、UTPは10M/100M/1Gbpsの種類が用意されています。光ファイバケーブルなら100M/1G/10Gbpsがあります。
インターネット世界の運送方法 | |
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2-2 道路の仕組み | |
2-3 ビントサーフ市の道路事情 | |
2-4 荷物に名前を付けよう |
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