プロダクト・レビュー
さまざまな新技術が注ぎ込まれたミッドレンジIAサーバ
「eserver xSeries 360」(3)
デジタルアドバンテージ 島田広道
2002/03/14
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最大8GbytesのDDR SDRAM DIMMを実装可能なメモリ・サブシステム
本機のメモリ・サブシステムの特徴としては、次の2つがある。1つは、DDR SDRAMの採用だ。これまでIAサーバでDDR SDRAMの採用例は少なかったが、対応するチップセットが(XA-32以外にも)登場し始めたことにより、今後急速にDDR SDRAMがIAサーバのメイン・メモリとして普及するだろう。
もう1つは、IBM独自のChipkill(チップキル)と呼ばれる技術である。これは、DIMMに搭載された複数のメモリ・チップのうち1チップが故障しても、有効なデータを保持し続けるという技術だ*2。これにより、DIMM1枚当たり4bitsのエラー(メモリ・サブシステム全体では8bits)を訂正できる。通常のECCメモリでは、1bitエラーの検出・訂正はできるが、DIMM上の1チップが故障してしまうと、4bitsもしくは8bits単位でデータが失われるので、復旧することはできない。サーバ機のように、使われるメモリ・チップの総数が多くなるシステムでは、bit単位のエラーが発生する確率だけでなく、1つ以上のチップが故障する確率も高くなるので、このような対策が有効である(本機に実装できる最大8Gbytesのメモリ容量でも、メモリ・チップ数は軽く100個を超える)。
*2 Chipkillによるデータ保護の仕組みは、大雑把にいってDIMM 1枚の各メモリ・チップをそれぞれディスクに見立ててRAID 5を実現したものと考えればよい。通常のECCでは冗長bitを特定のメモリ・チップに保存するのに対して、Chipkillでは全メモリ・チップに一定の規則で分散配置する。そして万一1チップが故障したら、残りのチップに分散して保存されているデータをかき集めて、失われたbitの分のデータを復元することができる。 |
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ドータ・カードで実装されているメイン・メモリ |
これはメイン・メモリであるDIMMを装着するためのドータ・カードだ。メモリを増設または交換する際には、このようにドータ・カードをマザーボードからいったん取り外して作業する。DIMMソケットは合計8本で、標準では512MbytesのDIMMが4枚、つまり合計2Gbytesが実装されている。最大容量は8Gbytesである。高速化のため、DIMMは2枚単位で装着する仕様となっている(2枚のDIMMに対してほぼ同時にアクセスすることで、ピークで2倍の転送レートを実現する)。写真で奥に立っている背の高い基板は、メモリ専用の電源供給モジュール(VRM)だ。
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故障したDIMMを特定するための仕組み |
メモリのドータ・カードには、DIMMの動作状況を表すインジケータLEDが各DIMMソケットにそれぞれ実装されている。ドータ・カードを取り外し、カード上の故障テスト用ボタンを押すと、故障したDIMMのLEDが点灯するので、交換すべきDIMMを特定できる。 |
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各DIMMソケットのインジケータLED。8本のDIMMソケットのほか、VRMとドータ・カード全体、故障テスト用回路それぞれの動作状況を表す合計11個のインジケータLEDが装備されている |
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故障テスト用ボタン。ドータ・カードが取り外された状態でも、このボタンを押せばインジケータLEDが点灯して、故障したDIMMなどを確認できる |
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故障テスト時に電力を供給するコンデンサ。マザーボードにドータ・カードが取り付けられて本機が動作している最中に、このコンデンサに電気が蓄えられる。ドータ・カードが取り出されてテスト・ボタンが押されると、電気がコンデンサから放出され、インジケータLEDを点灯する電力として使用される |
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メイン・メモリにはPC1600 DDR SDRAM DIMMを採用 |
これは試用機に搭載されていた512MbytesのDIMMである。本機で使えるのはECCに対応するPC1600 DDR Registered DIMM(RDIMM)だ。なお、Chipkill機能はチップセット(メモリ・コントローラ)で実現されるため、DIMM自体にChipkillへの特殊な対応は必要ない。つまり標準的なECC対応のDIMMが使えるという。 |
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