USB 3.0(Universal Serial Bus 3.0)Windows Insider用語解説

USB 2.0の後継規格「USB 3.0」は、次世代のPC向け標準インターフェイスとして普及が見込まれている。気になる性能や互換性、Windowsの対応予定を解説。

» 2009年06月08日 00時00分 公開
[島田広道デジタルアドバンテージ]
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 PCの汎用インターフェイスUSB 2.0の後継規格で、従来の約10倍という高速なデータ転送速度や消費電力の低減を実現しつつ、既存のUSB 2.0との上位互換性も維持している。「SuperSpeed USB」とも呼ばれる。2008年11月に最初の正式規格がリリースされた。

 USB 3.0登場の背景の1つは、高速化が要求される高精細ビデオなどの周辺機器に対して現行のUSB 2.0では対応が困難と予想されたことだ。一般に新しいインターフェイスは、規格がリリースされてから、製品に実装され、周辺機器などが普及し始めるまでに数年から10年近い時間がかかる。そのため、USB 2.0の転送速度ではカバーできない周辺機器が多く登場した時点で、新しい規格をリリースしたのでは間に合わない。USB 3.0は、そのような状況が登場することを予測して規格化されたものだ。

USB 2.0から約10倍の高速化

 USB 3.0の最大転送速度は、USB 2.0の480Mbpsに対して約10倍の5Gbpsまで高められている。この最速の伝送モードは「SuperSpeed」と呼ばれ、USB 3.0の新機能の多くはこのモードで使用できる。

伝送モード名 最大転送速度 対応するUSB規格
Low-speed 1.5Mbps USB 1.x以降
Full-speed 12Mbps USB 1.x以降
High-speed 480Mbps USB 2.0以降
SuperSpeed 5Gbps USB 3.0以降
USBの伝送モードと最大転送速度
USBでは規格の更新とともに高速な伝送モードが追加されてきた。

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 ただし上記は理論的な最大転送速度で、実効速度はさまざまな要因により、これよりは低下する。例えばSuperSpeedの実効転送速度は、通信プロトコルオーバーヘッドなどにより400Mbytes/sec前後に下がるという。それでも現行のハードディスクやSSDが最大300Mbytes/secのSATAで利用されていることを考えれば、こうした高速ストレージにも十分な速度といえる。

 USB 3.0では現行の銅線だけでなく光ケーブルによる伝送への対応も予定されており、今後さらにデータ転送速度の向上が図られるということだ。

USB 2.0対応PC/機器との併用が可能

 USB 3.0はUSB 2.0との互換性があり、PCがUSB 3.0対応で周辺機器がUSB 2.0対応でも、またはその逆の組み合わせでも、基本的には接続可能である。ただし転送速度や機能はUSB 2.0レベルに限定される。USB 3.0本来の性能/機能を利用するには、PCと周辺機器、ケーブル、ソフトウェア(ドライバ)のすべてがUSB 3.0に対応している必要がある。

 USB 3.0のコネクタやケーブルには、従来のUSB 2.0の信号線に加えてSuperSpeedモード専用の信号線が併設されている。USB 2.0対応PC/機器とはUSB 2.0用信号線で、USB 3.0対応PC/機器とはSuperSpeed用信号線で伝送に用いられるという仕組みだ。

 この信号線の追加により、USB 3.0のコネクタ形状はUSB 2.0から変わってしまった。それでもUSB 2.0用ケーブルは、USB 3.0対応PC/周辺機器のコネクタに接続・利用できるよう工夫されている。しかし、USB 3.0用ケーブルは、USB 2.0対応の周辺機器には接続できない(物理的に装着できない)。

PC側標準コネクタ(Standard-A)の違い
PCに接続するケーブルのコネクタを比較している。USB 2.0では電気の導通がない個所に、USB 3.0の追加端子(SuperSpeed用)が配置されている。そのほかの形状は共通のため、相互に端子が干渉することなくコネクタを装着できる。なお、USB 3.0対応コネクタの端子周辺部が青色なのは、USB 2.0対応コネクタとの区別のためだ。

周辺機器側標準コネクタ(Standard-B)の違い
USB 2.0用端子の部分は同一形状なので、USB 3.0用コネクタにUSB 2.0用ケーブルは接続可能。しかし、追加端子が干渉するため、USB 2.0用コネクタにUSB 3.0用ケーブルは接続できない。

周辺機器用マイクロ・コネクタ(Micro-B)の違い
モバイル・デバイス向けの小型コネクタ。標準コネクタと同様、USB 3.0用コネクタにUSB 2.0用ケーブルは接続できるが、その逆は不可。

 つまり、USB 2.0対応の周辺機器を使う場合はUSB 2.0用ケーブルを、USB 3.0対応の周辺機器にはUSB 3.0用ケーブルを用意すべきである。

PC USBケーブル 周辺機器 接続可否 利用できる規格/モード
USB 2.0 USB 2.0 USB 2.0 USB 2.0 High-speed、Full-speed、Low-speed
USB 3.0 USB 2.0 High-speed、Full-speed、Low-speed
USB 3.0 USB 2.0 ×
USB 3.0 USB 2.0 High-speed、Full-speed、Low-speed
USB 3.0 USB 2.0 USB 2.0 USB 2.0 High-speed、Full-speed、Low-speed
USB 3.0 USB 2.0 High-speed、Full-speed、Low-speed
USB 3.0 USB 2.0 ×
USB 3.0 USB 3.0 SuperSpeed
PC/ケーブル/周辺機器の対応規格による接続可否
前述の標準コネクタを対象に、PCとUSBケーブル、周辺機器がどの規格に対応していると相互に接続できるかを表している。

通信方式やプロトコルの改良で低消費電力化

 USB 3.0では消費電力の低減も図られている。1つは通信方式の変更だ。USB 2.0ではブロードキャスト方式が採用されており、本来の通信先とは無関係な周辺機器やポート、ハブにもPCからのパケットが到達する。その応答により本来は不要な電力が消費されることが問題視されていた。USB 3.0では必要な相手にのみ通信を限定するユニキャストに変更して、無駄な応答による電力消費を減らしている。

 同様の理由から、「ポーリング」の常時実行も廃止された。ポーリングとは、PCから各周辺機器へ何らかの処理要求がないか順次問い合わせる動作のことで、USB 2.0では常態的に実行される。USB 3.0では、ポーリングの不要な周辺機器にはポーリングを止められるようにプロトコルを改良することで、電力消費を減らしている。

周辺機器の電源ケーブル排除も推進

 USBケーブル経由で供給されるバス・パワー電流は、USB 2.0の1ポートあたり最大500mAから最大900mAに高められた。これにより、消費電力が比較的大きい周辺機器でも、USB 3.0ならバス・パワーで駆動できる可能性が高まり、電源ケーブルのない扱いやすい製品の増加が期待される。

対応製品は2010年から

 ソフトウェア側のUSB 3.0対応としては、MicrosoftがWindows VistaとWindows 7におけるUSB 3.0のサポートを表明している。ただしWindows 7 RTMではUSB 3.0対応ドライバは同梱されず、その後の更新プログラムやService Packなどで提供予定とのことだ。それまでは、USB 3.0対応チップや周辺機器のベンダが提供するドライバ(製品に同梱されるドライバ)を用いることになる。またMicrosoftは、Windows XPに対してUSB 3.0対応ドライバをリリースする予定はないという(USB 3.0用対応チップのベンダであるNECエレクトロニクスは、Windows XP向けUSB 3.0ドライバを提供する予定とのこと)。

 USB 3.0対応製品は2010年から市販される予定だ。またIntelによれば、USB 2.0と同様に、PCのチップセットにUSB 3.0のホスト・コントローラ機能を組み込むとしており、新しいPCでは追加コストなしでUSB 3.0が利用可能になる予定だ。

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