日立とセゾン情報システムズ、「仮想化でも物理サーバと変わらない」VirtageとHULFTで動作検証

» 2008年12月25日 00時00分 公開
[三木泉,@IT]

 日立製作所は12月19日、日立のブレードサーバ「BladeSymphony」で提供している仮想化機構「Virtage」(バタージュ)上でのセゾン情報システムズのファイル転送ソフト「HULFT」の動作検証と性能検証を実施し、サーバ仮想化上で物理サーバとほぼ同等のパフォーマンスが得られたことを発表した。日立はVirtage上でのソフトウェアの動作確認を進めているが、性能面も含めた本格的な検証は今回が初めて。日立は2009年1月よりVirtage上での動作保証ソフトウェアのリストを提供開始する。

 Virtageは「BladeSymphony」でオプション提供されているサーバ仮想化技術。特に基幹業務での普及を目指している。一方、HULFTも基幹業務で利用されているファイル転送ソフト。両社のターゲットが一致していることから、今回の検証に至ったという。すでにVirtageとHULFTの組み合わせを利用している企業があり、両社は実質的に共同でサポートを提供しているが、今回の検証を機に、両社の製品が安心して使えることをアピールしていきたいという。

 検証ではVirtage上でLinuxとWindows Server 2003の論理区画をつくり、「HULFT 7」とファイル転送中継製品の「HULFT HUB」を稼働、ファイル転送を行った。Linuxの論理区画上で動くHULFT HUBについては日立のクラスタソフト「HAモニタ」でホットスタンバイ構成も検証した。

今回の検証構成

 例えば単一のバイナリファイルの転送速度が、物理サーバでは47.9Mbytes/秒のところ、Virtage上では48.6Mbytes/秒と、ほとんど遜色のない結果が得られたという。転送の多重性を増した際のスループットとCPU使用率の推移についても、物理環境と仮想環境での違いはほとんど見られなかったという。

 Virtageで便利なのは切り分けのしやすさ。Virtageは一般的な仮想化ソフトウェアと異なり、物理サーバのCPUやメモリを論理区画に分けてタイムスライスで共用する仕組みになっている。「ソフトウェアスタックから見ると仮想化していない環境と同じに見えるため、ISVはサポート解析を物理サーバ上と同じようにできる」と、日立 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 第三部 担当部長 芳野泰成氏は説明する。HAモニタのようなミドルウェアも修正や運用上の工夫をすることなくVirtage上で稼働できる。

 実際に今回の検証でも、一度解析を必要とする場面があったが、Virtageから物理サーバの状態にすぐに戻すことができ、Virtage上で稼働していたHULFTを再インストールなしに動かして動作確認ができたため、原因究明が容易だったという。

 芳野氏は、物理サーバと仮想サーバでアプリケーションのパフォーマンスにほとんど差が出ないため、サーバ機のサイジングも楽だと話す。

 セゾン情報システムズ HULFT開発センター 商品開発一部 部長 高屋敷国弘氏は、「アプリケーションベンダとしては、ハードウェアや仮想化のベンダと協力していかないとお客様に迷惑をかける。2008年10月に提供開始したHULFT 7は7は証跡管理など基幹業務での利用を支援する機能を強化していることもあり、この組み合わせだとここまで保証できているということをアピールしたかった」と語っている。

 日立はVirtageを2007年度に約300ライセンス(ソケットライセンス)販売。2008年度は2倍以上を目指している。「以前は評価目的での購入が多かったが、最近は最初から本番利用のための購入が増えている」(芳野氏)。UNIXのLPARと同じように使えるため、UNIXからLinuxへの移行に活用するユーザー企業もいるという。日立はほかのソフトウェアベンダとも動作保証での協業を進めており、2009年1月に、同社のVirtage関連Webページに、Virtage上での動作保証ソフトウェアリストを掲載開始する。

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