前回まで、シスコシステムズのリモートラボを実際に利用しながら構成例などを解説してきた。しかし、現在リモートラボはサービスの提供を中止しているため、今回からは、リモートラボを前提とせずにシスコのルータ/スイッチの概念や構成例を紹介していきたい。そのため、今回の連載タイトルからは「eラーニングで」という文字はなくなった。しかし、前回までの知識を前提とし、その続きということで連載回数は「第4回」とした。連載を再開するにたあたり、この点だけ了承していただきたい。
それでは、今回はルーティングプロトコルの基本を押さえ、その知識を基にその構成に挑戦する。まず今回の目標となる次の問題を考えてほしい。
Q1) 次のうち、ディスタンスベクター型に該当するルーティングプロトコルはどれですか。
Q2) 次のうち、RIPを構成するコマンドはどれですか。
ルーティングとは、論理アドレスを基にパケットの転送先を決定する処理のことである。このルーティングを行うネットワークデバイスが、ルータである。まずは、TCP/IPを利用した場合のルーティングの手順について解説しよう。なお、「Master of IP Network」フォーラムに関連する入門記事などがあるので、時間がある場合はぜひとも参考にしてほしい(本連載の最後に参考ページを紹介している)。
パケットを受け取ったルータは、まずヘッダ内の送信先アドレスを確認する。ここで使用するのは、論理アドレス(IPアドレス)である。論理アドレスは、ネットワークを表す部分(ネットワーク番号)と、ネットワーク内のデバイスを表す部分(ホスト番号)に分かれている。ルータは、ネットワーク番号を基に、次にパケットの転送先を決定する。このときに使用する情報が、ルーティングテーブルである。ルーティングテーブルには、ネットワーク番号と、そのネットワークへの行き方が格納されている。この行き先情報を基に、パケットを転送しているのである(図1)。
ルーティングを行うためには、ルーティングテーブルの構成が必要になる。ルーティングテーブルを構成する方法には、大きく分けてスタティックルーティング(静的ルーティング)とダイナミックルーティング(動的ルーティング)の2種類の方法がある。
静的ルーティングは、管理者が直接ルーティングテーブルを作成する。グローバルコンフィグモードからip routeコマンドを使用すれば、Ciscoルータでも静的ルーティングを構成できる。具体的なコマンドは、次のとおりである。
Router(config)# ip route ネットワーク番号 サブネットマスク 転送先IPアドレス
静的ルーティングは、通常小規模なネットワークで、そのネットワークへの行き方が1つしかない場合に構成する。大規模なネットワークや、ネットワークに障害が発生したときにう回させる場合には向いていない。
動的ルーティングは、ルータ同士が経路情報をやり取りすることによって、ルーティングテーブルを自動的に作成する。この経路情報をやり取りするときに使用するプロトコルが、ルーティングプロトコルである。
ルーティングプロトコルは、大きくエクステリアゲートウェイプロトコル(EGP)と、インテリアゲートウェイプロトコル(IGP)とがある。
エクステリアゲートウェイプロトコルとは、自律システム(AS)間で使用するルーティングプロトコルのことである。エクステリアゲートウェイプロトコルの代表例がBGPである。インテリアゲートウェイプロトコルとは、自律システム内で使用するルーティングプロトコルのことである。ここでいう自律システムとは、共通の管理下にあるネットワークのことで、具体的には1つのインターネットサービスプロバイダ(ISP)や、1つの大規模企業、大学、研究機関で構成されているネットワークである。インターネットの世界はいくつかの自律システムに分割されていて、それぞれに自律システム番号が割り当てられている。
例えば、「Aという自律システムからBという自律システムに到達するには、Aという自律システムとBという自律システムを通過する」というように、ネットワークの行き方を自律システム単位で考えているルーティングプロトコルが、エクステリアゲートウェイプロトコルである。これに対して、「AというネットワークからBというネットワークに到達するには、Cというルータを通過する」というように、自律システム内できめ細かにルートを考えるのが、インテリアゲートウェイプロトコルである。
インテリアゲートウェイプロトコルは、ディスタンスベクター型、リンクステート型、ハイブリッド型に分類される。これらの違いは、ルート選択アルゴリズムである。このうち、CCNAの試験範囲となるのが、ディスタンスベクター型である。
参考までに解説すると、リンクステート型は、各ルータが自身のインターフェイスの状態を通知し、完全なネットワークトポロジを再現する方式である。リンクステート型のルーティングプロトコルの代表例は、OSPFである。ハイブリッド型は両者の中間を取ったもので、EIGRPがこれに該当する。
さて、ディスタンスベクター型は、距離と方向に着目する方式である。仕組みは、以下の図2のとおりである。
ルータは自分が知っているネットワーク番号とメトリック、すなわち距離を丸ごとブロードキャスト、またはマルチキャストする。自分が知らないネットワーク番号がブロードキャストされたら、ルーティングテーブルに追加する。同一ネットワーク番号が複数のルータからブロードキャストされた場合は、最短距離をブロードキャスト/マルチキャストしたルータにパケットを転送する、という方式である。ディスタンスベクター型に該当するルーティングプロトコルの代表例は、RIPとIGRPである。
では、実際にディスタンスベクター型ルーティングプロトコルを構成してみよう。今回は、RIPの構成方法について解説する。(1)まずは、IPアドレスを構成し、インターフェイスを有効にする。(2)次に、ルータでルーティングプロトコルを有効にし、ネットワーク全体のルーティングができるようにする、という手順である。
RIPとは、RFCで定められた業界標準のルーティングプロトコルで、メトリックにホップカウント、すなわち通過するルータの数を使用する。構成例は、次のとおりである。
ルーティングプロトコルを構成するときは、まずルータコンフィグモードに移行する。ルータコンフィグモードに移行するには、ルーティングプロトコルを指定して、routerコマンドを入力する。例えば、RIPを構成する場合は、「router rip」となる。
次に、そのルーティングプロトコルを有効にするネットワークを指定する。コマンドは、「network ネットワーク番号」である。
ルーティングプロトコルを構成したら、正しく構成できたことを確認する。コマンドは、特権モードから「show ip protocols」である。以下に、実行例を示す。
この表示例は、すべてのルータの構成を終えた状態である。「10.0.0.0」のネットワークでRIPが有効になっており、「10.140.1.1」と「10.140.2.2」のIPアドレスを持つルータからルート情報を受け取っていることを表している。
最後に、ルーティングテーブルを表示し、ルータが正しくネットワーク番号を学習していることを確認する。コマンドは、特権モードから「show ip route」である。
この表示例も、すべてのルータの構成を終えた状態である。「10.1.1.0」「10.2.2.0」「10.3.3.0」「10.140.1.0」「10.140.2.0」の5つのルートが存在する(いずれも、24ビットサブネットマスク)。各エントリに存在する値の意味は、次のとおりである。
R 10.2.2.0 [120/1] via 10.140.1.1, 00:00:24, Serial1
このコマンドの意味は、次のとおりとなる。
ここで、アドミニストレイティブディスタンスについて簡単に触れておく。アドミニストレイティブディスタンスとは、ルートの学習方法に対する優先順位を表す値のことである。1台のルータに複数のルーティングプロトコルを動作させることが可能なので、例えば同一ルートをRIPとIGRPが覚えるといったことが発生し得る。このため、ルートの学習方法に対する優先順位を付ける必要がある。この優先順位を表す値が、アドミニストレイティブディスタンスである。例えば、RIPは120、IGRPは100である。アドミニストレイティブディスタンスは値の小さいものを優先するため、RIPとIGRPが同一ルートを学習した場合、IGRPが学習したルートを使用する。
Q1: AとB
Q2: D
Q1) 次のうち、CiscoルータをISDN網にS/T点接続する際に、必ず必要となるものはどれですか。
Q2) 次のうち、レガシーDDRを構成する際に必要でない手順はどれですか。
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