本記事では、将来的な移行を前提にIPv6環境を構築する方法を紹介する。移行の際のコアとなるIPv6環境が社内にあれば、徐々に移行を進めることもできるし、OSやサービスの動作テストも可能だ。まずは小規模なIPv6環境を用意しよう。
IPv6に関するさまざまな規約がリリースされ始めてから、数年がたちました。新しいルータやOSではすでにIPv6対応をうたったものも増え、古いルータでもファームウェアをバージョンアップすることでIPv6対応にできるなど、環境は整いつつあります。
しかし、ユーザーの伸びはいまひとつのようです。IPv6でのみ受けられる「これだ!」というサービスがないのが1つの理由のように思えますが、実際はIPマスカレード(注)で利用者が満足しているのではないかともいわれています。
注:RFC的には「NAPT」といいます。
とはいえ、IP接続を実施する組織は増え続けています。これは、法人や団体だけではなく、個人レベルにもいえることです(注)。利用者がいま以上に増えたら、IPv4の範囲ではアドレスが不足するのは目に見えて明らかです。
注:現に、筆者も29bitマスク(IPアドレス8個)のネットワークを占有しています。
本稿では、(将来的な)IPv4からIPv6への移行という観点から、
という流れで「どう使うか」について説明します。もちろん、IPv6を使えるようになったら実際につなげないと面白くないので、その部分についても後編で説明します。
IPv6を使う方法をいくつか紹介しますが、いずれもIPv4パケットによってIPv6パケットをカプセル化するトンネルによる接続です。もちろん、トンネルを使わずIPv6ネイティブで接続する方法もあります(注)が、「手持ちの環境をIPv6 readyにする」という目的とは合致しない部分がありますので、今回はあえて紹介しません。
注:こちらの方が素直といえば素直です。
■6to4を使う
6to4はRFC 3056で制定された規格の通称であり、IPv4のアドレスを一定の規則に従ってIPv6のアドレス空間にマッピングします(編注)。
編注:6to4については、「IPv6導入虎の巻 第2回 IPv6で外部接続しよう!」も参照。
IPv4互換アドレスと似たようなものと解釈される方もいるかもしれませんが、IPv4互換アドレスと決定的に異なるのは、6to4で生成されるアドレスはIPv6アドレスのプレフィックスのうち48bitだけであるところです。IPv6は、プレフィックス64bit、サフィックス64bitのトータル128bitで表現します。6to4では、このプレフィックス64bitのうち48bitまでしか決定されません。ということは……、
16bit長のアドレス空間が1個のIPv4アドレスから生成される
ということになります。
もちろん、トンネル接続が前提なので、6to4に対応したゲートウェイが必要です。幸いにも、6to4に対応したゲートウェイの一覧が、
に掲載されている(編注)ので、あまり心配ないでしょう。
編注:Internet Explorerでは閲覧できない。
■ISPのIPv6接続サービスを使う
最近は、ISPが試験サービスや追加サービスという形で、トンネル接続のためのゲートウェイを準備しています。このサービスは、APNICからのアドレス割り当てを実施し、そのアドレスに対するトンネル接続を提供するという本格的なものです。
これらのサービスを用いた外部接続の例は後編で説明する予定です。
LinuxでIPv6を使うために準備しなければならないものは、2つあります。
まずは、カーネルをIPv6 readyにしてみましょう。
■LinuxのIPv6対応
LinuxをIPv6に対応させる方法には、2種類のアプローチがあります。
サーバ/クライアントを問わず、ネットワークの末端ノードとしてLinuxマシンを使用する場合はどちらのアプローチでも構いません。IPv6アドレスを持ったコンピュータとしてのみ使用する場合は、単にカーネルの再構築だけでIPv6に対応させることが可能です。しかし、USAGIを使えば、例えばUSAGIカーネルを組み込んだコンピュータをIPv6対応のルータにできるなど、単なるエンドポイントに設置するコンピュータ以上のことが可能になります。
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