皆さんも、こんな経験が一度はありませんか。
原因はいくつか考えられると思いますが、少なくとも今回説明する「物事を構造化する」という考え方を押さえておけば、この手の失敗はかなり回避できるでしょう。なお、ここでいう「構造化された状態」とは、(1)全体を把握したうえで、その構成要素についても明らかになっている、(2)構成要素間の関係が分かりやすく整理されている、の2つの意味を含みます
●構造化とは何か
この「物事を構造化する」という概念は、一般的にあまりなじみがないかもしれませんが、ITエキスパートの皆さんならイメージしやすいと思います。例えばデータベースなら、(1)データベースの要件がきちんと定義されていて、エンティティやその構成要素が明確になっている、(2)エンティティ間の関係がER図((Entity Relation Diagram))などによって明確になっているといったところかと思います。あるいは、プログラムにおけるフローチャートをイメージしてもいいですね。
いずれにせよ、構造化には下記のような3つのメリットがあります。ITエキスパートは普段から「構造化」を活用している方が多いので、実感していただけると思います。
さて、ビジネスにおいて「構造化する」という思考技術は、2つの局面で役立ちます。1つは問題解決、もう1つはコミュニケーションの局面です。ここでいう問題解決とは、単に「トラブルを解消する」という意味ではなく、「課題を克服する」というものです。従って、「現状ではあまり問題はないが、もっと良くできるはずだ。どうしたらよいか」といった状況も問題解決に含めています。
問題解決の際は、最初に問題を取り巻く背景を構造的にとらえる必要があります。これができれば、そこから問題解決の大きなヒントが得られることになります。その構造を踏まえて文章の論理展開に落とし込むことによって、コミュニケーション、特に説得に効果を発揮します。状況を構造的に把握できないままの行動や主張は、効果や説得力がなくなり、誤解を生んで思いがけない“負の副産物”を生み出したりもします。容易に反論を招く結果にもなります。
特に、ITエキスパートのキャリアステップとして有力なコンサルタント職を目指すなら、ほかの人たちとは一味違う状況分析・提案・説得をできるかどうかが鍵になります。そこで次のセクションでは、コンサルタントの仕事を例に「事象の構造化」を解説します。
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