魅力的な仕事を手に入れるにはキャリアビジョンづくりから始めよう(4)(1/2 ページ)

キャリアとは、キャリアビジョンとは何だろうか。それを知り、己のものとするとこで、どんなメリットがあり、どう役立つのだろうか。そして、それを転職や自分の転機にどう生かせるのか。それを解説する。

» 2006年06月20日 00時00分 公開
[田中春秋, 関口みゆき特定非営利活動法人 キャリアカウンセリング協会]

 連載第1回「キャリアとキャリアビジョンを考える」では、そもそもキャリアやキャリアビジョンとは何なのかを、第2回「自分の価値観は何だったのか」では過去の経験から自分の価値観を探り、活用する方法を、第3回「仕事を通して自己価値を生み出そう」では自分の役割を通して自己価値を生み出す方法を紹介しました。今回は、自分にとって魅力的な仕事を実際に手に入れるにはどうしたらいいのかを考えたいと思います。

企業はどのようにメンバーを集めるのか

 魅力的な仕事は、どうすれば手に入れることができるのでしょうか。どのWebサイトを見て、どの人材紹介会社に登録すればいいのでしょうか。インターネットで検索すれば見つかるのでしょうか。それとも、何かほかの方法があるのでしょうか。

 この問いの答えを考えるため、まず企業が新しい魅力的なITプロジェクトのメンバーを決めるときにどうしているのかを見ていきましょう。

1.プロジェクトマネージャの選抜

 プロジェクトの統括責任者は業務全体をいくつかのプロジェクトに分け、プロジェクトマネージャを選びます。当然ながら自分が信頼(信用)できる人をコアに据え、残りは直接は知らなくても、信頼する知人が推薦する人などを採用します。

 社内で人が足りれば社員だけから選抜するケースもありますが、統括責任者としてはどれだけの成果を挙げるかが自分自身への評価や信頼にかかわってきますから、業務委託先や信頼する人が率いるパートナー企業なども視野に入れ、最も成果を挙げると信じる陣を敷きます。


2.プロジェクトスタッフのリクルーティング

STEP1

  企業人事あるいは委託先の企業人事は、プロジェクトのスタッフをそれぞれの社内で選定します。基本的には、新プロジェクトで求められるスペックや実績・経験を満たしている社員のうち、現在の仕事から異動させやすい人が選ばれます。候補者が多い場合は能力的な基準に加え、このプロジェクトに意欲的な人を優先して採用します。

STEP2

  ただし、プロジェクト統括責任者やプロジェクトマネージャから「どうしても」と指名があった場合、ほかのプロジェクトに属している人を調整して新プロジェクトに異動させることもあります。プロジェクトマネージャは、信頼度や(システム開発の)能力だけでなく、チーム全体の組み合わせも考え、自分(が苦手なこと)をサポートしてくれるスタッフや、チーム全体の役に立つスタッフも優先的に集めます。

STEP3

  時間的なゆとりがあれば社内公募を行い、プロジェクトマネージャと人事とで異動者を決めます。採用の基準はSTEP1・2と同様です。

STEP4

  社内で探しても必要なスタッフが充足しなかった場合、あるいはプロジェクトの内容や会社の方針で外部中心にチーム編成をする場合などは、社外に声を掛けます。

 基本はプロジェクトマネージャが中心となり、知人などでやれそうな人に声を掛けます。友達の友達はまた友達というように、信頼というネットワークで「できそうな人」で「いま動ける人」を探し、紹介者の信頼度によって採用を決定します。プロジェクトマネージャの選抜時と同様、信頼できる人が率いるパートナー企業への委託なども視野に入れます。通常は業務委託契約をプロジェクトの部署が行うので、実質的な決定権はプロジェクトマネージャが持っているケースが大半です。

STEP5

  直接信頼できるスタッフ経由で探せなかった場合、信頼の基準を下げ、過去信頼できた会社や実績がある会社への委託を考えます。現在の状況は分からないし、信頼する人の紹介ではないけれど、まったく知らない人や会社を一から探して評価するよりはましでしょう。 このステップまでは、求人費用・採用費用はほとんど掛かりません。

STEP6

  ここから、人材紹介会社を利用します。方法はさまざまですが、「知らない人(会社)を雇う」「採用コストが掛かる」という点で、STEP5までと大きな差があります。

パターンA:あっせん・派遣・業務委託

 あっせん・派遣・業務委託は、スタッフのクオリティをある程度人材紹介会社が選定してくれます。むろん先方も商売なので、どこまで信じるかという問題はあるものの、大きな問題があった場合は責任を問うことができます。

 採用コストは高いのですが、選ばれた人が来るため、面接などの労務は求人広告の利用に比べはるかに楽です。募集数が少なければ求人広告よりも安価になります。

パターンB:求人広告

 求人企業からすれば、これはギャンブルのようなものです。必要な人数が集まらないかもしれないし、逆に応募が多すぎて、選考にものすごい手間がかかるかもしれません。そのうえ、短時間で選考しなければならず、その責任はすべて自分にあります。媒体コストは高く、採用できた人数が多ければ1人当たりのコストは安くなりますが、採用スペックの人が集まらなければとんでもなく高くついてしまいます。

 面接では、「実績・経験(書類や面接で確認)」「能力(確認したいが、現実には応募者の言葉を信じるしかない。基本能力は過去のトラブルをどう乗り越えたかなど、面接の中で判断できるが……)」「この仕事への意欲(書類の書き方、面接でのアピール)」、そして「性格・人柄(チームやマネージャのスタイルに合うか、ストレスに耐えられそうか、ミスは少なそうか、向上心は強いかなど)」から採用するかどうかを判断します。


人選の手段
選択の視点
社内  人事 スペック、異動させやすい、能力、実績・経験、意欲
担当部門 信頼度、能力、自分をサポートしてくれる、チームの役に立つ
 
社外  いまの信頼ネットワーク
(口コミ)
できそうな人・いま動ける人(紹介者の信頼度)
 
過去の実績 過去信頼のあった会社(現在は不明)、実績があった会社
 
人材紹介企業利用など
(あっせん・派遣・
業務委託、求人広告)
実績・経験、能力、意欲、性格・人柄 ほか
      図1 人選の手段と選択の視点

魅力的な仕事を手に入れるツール

 さて、こうやって見てみると、採用側は、

社内→社外の口コミ→社外の過去のネットワーク→人材紹介会社

の順番で必要な人を探すことになります。ある段階で充足してしまうと、次の段階には流れません。魅力的な仕事もこの順番に多いはずです。

 インターネットや人材紹介会社も有効かもしれません。しかし、魅力的な仕事を手に入れるそれよりもずっと有効な方法が「口コミ」ネットワーク、自分を推薦してもらえる「信頼ネットワーク」に入ることだということなのです。すなわちいまの仕事、いまの上司・先輩こそが、あなたの最高の「魅力的な仕事を手に入れる」ためのツールということになります。

 一方、選択の視点を見てみると、それぞれの段階で同じようなことが求められています。「信頼(信用)」「能力(スペック)」「自分をサポートしてくれる」「チームの役に立つ」「意欲的」「いま動ける(異動させられる)」「実績・経験」「性格・人柄」などです。

 中でも、採用側から見てほかの要素に比べ、最も影響が大きな視点は「信頼」です。

 人を一瞬で判断するのは非常に難しいし、自信もない。だからこそ、自分や自分が知っている人たちの信頼ネットワークに入る人を優先したくなるのです。

 しかし、ただ漫然と仕事をしていても、「推薦してもいい」と思われるようなネットワークには入れません。

 どうすれば信頼を得られるのか、「推薦しよう」と思われるのか。ここを考えてみましょう。

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