LPRプロトコルと標準TCP/IPポート・モニタの違いTech TIPS

Windows OSでは、プリンタとの通信プロトコルとして、LPR以外に、標準TCP/IPポート・モニタが利用できる。これはLPRプロトコルを拡張したもので、詳細なプリンタ状態の確認や効率的なデータ転送が可能になっている。

» 2006年10月28日 05時00分 公開
[打越浩幸デジタルアドバンテージ]
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連載目次

対象OS:Windows 2000/Windows XP/Windows Server 2003


解説

 TIPS「LPR(LPD)プロトコルでプリンタを公開する」「LPRプロトコルでプリンタへ接続する」では、Windows OSにおけるLPRプロトコルを使ったプリンタの設定方法について述べた。Windows OSでサポートされている、プリンタとの接続プロトコルにはさまざまなものがあるが、一般的によく使われる「LPRプロトコル」のほかに、Windows OSでは「標準TCP/IPポート・モニタ」と呼ばれるポート・モニタが標準的に利用されている(「ポート・モニタ」とは、印刷データを送信するためのコンポーネントのこと)。本TIPSでは、この標準TCP/IPポート・モニタ(とLPRの違い)について解説する。

●標準TCP/IPポート・モニタとは?

 標準TCP/IPポート・モニタ(OSのコンポーネント名としては「Standard TCP/IP Port」という名称が利用されていることがある)は、LPRプロトコルに代わり、Windows 2000で導入された、ネットワーク・プリンタとの通信プロトコルである。LPRプロトコルに準じているが、その機能は拡張され、より詳細なエラー状態の通知などが行えるようになっている。

 プリンタのプロパティ設定画面で[ポート]タブを選択すると、そのプリンタが使用しているポートが一覧表示されるが、標準TCP/IPポートを利用している場合は、次のような画面が表示される。

標準TCP/IPポート・モニタの例 標準TCP/IPポート・モニタの例
Windows OSでは、プリンタに対するデータの送信先のことを「ポート」という。LPT:やCOM:といった物理的なポートのほか、ネットワーク経由ではLPRポートや標準TCP/IPポートなどが利用できる。これは標準TCP/IPポートの構成画面の例。
  (1)ポートの名称。
  (2)プリンタ名もしくはIPアドレス。
  (3)使用するデータの種類。標準TCP/IPポートで送信するデータは、通常は「Raw(生のデータ。バイナリ・データともいう)」モードとする。
  (4)LPRプロトコル・モードでは、テキスト・データかバイナリ・データかを区別できる。
  (5)通信時のあて先側ポート番号(サーバがリッスンしているポート番号)のデフォルト値。デフォルトでは9100番。LPR時には、LPRプロトコルのデフォルトである515になる。
  (6)LPRプロトコルでは、送信するデータのサイズ(バイト・カウント)を事前に送信する必要があるが、標準TCP/IPポートでは不要。
  (7)SNMPによる印刷状況などの詳細なモニタを有効にするには、これをオンにする。

 標準TCP/IPポート・モニタはLPRプロトコルの拡張であり、両者は似てはいるが、相互接続性はない。Windows OSや、主にパソコン向けのプリント・サーバでは標準TCP/IPポート・モニタで通信するのがよいが、UNIXやLinuxベースのコンピュータへ印刷データを送信する場合は、LPRプロトコルしか利用できないことも多い。

 この2種類のプロトコルの違いをまとめると次のようになる。

名称 LPR(LPD)プロトコル 標準TCP/IPポート・モニタ
標準規格 RFC1179で定義されている RFCで定義されておらず、Windows OS独自
あて先ポート番号 TCPの515番 デフォルトでは9100番。LPRモードではTCPの515番
送信元ポート番号 RFCでは721〜731番に限定。ただしこれでは同時に最大10コネクションしか利用できないので、この制限を外している実装も多い 特に制約なし
ポートのタイムアウト 4分 タイムアウトなし(スプール速度が遅くてもタイムアウトしない)
エラーの通知 LPRプロトコル中での簡単なエラー通知のみ SNMPを利用した詳細なプリンタの状態などの確認が可能
送信データ テキスト・モードかバイナリ・モードの2種類が選択可能 バイナリ・モードのみ
送信データ・サイズ データ送信時に、先にデータ・サイズを送信する必要があり、そのためにスプール・ファイルを2度スキャンする必要がある データ・サイズは送信しないので、1パスで送信可能
LPRと標準TCP/IPポートの違い

 通常は、特に理由がない限り、Windows OS同士や(標準TCP/IPポートをサポートした)プリント・サーバへの印刷には、LPRではなく、標準TCP/IPポートを利用するほうがよいだろう。なお、バイナリ・モードとテキスト・モードの違いについては、TIPS「lprコマンドでバイナリ・ファイルを印刷する」を参照していただきたい。

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