第1回 SharePoint Server 2007の概要SharePoint Server 2007によるポータルサイト構築(3/5 ページ)

» 2007年07月23日 00時00分 公開
[黒石高広株式会社アークウェイ]

Microsoft Office SharePoint Server 2007とは?

 すでに説明したとおり、MOSS(Microsoft Office SharePoint Server 2007)は、WSSとは違い有償のサーバ製品である。WSSと同様、MOSSを利用するにはWindows Server 2003、IIS、ASP.NET、SQL Serverが必要である。評価版は下記リンクからダウンロードすることができる。

 MOSSは、WSS上で動作するアプリケーションという位置付けの製品である。WSSを基盤の技術として利用しているので、WSSの全機能が利用でき、さらにMOSSの拡張機能を利用できるという特徴を持っている。

MOSSの論理アーキテクチャ
MOSSは、WSSを基盤技術として利用しながら、その上で各種のアプリケーションを提供する。WSSで提供される機能をそのまま利用でき、さらにMOSSで追加されるアプリケーションが使えるようになる。

 MOSSの特徴は、主に共有サービスの機能にある。共有サービスとは、WSS上のすべてのサイトから同じものを共有し、利用できる機能のことである。MOSSは以下のような特徴的な機能を備えている。

■プロファイル機能
 Webサイト上に表示されるユーザーの個人情報を管理する機能。WSSのプロファイル機能と違い、ユーザー・プロファイル情報を拡張して任意の属性を追加したり、Active DirectoryやそのほかのLDAPディレクトリ・サービス上のユーザー情報とMOSS上のユーザー情報とを同期させたりできる。

■個人用サイト
 個人用のWebサイトを開設し、そのWebサイト内では、各ユーザーがサイト管理者として自由に子供のサイトを作成できる機能。MOSSの標準機能で個人用のブログ・サイトを開設できるほか、プロジェクト単位でチーム・メンバーの社内SNS(Social Network Service)なども構築できる。

MOSSで構築した個人用サイトの例
MOSSの標準機能を利用して、ユーザーの個人用サイトを構築できる。画面はMOSSで構築した個人サイトの例。

■エンタープライズ検索機能
 外部のファイル・サーバやExchangeサーバ上のパブリック・フォルダを検索できる機能。標準で検索対象となるMS Office文書(Word、Excel、PowerPoint、Visio)やHTML文書以外にも、PDF(Portable Document Format)や一太郎などの文書のIFilterコンポーネント(Indexing Service用の拡張コンポーネント)を追加インストールすることで、これらのファイルを検索対象に含めることができる。このように外部リソース(ファイル・サーバやExchangeパブリック・フォルダ)を検索対象として追加できるのはMOSSだけの機能である。WSSの検索対象は、自Webサイト内のリソースだけに限定される。

検索エンジン機能
自Webサイトはもちろん、MOSSの検索エンジン機能では、外部のファイル・サーバやExchangeサーバ上のパブリック・フォルダも検索対象にできる。Word、Excel、PowerPoint、VisioといったMS Office文書、HTML文書に加え、PDFや一太郎の文書ファイルなども検索可能だ。

ビジネス・インテリジェンス機能
 Excelスプレッドシート内のデータを集計してWebサイト上にグラフ表示したり、サイト利用状況のレポートを表示したりする機能。従来版のSharePoint Serverでも、ExcelファイルをWebブラウザで表示すること自体は可能だったが、これにOffice Webコンポーネントを利用するしか方法がなかったため、これを表示するクライアント側には、Officeのクライアント・ライセンスが必要だった。これに対しMOSSでは、新たに追加されたExcel Webサービスを利用することで、Excelファイルを一般的なHTML形式へ変換し、クライアント側では、Webブラウザさえあれば誰でも表示できるようになった。

■ビジネス・プロセス統合機能
 ビジネス・データ・カタログ機能(BDC:Business Data Catalog)を利用し、Webサービスなどとして公開されているバックエンド・システムのデータをポータル・サイトに一覧表示することが可能である。また、シングル・サインオン(SSO:Single SignOn)機能を利用し、ビジネス・データ・カタログ機能でバックエンド・システムに接続する際の認証情報として、ポータル・サイト上にサインインしているユーザーの認証情報を使うことも可能である。ほかにも、InfoPathファイルを通常のHTMLとしてブラウザから参照するためのFormサービス機能などを提供する。

■エンタープライズWebコンテンツ管理機能
 ポータル・サイト上のWebページを複数の作業者で編集・更新する作業を支援する機能。これには、Webページを編集するためのチェックイン/チェックアウトや、作成したWebページをワークフローによって承認、展開する機能などが含まれる。これらは、Microsoft Content Management Server 2002の後継となる機能である。

WSSとMOSSの使い分け

 ここまででWSSとMOSSの概要について説明したが、それらをどのように使い分ければよいだろうか。大まかな指針としては、数十名規模の小さな部門内で情報共有を行うWebサイトを構築したい場合は無償のWSSを利用し、数百名以上の規模もしくは複数の部門にまたがって情報を共有したり、全社的に情報共有を行うためのWebサイトを構築したりする場合はMOSSを利用することになるだろう。またこれまで述べたとおり、WSSとMOSSには機能的な違いもあるので、MOSSでしか提供されない機能の利用が必須なら、小規模であってもMOSSを選択する必要がある。具体的には、Webサイトだけでなく、ほかのファイル・サーバも検索対象に含めてポータル・サイトから検索したい場合や、ポータル・サイト上のプロファイル情報とActive Directory上のプロファイル情報を同期したい場合などだ。SharePointの導入を検討する場合には、こうしたユーザー要件を整理して、WSSとMOSSのどちらを使うべきか検討する必要がある。

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