あるきっかけで生まれ変わったASPサービス担当者ITエンジニアのためのモチベーション診断(1)(1/2 ページ)

ITエンジニアのモチベーションを考える連載。第1回は、ITエンジニアが抱えるモチベーションの問題を事例を元に紹介。第2〜3回は、モチベーション診断ツールを掲載する。読者のモチベータ(やる気の元)が何かを明らかにする!

» 2008年05月16日 00時00分 公開
[荒井亜子@IT]

気合だけではやる気は出ない!

 ITエンジニアの3K(きつい、帰れない、給料が低い)、上司とそりが合わない、やりたい仕事ができないなど、仕事における悩みは、少なからず誰しも持ち合わせているのではないか。こうした不満な状況でも、目の前の責務をこなしていかなければならないのが、大抵の人にとって現実だろう。では、ITエンジニアは自分の仕事に対するモチベーションをどう維持すればよいのだろうか。

 今回は、モチベーションという側面からITエンジニアの悩みを考えたい。本連載の目的は、読者の皆さんに、自分のモチベーションをどのようにコントロールすればいいか、ヒントを提示することである。また、連載第2?3回では、自分や部下のモチベーションを客観的に測るツールを利用し、浮かび上がった課題に対し解決策を見つけてもらうという狙いがある。

 連載第1回では、多くのITエンジニアに研修を行っている教育ベンダ、グローバル ナレッジ ネットワークに、いまITエンジニアがモチベーションでどんな悩みを持ち、それがどうすれば改善されていくのか話を聞いた。

企業がモチベーション研修に注目する理由

01 グローバル ナレッジ ネットワーク ソリューション部 ビジネススキルグループ プロダクトマネージャー 高橋俊樹氏

 グローバル ナレッジ ネットワークでは、「モチベーションUP研修」を実施している。同社 ソリューション部 ビジネススキルグループ プロダクトマネージャー 高橋俊樹氏によると、この1?2年くらいの間で企業のモチベーション管理に対する意識が変わり、モチベーション研修の導入をする例が増えているとのこと。また、ビジネススキル研修の前に、モチベーション研修を希望する企業が多いという。受講者の層は、若手から管理職クラスまで幅広い。企業がモチベーション研修に意欲的な理由は何か。

 同社 ソリューション部 ビジネススキルグループ 人材教育コンサルタント 田中淳子氏は「IT業界に限ったことではないと思うが、日本全体で何をするにも時間が短くなっているのではないか。中でもIT業界は、プロジェクトのサイクルが短くなっており、じっくり考えて仕事をする余裕がない。また、次のプロジェクトとの間に準備期間がなく、立て続けにプロジェクトが組まれている状況だ。ITエンジニアが疲弊している感がある。主体的に取り組んでいた仕事でも、疲弊してくると追い立てられているような気持ちになったり、やらされ感が強くなる。結果的にモチベーションが上がらない原因につながるのではないか」と説明する。IT企業で、社員のモチベーションが課題となる原因の1つには、IT業界のスピードの速さからくる精神の疲弊があるのかもしれない。

モチベーションに悩むITエンジニア

02 グローバル ナレッジ ネットワーク ソリューション部 ビジネススキルグループ 人材教育コンサルタント 田中淳子氏

 モチベーションにおける悩みは、IT業界の構造的な問題からくる精神の疲弊だけではない。職種や仕事内容もモチベーションに大きく影響する。モチベーションの高低が出やすい仕事について田中氏に聞いた。「保守・運用の人は、一般的にモチベーションを上げにくいといわれている。保守・運用は、システムが動いて当たり前といわれ、止まったら怒られることが多い仕事。同じく、できて当たり前といわれてしまうのが、人事や経理などの間接部門の人たちだろう。変な制度を作ると怒られるが、『人事制度が良くなったね』とはあまりいわれない」。

 さらに高橋氏は「離職率の高い職種を見ても分かる。モチベーションの低さは離職率にもつながる」と述べる。トラブル対応など、ネガティブなフィードバックしかもらわないところは総じて低くなりやすく、高くなりづらい。

 逆に、モチベーションが高い職種について聞くと、開発が挙げられるとのこと。「開発業務は、途中でいろいろな苦難があったとしても、最後には“ありがとう”といわれやすいのではないか。“ありがとう”といわれるかいわれないかでモチベーションは大きく変わると思う」(田中氏)。ただし、開発でも汎用機や、COBOLなどレガシーな言語で開発している人は低くなりやすいという。

 そうした職種の人たちがモチベーションを上げるにはどうすればいいのだろう。

上がらないモチベーションを上げる方法

 モチベーションが上がりにくい職種の人たちがモチベーションを保つ方法について、田中氏は、使命感や何のために仕事をしているかを考えることが大切だと述べる。「以前あるセミナーでSI企業のトップの方が『日本はすべてITで動いている。ということは、開発ではなく、保守・運用の人たちがすべてを支えている。保守がうまくいかなくなったときにあらゆることが止まる。そういう基盤を支える人たちが楽しいと思えない社会は、そもそもよくない』といっていた」(田中氏)。

 われわれは日々どうしても、「このプログラムを仕上げなくては」「この書類を出さなくては」と目の前のタスクをこなすことにいっぱいいっぱいになってしまうかもしれないが、自分の仕事が何に役立っているのか立ち止まって考えられる人は、きっと現状のモチベーションレベルを跳ね上がるきっかけを持てるのだと思う。「過去、そういう考えをしたある受講生で、『会社のみんなはCOBOLをレガシーというけど、僕は会社一のCOBOLエンジニアになる』と目の前のことに一生懸命取り組んだ人がいた」(田中氏)。社会との接点を考えて自分の仕事に誇りが持てたら、モチベーションは上がるということだ。

 上記のCOBOLエンジニアのように、モチベーションは、何かに気付き、考え方を変えることでいかようにも変化するものなのかもしれない。その事例をもう1つ紹介したい。

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