Excelを例にパッケージの中をのぞいてみよう
SpreadsheetMLは、表計算ドキュメントを電子ファイルとして保存するためのOpen XMLです。SpreadsheetMLドキュメントのパッケージはブックパーツやワークシートパーツと、各パーツへの参照関係を定義したファイルなどから構成されます。ワークシートが1つのシンプルなExcelファイル「サンプル.xlsx(sample.xlsx)」を例に考えます。
図5 ExcelファイルのサンプルをOffice 2007で開いたところ
パッケージには次の5つのファイルが含まれます。
- 各パーツの種類を定義するファイル:/[Content_Types].xml
- パッケージからメインのパーツ(ブックパーツ)への参照情報のファイル:/_rels/.rels
- メインのパーツファイル(ブックパーツ):/xl/workbook.xml
- メインのパーツ(ブックパーツ)から各パーツ(ワークシートパーツ)への参照情報のファイル:/xl/_rels/workbook.xml.rels
- パーツファイル(ワークシートパーツ):/xl/worksheets/sheet1.xml
サンプルファイルのフォルダ構成は、以下のようになります。
図6 サンプルファイルのフォルダ構成
■ [Content_Types].xml
[Content_Types].xmlファイルでは、Excelファイルを構成する各パーツの種類を定義します。なお、ファイル名は括弧「[」で始まり、拡張子の前に閉じ括弧「]」があります。
[Content_Types].xml |
1 <?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="yes"?>
2 <Types xmlns="http://schemas.openxmlformats.org/package/2006/content
-types">
3 <Default Extension="rels" ContentType="application/vnd.openxmlform
ats-package.relationships+xml"/>
4 <Default Extension="xml" ContentType="application/xml"/>
5 <Override PartName="/xl/workbook.xml" ContentType="application/vnd
.openxmlformats-officedocument.spreadsheetml.sheet.main+xml"/>
6 <Override PartName="/xl/worksheets/sheet1.xml"
ContentType="application/vnd.openxmlformats-officedocument.sprea
dsheetml.worksheet+xml"/>
7 </Types> |
5行目でブックパーツについて、6行目でワークシートパーツについてそれぞれPartNameでパーツ名を、ContentTypeでパーツの種類を定義しています。
■ .rels
.relsファイルでは、パッケージからブックパーツへの参照情報を定義します。なお、ファイル名はドット「.」で始まります。
_rels/.rels |
1 <?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="yes"?>
2 <Relationships xmlns="http://schemas.openxmlformats.org/package/2006
/relationships">
3 <Relationship Id="rId1" Target="xl/workbook.xml"
Type="http://schemas.openxmlformats.org/officeDocument/2006/rela
tionships/officeDocument"/>
4 </Relationships> |
3行目のTarget属性で、パッケージからブックパーツworkbook.xmlへの参照を定義しています。
図7 パッケージからブックパーツworkbook.xmlへの参照
■ workbook.xml(ブックパーツ)
workbook.xmlファイルでは、ブックの定義を行います。ブックは1つまたは複数のワークシートを含み、グラフやオプションのパーツなど、さまざまな関連情報をまとめて管理します。
xl/workbook.xml |
1 <?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="yes"?>
2 <workbook
xmlns="http://schemas.openxmlformats.org/spreadsheetml/2006/main"
xmlns:r="http://schemas.openxmlformats.org/officeDocument/2006/re
lationships">
3 <sheets>
4 <sheet name="Sheet1" sheetId="1" r:id="rId1"/>
<!--ワークシートへの参照情報-->
5 </sheets>
6 </workbook> |
4行目でブックに含まれているワークシートへの参照を定義します。name属性でワークシートの名称Sheet1を定義し、id属性でワークシートパーツの保存先を参照しています。
■ workbook.xml.rels
workbook.xml.relsファイルでは、ブックパーツからワークシートパーツへの参照情報を定義します。
xl/_rels/workbook.xml.rels |
1 <?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="yes"?>
2 <Relationships xmlns="http://schemas.openxmlformats.org/package/2006
/relationships">
3 <Relationship Id="rId1" Target="worksheets/sheet1.xml"
Type="http://schemas.openxmlformats.org/officeDocument/2006/rela
tionships/worksheet"/>
4 </Relationships> |
3行目のId属性はブックパーツworkbook.xmlから参照されており、同じく3行目のTarget属性はワークシートパーツsheet1.xmlへの参照を定義しています。
図8 ブックパーツworkbook.xmlからワークシートパーツsheet1.xmlへの参照
■ sheet1.xml(ワークシートパーツ)
sheet1.xmlファイルでは、ワークシートの定義を行います。なお、ワークシートを複数定義するときは、ワークシートごとにsheet2.xml、sheet3.xmlというように保存します。ワークシートは行と列から構成されたセルの集まりで、データの入力や編集に使われます。セルにはテキスト、数値、日付、数式などを含むことができます。
xl/worksheets/sheet1.xml |
1 <?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="yes"?>
2 <worksheet
xmlns="http://schemas.openxmlformats.org/spreadsheetml/2006/mai
n">
3 <sheetData>
4 <row r="1"> <!--1行目-->
5 <c r="A1" t="inlineStr"> <!--(セルA1)1列目-->
6 <is>
7 <t>製品名</t>
8 </is>
9 </c>
10 <c r="B1"> <!--(セルB1)2列目-->
11 <v>12</v>
12 </c>
13 <c r="C1"> <!--(セルC1)3列目-->
14 <v>400</v>
15 </c>
16 </row>
17 </sheetData>
18 </worksheet> |
3〜17行目のsheetData要素でセルのテーブル定義をします。HTMLの<table>タグと同様です。
4 <row r="1"> <!--1行目-->
5 <c r="A1" t="inlineStr"> <!--(セルA1)1列目-->
:
:
9 </c> |
4行目row要素でテーブルの行を、r属性でワークシートの何行目かを指定します。5行目c要素で列を、r属性でセルを指定します。row要素とc要素はHTMLの
タグやタグ同様です。セルの指定は、A、B、C、……で1列、2列、3列、……を、1、2、3、……で1行、2行、3行、……を表します。上記サンプル5行目では1行1列目、すなわちA1のセルを指定しています。
6 <is>
7 <t>製品名</t>
8 </is> |
6行目is要素で文字列を子要素に持つことを定義し(※注意2)、7行目t要素でテキストを定義します。セルへ数値を表示する場合は、11行目のようにv要素で数値を定義します。
※注意2:Office2007を使って文字を入力すると、is要素は用いずに「共有文字列テーブル」という重複している文字列のデータをまとめて管理するフォーマットで保存される
後編はJavaでXMLのExcelデータを操作
簡単ですが、以上でOpen XMLについての紹介を終わります。後編では、Javaを使ってXMLのExcelデータを操作する方法を紹介しますので、どうぞお楽しみに。
著者プロフィール
Girier 陽子(ジリエ ヨウコ)
Office Open XML標準化作業に東芝のメンバーとして参加し、標準化組織Ecma nternationalの技術委員会「TC45」で活動。共著に「入門Office Open XML」(ソフトバンククリエイティブ)。
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