米ヴイエムウェアは、2〜3週間以内に同社のハイパーバイザ「VMware ESXi」を無償化する。7月初めに同社のCEOとなったポール・マリッツ(Paul Maritz)氏が7月22日(米国時間)、2008年度第2四半期業績発表に際して実施したカンファレンスコールで明らかにした。
VMware ESXiとは、ヴイエムウェアが2007年末に提供開始した軽量ハイパーバイザ。同社のあらゆる製品のベースとなっているハイパーバイザ「VMware ESX」から管理コンソール部分を除くことで、32Mbytesにサイズを縮小したものだ。2プロセッサ用のライセンスを、現在米ヴイエムウェアのWebサイトでは495ドルでオンライン販売している。多くのサーバベンダもVMware ESXiを自社のサーバに組み込んで販売している。
マリッツ氏はカンファレンスコールで、今後2〜3週間に登場するESXiの新バージョンの価格をゼロにすると話した。
「ESXiの恩恵を受けられる人はもっとたくさんいるはずだ。この技術を使う人が増えれば増えるほど、われわれにとって望ましい。この製品(ESXi)から多くの売り上げを手にしているわけではないし、VMware Infrastructureを売るための接点とすることができるからだ」(マリッツ氏)。
ヴイエムウェアの売り上げの大部分は、ハイパーバイザであるESXをベースとしながらも、仮想サーバを稼働したまま移動したり、仮想サーバのバックアップ作業を容易にしたりするための管理ツールを含んだ製品であるVMware Infrastructure 3(VI3)や関連ソリューションで占められている。ESXiは単体で販売されているものの、ESXは単体では売られておらず、すでにVMware Infrastructureの一部となっている。その意味では今回の無償化が劇的な変化をもたらすわけではない。しかし、例えばマイクロソフトが自社の仮想化ソフトウェア「Hyper-V」をほとんど無償でWindows Server 2008にバンドルし、VI3の価格の高さを攻撃していることへの有効な対応策になる。
マリッツ氏は、ヴイエムウェアがすでに第3段階の入り口に立っていると話した。第1段階はハイパーバイザの確立。第2段階は仮想インフラストラクチャの提供ベンダになったことで、ハイパーバイザの周りにVI3やVDI(デスクトップ仮想化製品)のような製品やソリューションを構築してきた。第3段階はこの仮想インフラストラクチャの用途とユーザーの飛躍的な拡大だという。すでにVI3では、中堅・中小企業向けの特別なパッケージを提供しており、今回のハイパーバイザ無償化は小規模ユーザー開拓における第2弾ということになる。
ヴイエムウェアは今後、次世代企業データセンター・ソリューション、デスクトップ仮想化、そしてクラウド・コンピューティングを3つの最重要分野ととらえ、事業拡大に取り組んでいくと説明した。
マイクロソフトに14年間在籍したマリッツ氏は、マイクロソフトについて次のように話した。
「私はマイクロソフトがとてつもない競合相手ではあるが、無敵な競合相手ではないと思っている。自分の経験から、(マイクロソフトに対抗する)競合企業がリードを獲得しており、革新と投資によりこのリードを保つことができ、顧客に提供する価値を向上し続ける限り、マイクロソフトですら追いつくのは難しい、と知っている。われわれは(マイクロソフト)をリードしている。マイクロソフトはHyper-Vと呼ばれるものを発表したが、これはわれわれでいえばESX、つまりハイパーバイザと同じレイヤのもので、まだ新しく、成熟するには時間が掛かる。そしてわれわれの顧客が金を払ってくださっているソフトウェア・スイートであるVI3のようなものを(マイクロソフトは)提供するに至っていない」
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