多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
転職活動における第一の関門は、書類選考です。どんなにスキルに自信があっても、面接での自己アピールが得意でも、書類選考を通過しない限り、あこがれの会社に入るチャンスはありません。
今回は、転職活動の途中で職務経歴書の書き方を変え、転職に成功したITエンジニアのエピソードを紹介します。その事例を通じ、職務経歴書の内容の重要性についてお話ししたいと思います。
山岸さん(仮名)は26歳のITエンジニア。私立大学政治経済学部を卒業後、従業員約3000人の大手システムインテグレータに入社。ネットワークの運用監視業務に携わっていました。
就職の動機は「ものづくりがしたい!」という熱い気持ち。しかしながら入社後に配属されたのは、希望とはまったく異なるネットワーク運用サービス部門だったのです。
もともと頑張り屋の山岸さん。入社してから4年間、仕事に対するモチベーションを落とさず頑張ってきた結果、クライアント企業からも高い評価を得てリーダー業務を任されるまでに成長していました。でも、やりたい仕事は4年たっても相変わらず「システム開発」。何度も上司に「開発部門へ異動したい」と訴えていたにもかかわらず、一向に希望がかなえられないため、とうとう転職を考えるようになったのです。
私が山岸さんに会ったのは、実際に転職活動をスタートして1カ月ほどたったころのことでした。開発エンジニアへのキャリアチェンジを目指して転職活動を進めているが、思った以上に、書類選考を通過できないというのです。複数の企業に書類を提出したのですが、いずれも「スキル不足」という理由で、面接には進めなかったというお話でした。
さっそく、山岸さんが準備していた職務経歴書を見せてもらいました。お話から想像していたとおり、それは開発エンジニアの職務経歴書とは程遠いものでした。
入社から4年間、同じ金融機関のネットワークの運用監視業務に携わっていたということもあり、A4用紙1枚の、非常にあっさりしたものでした。実務経験からは、妥当な職務経歴書だったと思います。
しかしながら、山岸さんにいろいろとインタビューしてみたところ、職務経歴書に書かれていない下記のような経験とスキルを見いだすことができました。いずれも、開発エンジニアに必要とされるものです。
開発系のエンジニア志望であれば、プログラミング経験と設計書などのドキュメント作成能力が、書類選考時のポイントとなります。特に20代半ばの若手である山岸さんにとっては、実務でなくとも大きなアピールポイントになるのです。しかし山岸さんは、「職務経歴書には実務で経験したことを書くものだ」と思っていたため、上記のような項目には思いが及ばなかったのです。
このことに気付いた山岸さんは、職務経歴書を修正し、再び複数のシステムインテグレータに応募。6社中、5社の書類選考を通過し、面接のオファーをもらうことができました。
面接では持ち前のコミュニケーション能力をフルに発揮し、3社から内定を獲得。その中から第一志望であった東証一部上場の企業を選び、山岸さんは開発エンジニアへのキャリアチェンジを実現させたのでした。
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