デスクトップ仮想化超えを目指すヴイエムウェアのクライアント戦略さまざまな端末で同一のデスクトップ環境を提供

» 2008年09月18日 00時00分 公開
[三木泉,@IT]

 米ヴイエムウェアが米国ラスベガスで開催しているVMworldで、CTOのスティーブン・ハロッド(Stephen Herrod)氏は、米国時間9月17日の同氏の基調講演のなかで、2009年中に投入するデスクトップ仮想化関連の新製品や新機能を紹介した。

米ヴイエムウェアCTO、スティーブン・ハロッド氏

 同社はサーバ上でデスクトップPCを稼働し、これをリモートデスクトッププロトコル経由で画面転送して使う仕組みの、いわゆるデスクトップ仮想化ソリューション「VMware Virtual Desktop Infrastructure」(VDI)を展開している。その一方で、ユーザー端末にインストールして使う仮想化ソフトウェアも複数提供してきた。2009年中には、この2つを結び付けることによって、管理されたデスクトップの適用対象を、PCをオフラインで使うことの多いパワーユーザーにも拡大する。新たなクライアント向け製品群として、ヴイエムウェアは「VMware View」を2009年中に提供開始する。

 同社のデスクトップ事業部門では、現在、ユーザーの使い勝手の向上、クライアント側の仮想化技術の活用、集中管理機能の提供の3つをテーマとして、VMware Viewの開発を進めているという。

 ユーザーの使い勝手の向上に関して、ヴイエムウェアは加Teradiciの技術をライセンスすると9月16日に発表した。同社は、VDIで使われている画面転送プロトコルRDPの代替となる「PC over IP」技術を持っている。PC over IPでは、ユーザー端末が強力なCPUやGPUを持たない場合でも、高速な3D画像表示や高精細動画の表示が可能という。ヴイエムウェアはこのPC over IPをユーザー端末上のハイパーバイザで動く仮想マシンとして実装する。

 第2番目のテーマとしてハロッド氏が説明した、クライアント側の仮想化技術の利用は、ヴイエムウェアのクライアント戦略において重要な意味を持つ。同社ではまず、さまざまなユーザー端末ハードウェアに対応した小型のハイパーバイザを開発、これによりハードウェアの違いを吸収する。その上でPC over IPプロトコルを仮想マシンとして動かす。そうすればサーバ側で稼働するデスクトップPCを、ユーザー側の端末が何であるかにかかわらず、同一の使い勝手で利用できる。

 ハイパーバイザの上でリモートデスクトッププロトコルを動かすことのもう1つの利点は、オフライン環境への移行が円滑に行えることにある。すなわち一部のパワーユーザーは、企業の社内ネットワーク上ではサーバ上で動くデスクトップOSをPC over IP経由で利用(既存のVDIと大まかには同一)。このユーザーがオフラインでのPC利用に移る際には、いま利用している自分の環境設定がなされた仮想マシンをバックグラウンドでダウンロードし(借り出すようなイメージ)、これが完了した時点でネットワークから切断するようなシナリオが描ける。このユーザーが社内ネットワークに戻った場合は逆に、自分の端末上で動いているデスクトップOSの仮想マシンを社内のサーバに「返却」し、再びPC over IP経由で利用し始めるといった感じだ。

マスターの仮想マシンにGoogle Chromeのアプリケーションストリーミング設定をドラッグ&ドロップで「インストール」するだけで、すべての仮想マシンに反映できる

 サーバ上あるいはユーザー端末上で動かす仮想マシンは、個別のユーザープロファイルやIPアドレス、MACアドレスを適用して大量に作成する必要がある。基調講演のデモでは、ヴイエムウェアがVMware View用に提供するデスクトップ仮想マシン作成ツール「VMware View Composer」により、各ユーザー用にカスタマイズされた25個のデスクトップ仮想マシンを約50秒で作成、この際に「LinkClone」という技術を用いて仮想マシン間の重複する部分を排除し、ディスクの消費量を大幅に節約する様子を紹介した。作成した仮想マシンは、すべて一括して瞬時にパッチ当てなどの更新が可能という。

 こうした仕組みによって、企業内のあらゆるユーザーに対応できるクライアント・ソリューションを提供していくという。

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