「話上手」なだけでは、面接には受からない転職活動、本当にあったこんなこと(23)(1/2 ページ)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

» 2008年09月29日 00時00分 公開
[辻貴由アデコ]

「話すのは得意」の落とし穴

 「自分は話すのが得意なので、面接には自信があります」という人がいます。この人は、本当に面接に強い(合格しやすい)のでしょうか?

 人は2歳くらいになると言葉を話し始め、それ以来、何十年にわたって周りの人とのコミュニケーションを続けます。その結果として、コミュニケーションの方法には個人個人の特色が表れます。

 表情豊かに楽しそうに話す人、表情を変えずに淡々と話す人、圧倒されるくらいのマシンガントークの人、伏し目がちにボソボソと話す人、必要以上に虚勢を張って話す人、さまざまな話し方の人とお会いします。

 自然に引きこまれるような話であったり、言葉は少ないが簡潔で分かりやすい話であったり、ダラダラと長いだけでまとまりのない話であったり、話の組み立て方も人それぞれです。

 こういった「話し方」や「話の組み立て」はコミュニケーションを取るうえで重要な要素です。しかし、いくら話し方や話の組み立てがうまくても、それだけでは単なる「話上手」にすぎません。

面接という場で求められるもの

 面接で求められるのは、話の上手さではなく、コミュニケーション能力です。

 面接担当者は「いったい、この応募者はどういう人なのか?」「うちで採用するに値する人物なのか?」「技術スキル、コミュニケーションスキルは十分か?」を探るため、さまざまな切り口で巧みに質問してきます。それに対していかにうまく答えていくかが、面接の合否を大きく左右します。

 ここでいう「うまく」答える能力が、コミュニケーション能力ということになります。

 スラスラと立て板に水のように話すことが、うまく答えるということなのでしょうか? 違います。面接で求められるコミュニケーション能力とは、相手のいわんとすることを理解して、それに対して自らの意見をしっかりと伝えることのできる意思疎通能力です。

 日常会話でも面接でも、求められるコミュニケーション能力は基本的には同じです。しかしよりシビアに決定が下される面接という場だからこそ、ちょっとしたことが合否を左右してしまいます。

 「自分は話すのが得意だ」と思っている人の多くは、「自分にはしっかりとしたコミュニケーション能力がある」と思っています。が、実際はそうではないことも結構多いのです。

 今回は、話すのが得意だからこそ陥る、面接の失敗事例について書きたいと思います。

自信に満ちあふれ、冗舌な田中さん

 田中さん(仮名)は34歳、大手システムインテグレータで中堅企業向けのERP導入コンサルタントとして活躍していました。バイタリティにあふれる、技術的にも優れたコンサルタントです。今後はコンサルティングファームで業務コンサルタントになることを希望し、転職活動をしていました。

 顧客への提案活動でプレゼンテーションする機会も多く、人前で話すことには慣れているため、緊張することはなく冗舌に話す人です。ご自身でもコミュニケーション能力に自信を持っていました。

 初めて私が会ったときも、田中さんは自信に満ちあふれた表情で話し、内容にもその雰囲気が表れていました。しかし、冗舌であるが故に多くを語りすぎる傾向がありました。そのため、こちらの質問に対する回答の論点がずれていることや、話が脱線することが多かったのでした。そこで私は「面談時にこの点だけは注意が必要ですよ」と助言したのでした。

 田中さんはある企業に応募し、面接に進みましたが、採用は見送りという結果になってしまいました。理由を企業に確認したところ、「コミュニケーション能力に難あり。よく話をされる方ですが、コミュニケーション能力という点において疑問を持ちました」ということでした。人事担当者によくよく聞いてみると、田中さんは面接官の質問に対して、的確な回答を簡潔に話すことができなかったとのことでした。

 しかし、面接直後に田中さんに聞いた感想は、「うまくいきました。いいたいことはすべて伝えることができました。会話も弾みまして、面接時間も1時間半はあったので感触は良かったです」ということでした。

 企業と田中さんでは、感じ方がまったく違うな……ということで、私は再度田中さんと会い、今後の軌道修正について話し合いをすることとなりました。

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