芸術の秋にProcessingでスケッチプログラミングを始めてみよう絵心がなくても簡単に絵が描けるProcessing(1)(3/3 ページ)

» 2008年10月10日 00時00分 公開
[田中孝太郎collisions.doppac.cc]
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鉛筆でラフスケッチを描くような感覚でグラフィックを扱う

 Processingでのグラフィックプログラミングの容易さは分かっていただけたかと思います。このような環境で、Processingはクリエイターやアーティストのための「スケッチブック」になることを目標としています(実際Processingでは、ソースリストを含むプロジェクトフォルダのことを「sketch」と呼んでいます)。

 アーティスティックなプログラム作品やインタラクティブコンテンツの分野では、多くの習作を重ねてグラフィックの方向性やインタラクションの効果を突き詰めていくプロセスが必要です。Processingは、デザイナやアーティストがスケッチブックに鉛筆でラフスケッチを描きためていくようなプロセスを、プログラミングでも行える環境を提供しているわけです。

 実際、前述のRobert Hodgin(Flight404)氏の「Magnetosphere」の開発も、最初はProcessingでスケッチしたオブジェクトが相互に引き合う動きのサンプルからスタートし、3年間にわたりさまざまなバージョンを経て完成したと氏のブログ「Flight404 all manner of distracitons」で語られています。

図7 上記サンプルの実行例 図7 上記サンプルの実行例

 このようなアートやデザインのためのプログラミング環境の在り方、プログラムにおける「スケッチ」という考え方などのコンセプトで、Processingはさまざまな分野に影響を与えています。

JavaScriptやFlash、Ruby、Pythonでもスケッチ

 有名なところでは、進化著しいJavaScriptの世界において定評を得ているライブラリ「jQuery」の作者John Resig(ジョン・レッシグ)氏はProcessingのコードをJavaScriptで実行できるライブラリ「Processing.js」を発表し、大きな話題となりました。

 FlashActionScript 3)の世界でも、Processing互換のAPIを持つライブラリや、プログラムスケッチを支援するライブラリがいくつも開発されています(processingasFrocessingSketchbookなど)。

 また、RubyPythonといった柔軟なスクリプト言語で、よりスマートにプログラムスケッチを行うための環境なども開発されています(action-codingNodeBoxなど)。

図8 NodeBoxの実行例 図8 NodeBoxの実行例
プロジェクト名 環境 特徴
Processing.js JavaScript Processingのコードが書かれたWebページをWebブラウザで開くことで実行できる
processingas Flash
(ActionScript 3)
Processingのコードを解釈し、Flash Playerで実行できる
Frocessing Flash
(ActionScript 3)
Processing互換のAPIでグラフィックを簡単に扱える
Sketchbook Flash
(ActionScript 3)
Processingのような感覚でグラフィックを扱うことができる
NodeBox Python Pythonの文法で簡単にグラフィックが扱える環境
action-coding Ruby スクリプト言語の特性を生かし、プログラムの変更がリアルタイムにフィードバックされる
openFrameworks C++ Processingのプログラムをスムーズに移植でき、高速処理が可能になる
表 Processingに関連するソフトウェアプロジェクト

大きなインパクトがあったProcessingの出現

 こういった動きを見ると、ビジュアルやインタラクションを扱うプログラミングの世界において、Processingという環境の登場はインパクトが大きかったことが分かります。すでにこれらのプログラミング言語に精通しているなら、それぞれの環境からProcessingの世界に触れてみるのもよいのではないでしょうか。

 今回はProcessingというソフトウェアと、Processingという環境が切り開くアート/デザインの領域のプログラミングの世界について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。次回は、実際にProcessingでのプログラミングを詳しく解説していきたいと思います。


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