日立製作所は1月20日、省電力・省スペースのデータセンター環境を実現する「モジュール型データセンタ」を3月31日から提供すると発表した。企業のIT部門やデータセンター事業者向けに、水冷を使った冷却装置や空調、ラックなどをパッケージングして提供するもので、コンサルテーションから構築、保守までワンストップで行う。
基本となる“モジュール”は6.3×3.6〜10メートルと任意にサイズを選択できるサーバルーム。ここに、サーバラックと冷却用ラックを交互に配置する。サーバラックの背面にはオプションで排熱用の水冷ドアを取り付けられるほか、背面から出た熱気は隣接するラック型空調機に吸引されて循環する設計となっている。冷却技術にはメインフレーム時代に培った技術を使っており、耐久性にも優れるという。
モジュールは最小構成でラック2本分(サーバ140台、25キロワット相当)。この“モジュール”をブロックのように1×2、2×2と組み合わせることで多様なレイアウトや規模に対応する。冷却性能を考慮した配置をモジュール化したことで、新規設計の場合には空調環境の設計が不要で、初期コストを下げる効果があるという。既存データセンターの場合は空調機器や無停電電源装置の入れ替えが必要となるが、スペース効率の向上で賃貸料を節約するために、導入を検討する企業が増えるものと日立では期待している。
サーバラックとラック型冷却器を交互に並べ、局所的に熱を循環させる構成により、サーバルーム全体で見ると“ホットアイル”と“コールドアイル”を分離でき、高効率な冷却、高密度なサーバ設置が可能という。日立によれば、一般的なデータセンターに比べて、同社のモジュール型データセンターは電力消費量が27%減少するという。また、電力消費量の観点から同一規模のシステムを導入した場合に必要な床面積は75%軽減できるという。消費電力を抑えることで中長期的に、「TCO削減で大きな効果が見込め、価値のある提案だと思っている」(エンタープライズサーバ事業部 事業部長 渡部眞也氏)という。また同社は、モジュール化により、データセンターの個別設計にかかる時間が省略できるため、構築期間は従来の約6カ月から約2カ月に短縮できるとしている。
日立のモジュール型データセンターの特徴の1つはオプション設定の「水冷リアドア」。ラックの背面を覆うように設置し、冷水でIT機器の排気を近接冷却してホットアイル側に排出する。これを使った場合、ラック当たりの最大冷却能力を35キロワットまで高められるという。同製品では水冷でありながら内部循環方式を採用。導入における設備負担を軽減することで、国内ユーザーに導入しやすくしている。
冷却装置の製造、コンサルテーション、構築、保守・運用管理までを日立グループ全6社で行い、3年間で100億円の販売を見込んでいるという。
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