【Top10】GDrive提供はグーグルにとって自己矛盾先週の人気記事ランキング

» 2009年01月26日 00時00分 公開
[西村賢,@IT]

 先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングは第1位は「“すべてクラウド”も間近!? 『ZumoDrive』を使ってみた」だった。ZumoDriveはAmazon S3のストレージサービスをバックエンドに、ローカルのOSに統合する独自ファイルシステムを実装したサービス。従来と異なり、クラウドとローカルPCの主従関係を逆転させたような割り切りが新鮮なサービスだ。

NewsInsight Weekly Top 10
(2008年1月19日〜1月26日)
1位 “すべてクラウド”も間近!? 「ZumoDrive」を使ってみた
2位 IT企業、学生の志望業界ランキング全国6位
3位 au端末上で.NETアプリ実行、KDDIがランタイム提供へ
4位 「Oracle Exadata」登場、データウェアハウスを「10倍高速に」
5位 日本HP、5万円台で導入可能なディスクバックアップ製品
6位 Webに対する「ユーザーの不快指数」示す、コンピュウェア
7位 オバマ大統領のスピーチで英語を学ぶ、iKnow!が公開
8位 IPA、情報流出で当該職員に停職3カ月の処分
9位 Red Hat Enterprise Linux最新版がリリース
10位 LinuxでもSilverlightを見られる、「Moonlight 1.0」正式リリース

 クラウドベースのストレージサービスといえば、常に噂されるのがグーグルの動きだ。2009年には「GDrive」が登場するだろうと予言する人までいる。繰り返し憶測が飛び交うが、これまでグーグルからのアナウンスは一切ない。

 常識的に考えて、グーグルがコンシューマ市場向けの汎用ストレージサービスについて社内で議論していないわけがない。ZumoDriveのようなローカルOSに統合されたUIを通して分散ファイルシステム「GFS」をストレージサービスとして開放することは難しくないだろう。しかし、それをどのようなサービスにするか、どの程度の価格にするかについては議論が割れそうだ。もし提供するとして、GDriveの成否はあまりにも影響が大きく、拙速は許されない。

 グーグルをSaaSベンダとして考えると、汎用ストレージサービスの提供は自己矛盾をはらんでいるようにも思える。これまでローカルアプリケーションの世界から、オンラインサービスの世界へとパラダイムを転換しようと多くのサービスを開発してきたのに、人々がストレージ上にオフィス文書を置いてローカルアプリケーションの世界にとどまってしまっては困るだろう。

 オフィス文書ならGoogle Docsがあるし、写真ならPicasa、動画ならYouTubeがある。逆に汎用のストレージが必要なものの多くはローカルアプリケーションと紐付いているのではないか。ダブルクリックしてローカルアプリケーションが起動するようなファイル形式があるとしたら、グーグルとしては、そのアプリケーションをオンラインサービスで代替したいと考えるだろう。そのアプリケーションに紐付いたファイルをクラウドに置いてもらったところで仕方がない。もし意味があるとしたら、GDrive上のExcelファイルをダブルクリックすると「今後、このファイル形式を開くときにGoogle Docsを使いますか?」というダイアログを表示するようなやり方だ。こういうダイアログは、たいてい我田引水に思えてユーザーをムッとさせるものだが、Webアプリケーションについては、別の可能性もある。機能的には劣るが、なにせ起動が速い。ローカルPCのディスクから立ち上がってくる肥大化したローカルアプリケーションよりも、パッと開くWebアプリケーションをユーザーが選ぶ可能性はあるだろう。閲覧目的や簡易編集であれば、なおさらだ。私はすでにメール添付のPDF文書やWord文書は極力Webアプリケーションで閲覧するようにしている。

 人々の予想や期待に反してGDriveというサービスは登場しないかもしれない。クラウドに好きなデータを置いてもらうというやり方は、結局のところローカルアプリケーションの世界を延命することにもなりかねないからだ。

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