「リストラされる」という表現があちらこちらで聞かれるが、「リストラクチャリング」という言葉の本来の意味は「(事業あるいは組織の)再構築」だ。そしていま、企業ITにおいても本来の意味のリストラクチャリングが求められている。つまり短期的なコスト削減もさることながら、あらゆる部分でのぜい肉を削り、長期的にコスト・パフォーマンスを確保できるような筋肉質な体質への移行が求められているということだ。
キーワードは効率だ。費用対効果があらゆる場面で問われることになる。
企業ITの前提ともいえる信頼性とパフォーマンスについても、コストとの兼ね合いで改めて吟味される必要がある。買い換え時期のサーバやストレージで、より安価なものを選ぶという選択肢も改めて考えられざるを得ない。CPUパワーやストレージ容量比の調達価格を下げることは直接的なコスト効率の向上につながる。高い製品ならばすべてが無条件で速く、信頼性が高く、使いやすいわけではない。信頼性やパフォーマンス、運用性の要件と、機器コストとの関係は、従来よりもさらに厳密に問われることになる。
幸い、機器の効率的な運用という観点からは、サーバ仮想化やストレージのシンプロビジョニング、重複排除といった技術が登場し、信頼性の高い機器を利用しながらも、その利用効率を高められるようになってきている。ITニーズの増大とコスト削減という相反する要請をともに満たすには、こうした技術を活用することが必須条件となる。
一方、アプリケーション統合やITインフラの統合あるいは統一は、機器コストというよりも、運用の一本化および標準化によって運用コストを削減し、重複するサポートなどの人的コストを効率化できるメリットが大きい。
何でもかんでも統合すればいいとはいえない。しかしこれまでの業務部門単位、あるいは業務システム単位でのIT調達、運用の非効率は、聖域なき改革を求められるいまだからこそ切り込める部分だ。業務部門が運用しているシステムのそれぞれについて、コスト効率の観点から見て業務部門による運用が本当に最善なのかが改めて厳密に問われなければならない。過去のしがらみを断ち切り、これらから発生している無駄なコストを減らすことは、筋肉質な体質への大きな前進になる。
あるグローバル企業では、それぞれの国で一番使いやすいアプリケーションを使いたいという各国の抵抗をトップダウンで封じ込め、世界共通のアプリケーションやシステムインフラを構築したという。この場合、一部ユーザーの使い勝手を犠牲にしているわけだが、そこまでしてもコスト削減を達成しなければならないという危機意識があったのだろう。
これまでの経済状況になると、過去の経緯を言い訳にしている余地はない。自分の身体を改めて客観的に見直し、メタボに別れを告げることこそ、ITリストラクチャリングの要諦だ。
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